世界的なプロダクトを生み出す日本の美的感覚:その60(1,835字)
日本人は「箱庭」が好きである。
「箱庭」とは、狭い空間の中に多様で広大な「世界」を表現する芸術の概念だ。
例えば、日本人は「盆栽」という文化を育んできた。盆栽は、小ぶりな松を巨大な大木に見立て、鉢植えの中に小さな世界を表現するものである。
あるいは、前述した「枯山水」などの庭園も、小さく区切られた世界(庭)の中に、ある種の完全体である「宇宙」を表現しようとする試みだった。
さらに、これは芸術と異なるかも知れないが、日本の伝統的な食文化である「おせち料理」がある。これも、狭い空間の中にさまざまな食材を詰め込んで、ある種の箱庭を表現した試みといえよう。
このように、日本人は小さなスペースに宇宙そのものを詰め込んでしまうような美的感覚を、古来より営々として積み上げてきた。なぜそれが成し遂げられたかといえば、それはひとえに国土が狭い中で豊かな生活を営もうとしてきた結果だろう。土地の狭さを感じさせな
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