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* 堀潤のテレビでは言えない話 vol.15 *
~「ツメタイ民主主義のミライ」の巻~
発行:8bitNews 2013.7.10 (毎週1回発行)
http://www.facebook.com/8bitNews.HORIJUN
http://twitter.com/8bit_HORIJUN
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皆さん!
今週も更新が遅くなってしまいました。ごめんなさい!
参院選挙がはじまり、何かと僕の仕事もさらに慌ただしくなって参りました。
実は、今月21日の投開票日に、テレビ神奈川で開票速報の特別番組のキャスターを担当する事になりました。
ネット選挙運動も展開されますし、各候補者がそして有権者がネットを使いどのような変化を引き起こしたのか色々と探りながら準備を進めています。
その他、時事通信、Yahoo!Japan、ドット.jpなどとの協業で、全国各地で候補者討論会を行い、僕がモデレーターをつとめる事になりました。スケジュールの都合で、14日の滋賀県しか担当しませんが、ユーストリームを使って配信しますので、またtwitterなどを通じて発表しますね!
さらに!
事務所に光回線がやって参りました。
ブロマガ会員の皆さん、お待たせしました。
これで、しっかり生放送を行えます。
今月中旬から、毎晩のニュース開設番組「堀潤のネルマエニュース」をスタートさせるべく、いま、準備を始めています。
お待ち下さいね!
ではでは、
今号のコンテンツはこちらです!↓
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├○ 堀潤のテレビでは言えない話 vol.15:2013.7.10
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├○ 01.【堀潤のソーシャル日記から】
├○ 第5回 不条理な世界にヒマワリを咲かそう 中編
├○
├○ 02.【ルポルタージュ】
├○ マスメディアが報じない本当の○○
├○ 第15回 「堀潤×古賀茂明 安倍内閣が進める“原発再稼働の裏側”」
├○
├○ 03.【ルポルタージュ】
├○ 次世代メディアへの創造力+α
├○ 第15回 「シリーズ 独立系資本主義 “ココナラ”急成長の裏側」
├○ ~個人がそれぞれ自分を売りに出す時代の可能性~
├○
├○ 04.【オンライン講座】
├○ そうだ!メディアを創ろう
├○ 第13回 「発信してみよう!あなたのコメントに“ファクト”を」
├○
├○ 05.【告知】今週のスケジュール& お知らせ
├○
└───────────────────────────────┘
▼前回「Vol.14」へのリンクはこちらです。
[リンク] http://ch.nicovideo.jp/horijun/blomaga/ar278136
未読の方は併せてお楽しみ下さい。
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┗■ 01.【活動日記】堀潤のソーシャル日記
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このコーナーでは1週間の堀のつぶやきから3本を選んで深堀り。
毎日新聞「MAINICHI RT」 の連載と連動しています。
NPO法人代表として、そしてジャーナリストとしての堀の1週間からのルポルタージュ。
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不条理な世界にヒマワリを植えて 中編
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:16:42
PM1:20 浪江町請戸地区に入った。第一原発の排気塔が山の向こうに見える。左手には海岸。警戒区域だったこの地区はほとんどが手つかずのままだ。 http://t.co/iaf5n46gvi
今月5日~7日まで福岡市内で開かれた「ユナイテッドピープル映画祭」に筆者が制作したドキュメンタリー映画「変身 Metamorphosis」を出品し、国内で初めて上映した。300席程の会場はほぼ満員になった。エネルギーや環境問題などをテーマにした世界中のドキュメンタリー映画を集めた映画祭で、会場では地熱や太陽光など自然エネルギーの導入に積極的な熊本県の担当者や民間事業者の代表などを招いたパネルディスカッションなどもあわせて行われた。
