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屋久島一人旅日記~その3(2,391字)

2013/03/27 06:00 投稿

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屋久島は、俗に「ひと月35日雨が降る」といわれている。これは、「イチローの5打数8安打」みたいなもので、つまりそれほどよく雨が降るのだ。

ところが、ぼくが来る時はいつも雨に降られない。昨日も今日も、雲こそ出ていたから快晴とはいかなかったものの、雨粒は一つも落ちてこなかった。
おかげで、移動も観光も傘無しで、気楽にやれている。その意味で、運が良いと言えるのかもしれないが、しかし名物を見られないという意味では、かえって運が悪いのかもしれない。


さて、今回の旅は、屋久島の観光をしながらその記事をブロマガに書く――という目的が一つあるが、それ以外にもう一つ、原稿の締め切りがあって、それを書くために集中した環境に身を置きたい――という目的もあった。いわゆる「缶詰」というやつである。

子供の頃、ぼくはこの缶詰というのに憧れた。昔は、著名な作家の締め切りが迫ると、出版社がお茶の水の山の上ホテルに部屋を押さえ、原稿を書くことに集中してもらうというのをよくやっていたらしい。先生に部屋に詰めてもらうので「缶詰」というようになったらしいのだが、作家や編集者のエッセイやインタビューにも、よく缶詰や山の上ホテルのことなどが出てきた。

ぼくも、いつか作家になれば、締め切りに追われて山の上ホテルに部屋を取ってもらうようになり、そこで缶詰になって原稿を書くのかと夢想していた。ところが、やがて実際に原稿を書く仕事をするようになると、ぼく自身、締め切りに遅れるということがほとんどないタイプだというのが分かって、缶詰というものをこれまで体験してこなかった。

そこで今回は、折角原稿の締め切りも迫っていることだし、一つ、缶詰の経験もしてみたいと思って、屋久島までやってきたのだ。
缶詰というと、やっぱり山の上ホテルが思い浮かんだが、そこは家からあまりにも近いために、環境の変化がほとんどなく、あまり原稿に集中できないのではないかと危惧した。その点、屋久島は東京から遠く離れており、遊ぶような環境もほとんどないので、原稿を書くにはこれ以上なく集中できるだろうと、以前から予測はついていた。

そうして今日、朝ご飯を食べたぼくは、早速念願の缶詰状態になって、原稿を書き始めたのだ。


――と、ここで時間が来たので夕食に行ってきます。残りはご飯を食べた後、書きます。


食事が終わり、今、帰ってきました。

そうして原稿を書いていると、さすがにはかどった。ぼくはもともと原稿を朝に書くことが多いのだが、昨晩は珍しくよく眠れたこともあって、気がつくと3時間ばかり、ずっと書き続けていたのである。

と、そこのところでドアがノックされ、ベッドメイクの人が来た。そのため慌てて身支度を調えると、この日の観光へと出かけたのである。


今日は、ヤクスギランドを見にいった。
「ヤクスギランド」というのは、屋久島のほぼ中央に位置する山の中にある自然公園のようなところで、入り口のところまでは道が舗装されているので、車で行くことができる。麓から、だいたい30分ほどだろうか。狭い道をくねくねと上っていくと、やがて山の中腹に出たあたりで、いきなり目の前に絶景が広がった。

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