若い頃、裏世界のある一人の男性に会ったことがある。そこで彼は、今でも覚えている非常に印象的なことを言った。
それは、「自分はこれまで一度も税金を払わなかったことがない」ということだ。「毎年きちんと収めている」というのである。「それが自分の戦略だ」というのだ。
税金を払っているから、出るところに出て、きちんと物申すことができているのだそうである。行政機関に行っても、しっかりと交渉することができる。彼は、税金を払うことによって、むしろ大きな権限を得ているのだといった。その権限を得るためなら、税金は安いものだというのだ。
その考え方に、ぼくはかなり影響を受けた。
これと似たような話がある。それは作家の浅田次郎さんのエッセイに書いてあったのだが、彼は必ず道交法を守るのだそうである。シートベルトを着用するのはもちろん、スピード違反もしないし、信号だって黄色で止まる。
なぜかというと、道交法というのは
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