映画「変身」は、2011年の東京電力福島第一原発、1979年の米国スリーマイル島原発で発生したメルトダウン事故、そして事故から50年以上に渡って放射能汚染の実態が住民に伝えられてこなかった1959年のロス近郊シミバレーの実験用原子炉のメルトダウン事故について取材したドキュメンタリーだ。
映画の冒頭は、事故から2年が経った福島県浪江町を訪ねるシーンから始まる。今年春まで警戒区域に指定、立ち入りが制限されてきた町だ。最大で15メートルを超える津波に襲われ、町は壊滅。破壊されたビルや流された車、トタンやコンクリート片が町のあちこちに残されたままだ。原発から北に約7kmの請戸地区。山の向こう側に第一原発の排気塔が並んでいるのが見える。震災前には町の建物などによって見えなかった景色だ。
事故直後から現場取材を続けてきたラジオ福島の大和田新さんが、現地を案内しながら、請戸地区のこれまでの様子を教えてくれた。
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:21:20
請戸小学校。校舎の二階部分まで津波が押し寄せたが、近隣住民や先生達の迅速な判断で全校児童80人あまり全員が無事に避難した。 http://t.co/2QmVDgIK7X
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:24:34
体育館を覗くと巨大地震の爪跡が生々しく残る。三月十一日は卒業式に向けた準備の最中だったという。 @ 請戸小学校 http://t.co/iPlbo4EUte
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:26:59
車椅子を含む子供達は先生達に連れられ、1.5キロ先の山を目指した。田んぼを抜け、靴が脱げた二年生の子に、三年生が自分の靴を履かせて励まし合いながら逃げたという。 http://t.co/2MwOklpE6G
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:33:41
教室の黒板には、全国から救助に入った自衛隊員達などがメッセージを書き残している。地元の方の言葉だろうか。「われらは海の子」。 @ 請戸小学校 http://t.co/7bNXdpO2z4
校舎の外に出ると、近くには打ち上げられた船が。よく見ると船体の下にクッションが敷かれていた。勝手に撤去されないようにするための合図だと言う。「これは船の持主が、ガレキじゃない、いつか直して必ず海にでる、という意思表示なんです」と大和田さんは話す。
船のすぐ側には亡くなった方を弔う共同の慰霊碑があった。
鮮やかな色の花が手向けられ、線香からは煙があがっていた。
8bit_HORIJUN 2013-06-25 00:53:15
あの日、住民の避難を誘導した警察官達も津波に飲み込まれ殉職した。若手巡査を先頭に促し最後まで海岸近くから、人々を逃がしたベテラン警察官の慰霊碑がひっそりと草むらにあった。 http://t.co/AAZGwMRTRu
警戒区域に指定された浪江町では、行方不明者の捜索は難航した。請戸地区で警察による大規模な捜索活動が初めて行われたのは震災からおよそ1ヶ月後の4月14日。300人の警察官が白い防護服に身を包み行方不明者を探して回った。この日は10人の遺体が見つかった。
この日の大規模捜索を取材した大和田さんによると、腐敗してウジのわいた遺体を若い警察官たちが一人一人丁寧に洗って棺に納めていった。断水して水道が使えないため、貯水槽からバケツで水を汲み調達した。
遺体と面会した家族の中には「もっと早く見つかっていれば抱きしめられたのに、なんでもっと早く捜索できなかったんだ」と涙しながら、警官に掴み掛かる人もいたという。若い警官が黙って頭を下げる姿が今もはっきりと目に焼き付いていると大和田さんは話す。掴み掛かった家族も棺を受け取る時には「本当にありがとうございました」と深々と頭を下げ避難先に戻っていったと振り返る。
筆者が請戸を訪ねたその日、空を見上げると深い青色が広がっていた。遠くで静かに波音が聞こえる。うすい雲が穏やかな風にゆっくりと流されていた。請戸小学校の近くに設置された自動放射線測定器の値を見ると、毎時0.077マイクロシーベルト。都内とあまり変わらないなと思いながら、ゆっくり息を吐いた。
緑の雑草に覆われた海岸線には、小さな黄色い花が咲いていた。
その視線の向こう側には原発の収束作業にあたるクレーンの先がゆっくり動くのが見えた。まだ終わっていない。まだこれからだ。2年と4ヶ月。海の子達が戻る故郷を忘却で覆ってはいけない。
続
講演や講師の依頼なども受け付けています
→hori@8bitnews.org までぜひ!
