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子供の頃のぼくに読ませたい絵本(1,693字)

2016/12/12 06:00 投稿

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ぼくはそもそも不平不満の多い子供だった。
5、6歳の頃、部屋には溢れるくらいの絵本があった。弟は2歳下だったけど、一緒に遊ぶというのはあんまりなく、ぼくは絵本ばかりを読んでいた。
そんな中で、いつしか面白い絵本とそうでない絵本を峻別するようになっていた。気がつくと、お気に入りの絵本ばかりを読むようになっていた。そしてぼくのお気に入りの絵本は、絵が上手くて、話が興味深いものばかりだった。一言で言うと面白い絵本だ。ぼくは面白い絵本が好きだった。

ぼくが好きだった絵本は何だろう?
和田誠と谷川俊太郎が作った『このえほん』はとにかくくり返し読んだ。それから『はたらきもののじょせつしゃ けいてぃー』も好きだったし『ちいさいおうち』や『せいめいのれきし』も何度となく読んだ。後の三つはバージニア・リー・バートンが作者だから、ぼくは知らずのうちに彼女から多大な影響を受けていたということだ。

他にはリチャード・スキャリーも好きだった。かこさとしの『とこちゃんはどこ』というのも何度も読んだ。福音館書店の『ももたろう』も何度も読んでいたらしい。福音館でいったら『とうだいのひまわり』という絵本も好きだった。『さむがりやのサンタ』も嫌いじゃなかった。

こうして振り返ると、ぼくは「世界観が示されている作品」が当時から好きだったようだ。それに比べると、キャラクターにはほとんど興味を示していない。それから外国のものが好きだったようだ。「外国の世界観が示されている作品」がぼくは大好きで、それは後になって小説やマンガや映画やアニメを見るようになってからも基本的には変わっていない。

少し話がずれたが、ぼくは編集を始めたときに、なぜだかぼくが読みたい絵本というのがいくつもありありとイメージできた。それらはほとんど何の苦労もなく浮かび上がってきた。また、そのイメージについての疑いや迷いもなかった。

高校3年生のとき、通っていた高校が受験校だったので、授業がほとんどなく自習の時間が多かった。しかし自習というのがとても苦手だったので、いつも暇をもてあましていた。そこで仕方なく図書室へ行き、そこにおいてあった美術全集をずっと眺めることを日課としていた。

その頃の(そして今も)お気に入りは3人いて、ゴッホとルソーとダリだ。3人とも自画像を描いているが、彼らの自画像は上手いけれども代表作ではない。彼らは圧倒的に自画像以外の絵の方がいい。
そにれもかかわらず、ぼくはなぜかそれほど良いとは思っていない彼らの自画像を見るのが好きだった。彼らの自画像を見ながら、「彼らはどういう気持ちで自画像を描いているのだろう」といろいろ考えるのが好きだった。彼らの人間性に純粋な興味があったのだ。彼らが何を考えているのか知りたかった。だから、彼らの自画像をよすがにそれを知ろうとしていたのかもしれない。

人間の顔の絵というのは自画像に限らず面白い。もっといえばやっぱり人間の顔こそ最強のコンテンツだ。どんな人だろうと、人の顔には興味を示さずにはいられない。人は人の顔を見てしまう。不細工が好きな人も含めて、人の顔の好悪を判断する呪縛から完全に自由な人は一人もいない。

ぼくもご多分に漏れず顔が好きだ。だから、顔をテーマにした本を作りたいと思った。顔が並んでいる本を作りたいと思った。
写真家の荒木経惟さんに『顔写』という作品があるけれども、これを絵でやったら面白いだろうなと思っていた。特に人類を代表するような偉人の絵でやったら面白いだろうと思っていた。ぼくは偉人の顔が見たいのだ。見て、彼らと対話をしたい。ぼくは、彼らにこう問いかけたいのである。
「あなたは、何を考えながら生きていたのですか?」

そういう偉人との対話ができる本を作りたいと思った。それを、子供の頃のぼくに読ませたかった。読ませて、偉人との対話を楽しんでもらいたかった。

ぼくは、そういう絵本を作りたいと思った。


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作者の井筒啓之さんと、編集者のぼくが対談します。
よければお越しください。

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岩崎夏海

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