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┗■ 02.【対談企画】
マスメディアが報じない本当の◎◎
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「テレビでは言えない話」というタイトル通り、「テレビでは扱いづらい」
という理由でなかなか放送されない話題もたくさんある。
国家や大企業を敵にまわしがちなテーマについては、局側の判断で
ニュアンスが弱められたり、企画そのものが採用されなかったりする場合もある。
このコーナーでは、そうしたマスメディアが報じない現場の実態をルポ。
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第15回
「 堀潤×古賀茂明 安倍内閣が進める“原発再稼働の裏側”」
原発の再稼働に向けた動きが活発になっている。
先週、東京電力は新潟県の柏崎刈羽原発の再稼働に向けて安全審査の申請を原子力規制委員会に速やかに提出する方針を発表。地元、新潟県の泉田知事は「事前の相談もなく、到底受け入れられない。信頼関係を壊す行為だ」と強く抗議し、申請に向けた手続きは一旦中断。東電社長が地元への理解を求めるため新潟県を訪問し直接知事に説明を行いたいとするなど、今後の行方に注目が集まっている。各電力会社は、原発を推進する自民党による政権運営を追い風に、不良債権化している原発の再稼働を急いでいる。
今回は、元経済産業省のキャリア官僚、古賀茂明さんと対談。
政府が何故これほどまでに原発の再稼働を急ぐのかを聞いた。
今回から3回シリーズでお伝えする。
(こが・しげあき)1955年、長崎県生まれ。麻布中・高校、東大法学部卒業後、80年に旧通商産業省に入省。産業組織課長、OECDプリンシパル・アドミニストレーター、産業再生機構執行役員、経済産業政策課長を歴任。国家公務員制度改革推進本部事務局審議官として公務員制度改革を相次いで提議。現在、大阪府市統合本部顧問。近著に『信念をつらぬく』(幻冬舎新書)がある。
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■3.11のメディアの裏側、霞ヶ関の裏側
(古賀)
堀さんというと、2年前の3・11の原発事故直後から、ツイッターでいろんな情報をリアルタイムに流し続けた。そこから「原発の堀」として知られるようになってきたんですが、あの震災直後はいろんなものが止まっていて、被災地ではテレビも見られない、ラジオも聴けないという人がたくさんいる中で、ケータイだけが頼りという人たちに、堀さんのツイートが唯一の情報という感じで伝わったんですよね。それだけではなくて、一般の人にはなかなか見えない情報も発信していただいた。でも、そうしたいろんな活動が、徐々にNHKの組織の中では受け入れられないということになっていって、最後はご自分でお辞めになった。その点は、私と似たような感じです。私のほうが、途中で仕事をさせてもらえなかった時期が長かったりしたのと、もう歳を取っていたので、「行き先がもうないなあ」なんて思いながらやっていたんですが、堀さんはまだお若い。新しい世界に早く飛び込んで、新しい仕組みを早くつくりたいということで、ちょっと早めに飛び出したんだなという印象を持っています。
原発事故に関する報道で、堀さん自身が放送局の中にいて、変だな、おかしいな、変えていきたいなと感じていたことがいろいろとあったと思うんですよね。そのあたりのお話から少し聴かせていただければなと思います。
(堀)
僕は3月11日の東日本大震災が起きたとき、取材で恵比寿にいたんです。当時、夜11時20分から放送していた「Bizスポ」という経済ニュース番組のキャスターをしていて、まさに3月11日もその取材だった。僕はNHKのアナウンサーの中でもちょっと異色な働き方をして、新人のときから自分でカメラを持って現場に行って取材して、原稿を書いて、編集して、自分でプレゼンするということをしていました。フリーランスみたいな働き方をしてきたんです。
実は、NHKに入る前に週刊誌の記者になりたいと思っていたんです。どうしてかというと、ちょうど学生の頃、松本サリン事件が起きたりして、マスメディア不信みたいな出来事ことがいくつかあったんですね。電車に乗ると週刊誌の見出しで、「マスメディアが報じない本当の○○」などと書いてあるわけです。それを見ていて、ああ、こういう世界に飛び込んでみたいなと思っていたんです。一方で、まったく逆に、本当のことを伝えないマスメディアって何なのかということを内側に入って変えてみたいという気持ちもあった。そんなわけで、その後のことは割愛しますが、NHKに入りました(笑)。
僕は大学時代、プロパガンダについて勉強していたんですよ。ナチスドイツのプロパガンダと、大日本帝国下の大本営発表をやっていたNHKというのが卒論のテーマだったんですね。日本の戦後体制ってマスメディアのプレーヤーは変わらないんですよ。戦前も朝日、読売、毎日、日本放送協会、戦後も朝日、読売、毎日、日本放送協会なんですよね。でも、ドイツって自分たちがつくった民主政権でヒトラーを生んじゃったものだから、その反省から戦後はすごく厳しく律して、国とメディアのあり方を根幹から変えていくんですよ、西ドイツは。ところが日本はそういう部分がすごく曖昧なんです。僕はNHKに入って、そういうのはよくないとずっと思っていた。なので、自分の関わる番組では間違ったことについては間違っているとか、不十分なものがあったら不十分でしたとか、ごめんなさいとか、赤裸々にちゃんとテレビの前で言うことを心がけていた。都会の放送局に5年間勤めていたんですけど、そこではわりと自由に放送してたんです。NHKに不祥事が吹き荒れた時代だったんで、「なぜうちの会長はなかなか辞めないのか、皆さん、不思議に思っているかと思いますが、僕もそう思っています」とかね(笑)。そういう正直な放送を心がけていた。
でも、NHKが放送局として一番機能しなきゃいけないような3月11日から16日、17日ぐらいまでの間に、僕自身も言葉が濁ってしまうようなこと、非常に躊躇するようなことが、実際にはありました。内情をご説明すると、うちの会長って――もう、うちじゃないんですけど(笑)――NHKの会長ってNHKの人じゃないんですよね。皆さんご存知かもしれませんが、JR東海副会長だった松本正之さんという方がいまはNHKの会長。さらにはNHKの経営方針を決める経営委員会も、メンバーの半数以上が産業界の、いわゆる重厚長大系の企業の方々で構成されているんですね。なぜかと言うと、先ほど申し上げたような不祥事あって、NHKマンにNHKを任せるわけにはいかないということになり、NHK生え抜きの人材がどんどん減らされ、外部の産業界の人を増やしたんです。いわば産業界の中にNHKが入っていくような構図があった中での、震災だったんですね。
ですから、原発の事故に関しても、扱いは非常にセンシティブな問題となっていくわけです。そういう中でNHKの使命としては、パニックを起こさせないという大前提があった。また、松本会長がこんなことを言いました。「われわれは新しいレールをつくらなくていい。いまあるレールを守るのが公共放送だ」と。それを聞いたとき、僕はそれじゃあ新幹線だよなって思ったんです。ジャーナリズム機関である以上、本来なら自分たちで線路をつくり、そして検証をするというのも役割のはずなんですが、ああいう未曾有の災害においても安全運転というのが第一に心がけられた。100%裏が取れないものは出さないという平時の対応です。
でも、原子力災害でメルトダウンが起こっているかもしれないような状況で、誰も本当のことはわからない。そういうときに安全運転を徹底すると、曖昧な情報しか出てこないわけです。それで本当によかったのかと言うと、そうではないと思うんですね。実を言うと、メルトダウンが始まっているんじゃないかという話は、3月11日に夜9時ぐらいの段階で、われわれは聞いていたわけです。スタジオがさわさわさわっとするんですよ。僕は補助で、『ニュースウオッチ9』のスタジオに入っていたんですが、そこで「プルトニウムが検出されたとかいう話が入ってきてるぞ」という情報がフロアにいるディレクターなどに伝わるんです。「えっ? それが本当だったらメルトダウンだよね。大丈夫かな」というような話でざわめいていたんですよ。
その後、原発の状況はどんどん深刻化していくんですが、NHKはそれを伝えきれないわけです。NHKは権威主義なので、選ぶ解説者も権威主義的で、いわゆる原子力関連の学会の長などの大御所を呼んでくるんですね。そして、安全運転というベーシックなラインがあるんで、放送前の打ち合わせの段階でも、「たぶんこここまで進んでいるかもしれないけど、これはテレビでは言えないですねえ」と言って、事態が深刻化している可能性を示唆する情報はどんどんはじかれて出ていかなくなるんです。心ある社会部の記者などは、プルトニウムに関する原稿を用意したりもするんだけど、「これは出せないよねえ」ということになって、放送されない。
皆さん、中越沖地震の際に柏崎刈羽原発でボヤが起きたのって覚えてますか。僕、あのとき現場にいたんです。リアクター(原子炉)は問題なかったんですが、横にあるタービンが不具合を起こして黒煙が上がって、僕は生まれて初めて震える手で線量計を探すという経験をしました。そのときに仲良くなった東京電力の協力企業の方たちから、3月11日の夜とか12日の午前中に電話がかかってきた。彼らによれば、東電の関係先に「関東圏から退避せよ」という通達が出たというんですよ。「堀さん、テレビでは言えないと思うけど、何とかそういうニュアンスを伝えてもらえませんか」という中身でした。そういう電話があったことは当然、局内でも言うんですが、「いや、でも、本当のところはなかなかわからないよな」という話になって、結局、情報として外には出ていかないわけですよ。
僕は、NHKのツイッターのアカウントを個人で持っていたので、3月11日の深夜からは、それを使ってテレビが見られない人たちに向かって、NHKニュースをまとめて伝えていたんですね。そこでわかったのは、インターネットを流れる情報ってやっぱり速いんですよ。確かに玉石混淆なんですが、本当の一次情報を持った人の発信も中に混じっている。
たとえばアメリカがいち早く、福島第一原発の80km圏から退避しなさいという命令を出したいう話は、アメリカから英語で出たものが日本語に翻訳されてすぐ出ていたりする。でも、テレビを見ると、そんなことはまだ報じていない。「アメリカ人が逃げるって本当なの?」「NHKでやってないし、どうなの?」と、先行する情報に対してマスメディアの情報が少し遅れる、あるいは報じられないために疑心暗鬼がどんどん膨らんでいってしまう。
僕は、そういう状況は絶対に解消すべきだと思うし、メディア側の対応がどうだったのかということを――もう2年経っちゃいましたが――もっともっと検証していかなければいけないと思っているんですよ。
そういう中で、山崎淑行という科学文化部の記者が当時解説をしていたんですが、とても象徴的な出来事がありました。彼は僕が信頼している先輩記者の一人で、3月12日の時点でこんな解説をするんですよ。「まだ国は明らかにはしていませんが、深刻な原子力災害の恐れがあります。外にやむを得ず出なければいけない人は、念のため長袖の服や長ズボンを履いて肌の露出を抑えてください。内部被曝の恐れもあるので、外に生えているものを食べたりしないようにしてください。部屋の中にいるときには換気扇を閉じてください」という話をするんですね。僕もテレビのモニターでその解説をリアルタイムで聴いていて、「ああ、信頼する山崎さんが言っている以上、これは間違いない」と思って、ツイッターでそれを流したんです。
すると、すごいハレーションが起きました。「勝手なこと言って不安を煽るんじゃない」って、すごい勢いでクレームのツイートが押し寄せ、そしてリツイートされていくんです。さらに「ヤフーニュース」が僕のツイッターをトピックスに挙げて、「原子力災害に備えて」というタイトルで、「内部被曝に備えてください」と書くわけです。そのため、震災前の僕のフォロワーは7000人くらいだったんですが、一気に7万人ぐらいのフォロワーまで膨れ上がった。でも、ほとんどは「不安を煽るな」という声だったんですよね。
2~3日経つと、その情報は間違っていなかったことがわかるんですが、公共放送、テレビって、クレームにはものすごく弱い。クレームが来ると怯えるんですよ。でも、危険があるという可能性については、安全運転に徹するのではなく、積極的に報ずるべきなんじゃないかと思うんです。事故から1ヵ月後くらいに山崎記者に会ったとき、「山崎さん、あれは勇気のある発言でしたね。どういう気持ちで言ったんですか」と聞いたら、「僕はもうクビになるかもしれないと思って言ったんだ」という話をしていました。それまでの知識、経験に基づいて、これはいま言わなきゃいけないと考え、自分の判断で言ったと。
これは、単なる美談じゃないと思っているんです。マスコミで長年働き、知識、経験を持った記者が自分の判断で何かを言うときに、クビをかけなくてはいけないというのは、いったいどういうことかと思うんです。メディアとして本当に正しいあり方なんだろうかと。山崎さんは心ある記者ですから、クビになってもいいと思って発言したけれども、大半のサラリーマンジャーナリストたちは――当時の僕も含めてですけれども――ここでクビになったら家のローンが払えないとか、家族が路頭に迷うとか、再就職できないとか、生活に密着した悩みが、笑い話じゃなくて、本当にむくむくと自分の頭の中に湧き起こってくるわけです。
さらに、こんなことを言ったら、自分だけじゃなくて、上司も責任を取らされるんじゃないかと考えたりもします。そういう人が大半です。だから、組織ジャーナリズムのあり方に関してはもう1回再点検したほうがいいし、テレビや新聞で報じるときに、どうやってその責任を確立し、もしくは分離していくのかを考えなくちゃいけないし、コンプライアンスって何だろうかとかも、考えていかなきゃいけないと思うんですね。
僕自身、情報のギャップについての疑心暗鬼を埋めなきゃいけない、インターネット上に流れている疑問や不満や不安を解消しなきゃいけないと思って、取材した結果をツイッターで流したりしたんですが、そういうやり方はニュースを出す正式な手順ではないので内部情報の漏洩にあたる、したがってコンプライアンス違反だということになっていくわけです。
コンプライアンスに違反しないようにするのが本当に正しいのかどうか。僕らが、伝える必要があると判断して報じようとするときに、そのまま出るかというと、実は何重にもフィルターがかかっている。いわゆる合議制で成り立っているんですよね。合議の結果、OKとなれば出るけど、誰かが「ちょっと危ないんじゃないか」と言ったら出ないんです。平時はそれでいいと思うんですが、有事の場合、そういう合意にどれだけ有効性があるのかを、もうちょっと真剣に考えたほうがいいと思う。
原発事故から2年が経ちましたが、メディアの報道に関しては知恵を出し合ったり、批判しあったり、改善策を出し合ったりという作業を、みんなで徹底的にやったほうがいいんじゃないかなと思っています。
(古賀)
ありがとうございます。いま堀さんがお話になったことはNHKで起きたことなんですけれども、実はほとんど同じようなことが各テレビ局で起きていたし、あらゆる新聞社でも起きていたんですね。しかもそれは、あの非常時だから起きたということではなくて、実は現在でも体質はあんまり変わっていないんですよ。あの原発報道については1年を過ぎた頃から、本当にあれでよかったのかどうか反省をする会議が内部で行われたりもしたようですが、でも、表には出てこないですね。
私が覚えているのは『報道ステーション』の古舘伊知郎さんが、一昨年だったかな、自分は伝えきれていないことがあったという趣旨の発言を番組内で行ったことです。その上で、でもこれからはちゃんとやらなくちゃいけない、自分の番組はつぶれても報道すべきことは報道していきますという宣言を番組の中でした。これは、非常に異例な事態でした。私は古舘さんのことを個人的にもよく知っているんですが、そういう命懸けじゃないと本当のことを言えないという空気がある。
先ほど、お話ししていて、「ああ、やっぱりみんな同じなんだな」と思ったことがあるんです。何かというと、危機管理という言葉の使い方です。危機管理という言葉が放送局でどう使われているかというと、たとえばメルトダウンの事実を把握したときなんかに使われます。いち早く「メルトダウンだ」と伝えて、それが誤報だったとか、あるいは報道自体は正しくても大パニックが起こって社会が大混乱に陥ったとか、そういうことにならないようにという意味合いもあるんですけど、実はそれ以上に、何かを報道したときにクレームが来たらどうしよう、それを未然に防がなくてはいけないという意味が、「危機管理」には込められているんですね。
ですから、メルトダウンという報道が間違っていたら大変だということについては、これは報道の使命として一生懸命、慎重に考える。これは当然のことだと思います。そうじゃなくて、仮に正しかったとしても、あとで政権に「何で先に言うんだ」と怒られたらどうしようとか、あるいは最近では「アベノミクス」批判を派手にやって、政権からクレームが来たらどうするんだとか心配して、それを未然に防ぐためにはやっぱり報道は控えておこう、あるいは、言い方をちょっと変えよう、言葉では言わないで映像だけ流せばなんとなくわかってくれるんじゃないか、そんなことを考える。そういうことが「危機管理」だと思われている。
(堀)
「高度な政治的判断」という言葉も使いますね。
(古賀)
報道機関が、何でそういう政治的判断をするのかと思いますよね(笑)。
(堀)
そういう状況を改善する解決策を考えなくては、と思うんです。でも、実を言うと、日本以外の先進国ではこういうことに関して、わりと進んでいるんですよ。いわゆるオープンジャーナリズムです。ニュースが決まっていく過程、一人のジャーナリストが判断した軌跡を情報公開することによって、一人だけでは判断できないこと、不十分な部分、より専門的な知見を一般からどんどん募っていこうというやり方が、オープンジャーナリズムなんですね。
たとえば1年半ぐらい前にイギリスの名門新聞社ガーディアンが、オープンジャーナリズムを実践しますというタイトルをつけた記事を書いた。編集長が高らかに、インターネットの動画サイトでこんなことを言うんです。「私たちジャーナリズムは世界で唯一の専門家ではありません。ジャーナリズムを遂行するには皆さんの力が必要です」って。ガーディアンは何をやったかというと、自分たちのホームページに、ニュースの順番や中身を決める過程、ニュースルームの中身をリアルタイムで公開していったんですね。どの記者がどの項目を担当するのか、ツイッターのアカウントを持った記者をそこにあてて、一般の人がいろいろ注文をつけたりすることもできるようにしたんですね。
さらにニュースソースについても、専門の記者だけじゃなくて、一般の人たち――一般の人たちというと非専門家をイメージしちゃいますけれども、実は一般の人たちの中には科学者がいたり、弁護士がいたり、臨床心理士がいたり、その道の専門家たちがいるわけです。だから、一般というよりは非メディア人といったほうがいいかもしれませんが――そういう人たちに協力を仰ぐわけです。たとえば殺人事件が起きて、それが裁判になっているとする。いままでだったら司法関係の記者が会見に行ったり、弁護士さんを取材したり、捜査当局を取材したりして記事を書きますね。でも、そういう中身やプロセスを明らかにしつつ、もっと多角的な知見でその事件について検証する記事をつくるというようなことをやっていたわけですね。
つまり、原発事故の報道が問題なのは、なぜこれこれのことを報道するかという判断について、その過程がブラックボックスの中に、ニュースルームの中にしかなかったからなんです。報じられた成果物を見て、最終的にこれは当たってた、間違っていたという話になるんですが、原発事故の状況は世界中の科学者を集めても意見が分かるような状況だったはずなんですよ。にもかかわらず、一人や二人の専門家の意見を取り上げて、こういう状況じゃないでしょうかと報じてしまった。でも、もっとさまざまな専門家の意見をオープンな場で取り上げて議論してもよかったんじゃないかと思うんですよ。やりようは、いろいろあったんじゃないか、と。
ただ、このオープンジャーナリズムというのは、「やったほうがいいよね」という声はあっても、テレビ局で実際に実践しているところはまだない。朝日新聞が今年の正月に、ビリオメディアという企画をつくって、記者がツイッターを使いながら自分たちの取材過程を明らかにして記事をつくるという実験的な試みを始めましたが、まだそういう段階なんですね。でも、やはり情報公開って必要ですよね。
■公的情報への不信感を払拭するためには
(古賀)
メディアと、行政、あるいは政治、それぞれ違う世界ではあるんですけれども、堀さんが指摘した情報公開の話はいずれにとっても共通の課題です。
いまインターネットに膨大な情報が溢れているんですが、そうした情報の中に本当にキーになる重要な情報がちゃんと出ているかというと、実は隠されているもののほうがはるかに多いというのが現状ですね。
たとえば、原発再稼働について、安倍さんがどこかのタイミングで言い出すとしますね。でも、安倍さんが言及する前に経産大臣の茂木(敏充)さんが、再稼働とちょっとつぶやくとか、いろんな段階がある。そこに至る過程にもいろいろあって、そのプロセスではなかなか情報が出てこない。また、何か一つの判断や方針が決まったときに、実はその役所の中にもそうじゃないと思っている人たちはたくさんいるんですが、そうした異論や反対意見は全部捨てられ、最終的な結論、まとまりだけがポンと報道機関に説明されて、あるいは国会で説明されて、それが唯一正しい情報だということで流布される。そういう仕組みにいまはなっているんですね。
それを批判する側は、そういうプロセスとか反対意見などが隠された中で、たまたま自分が知っていることとか、手探りで調べたこととかをつなぎ合わせるという作業をしなければならない。これは非常に非効率であるし、非民主的でもあると思う。大事な情報を、官僚や政治家が独占していて、批判勢力はその大事な情報に接することができないかたちで、一人一人が反対勢力として戦っていかなくちゃいけない。
官僚とか政治家が持っている情報というのは、本当はみんなのものなんですね。ですから、結論はこうですという説明をするのはいいんですけれども、その過程ではこんな情報が実はあって、そのうちのこれとこれは使ったけれど、この部分は捨てているとか、こういう意見とこういう意見があったんだけど、こっち意見はこういう理由で削ったんですよということを本当は出すべきなんです。そうすることによって、使われなかった材料をもう1回組み立て直して、「こういう道があるじゃないですか」という議論ができるようにしていくことが大事なんじゃないかと思うんです。
(堀) そうですね。いろんなことに対して反対意見を言うときに、実は材料がなかなか見つけづらかったり、手元に正確な情報がなかったりすることが理由で、反対運動がイデオロギー対立みたいなかたちになってしまうことがあります。本来であればきちんと議論をして、改善策を見出せばいいのに、右か左かみたいな、赤かそうではないかみたいな対立に矮小化され、そして消滅していく。そんなことをずっと繰り返してきてしまったと思うんですよね。
僕はやはり、去年、UCLAにメディア関係の研究のために1年近く留学していたんですが、アメリカのやり方は仕組みとしてなかなか見習うべきところがあるなと思いました。制度としていいものを持っている。特にオバマ政権は第1期のときから「オープンガバメントを徹底します」と重要政策に掲げたわけですね。オープンガバメントって何かというと、政府が持っている情報を公開して、しかもインターネットを使って一般の人たちが入手し、そして使いやすくすることを徹底しましょう、ということですね。そのために、いろいろなサイトをつくったりするわけですよ。
その際に、なかなかやるなと思ったのは、ただ情報を公開するだけじゃなくて、その情報を分析して見やすくするためのアプリケーションソフトもフリーで公開するんですよ。たとえば、お役所が出す数字って僕らが見てもよくわからなかったりするじゃないですか。理解するのに相当時間がかかる。ところが、そのホワイトハウスの関連のページで公開されているアプリケーションソフトにその数字を入れると、誰もがわかるグラフになって出てくるとかね。そういう一般の人が情報を触りやすくするような仕掛けもつくってあるんです。
これは何かというと、知る権利とかの話ではなくて、もろ経済政策です。情報公開をすると、どこがうまくいっていないのか、どこにお金が集まっているのか、どこが社会問題なのかということが知れ渡るじゃないですか。そうしたら、優秀な人たちが勝手に「この問題を解決すればビジネスになるよね」なんて言って、ベンチャー企業とかがピンポイントでその仕組みを改善する会社を立ち上げたりできるわけですね。つまり、情報公開されることでイノベーションが生まれ、イノベーションが起きると雇用が生まれるんですよね。雇用が生まれると人々がお金を手にするので、経済政策として成り立つと。
なるほど、情報公開はつまり経済政策なんだなあと思ったんです。それに対して日本の場合は、情報公開請求するにしても一般の人では簡単にはできなくて、いわゆるプロの市民活動家と言われるような人たちの力を借りて、やっと情報が出てくる。でも、やっと出てきたと思ったら半分以上が黒塗りの資料だったみたいな、そういうことがいまも続いているので非常に非効率的だと思うんですね。
(古賀)
そうですね。政府は、情報というのは自分たちの都合のいいことを都合のいいように理解してもらうための手段であると考えているんですね。だから、資料を公開する際の出し方を見ても、ほとんどがPDFですよね。そうじゃなくて、ワードとエクセルで出してほしいんですよ。そうすれば、記事や原稿を書くときに引用するのも簡単になるし、エクセルであれば加工するときにすごく使いやすいですよね。情報というのは知ってもらうだけじゃなくて、それを使っていろんなアイデアを生み出してもらうことに役立ててもらうべきなのに、そういう意識は全然ない。むしろ、反対する人が利用すると困るから、利用しにくくしてやろう、みたいな意識です。
(堀)
危機管理ですよね。
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