こんにちはーごとうです!

ご存知の方も多いかもしれませんが、実はいま久米田康治先生『絶望先生』などでおなじみのMAEDAXさんが『アシスタント背景美塾』を始めるということで少しだけお手伝いしています。そちらは漫画家アシスタントとして必要な技術や考え方を教える教室で、近日詳細を公開できると思いますので、もう少々お待ち下さい。で、その授業のリハーサルを見てきたことで、背景パースについて一つ残しておきたい発見がありましたので、ここで報告したいと思います。

さて、とは言ったものの、これ実は動画を見てもらったほうが分かりやすいかもしれません。
お時間がある方はぜひこちらをどうぞ。こちらは僕が平日24:00~26:00、毎日お送りしています『お絵かきラジオ』から抜き出したものです。



実はこの前後にも個人的にはかなり有用だと思う情報がありますので、さらに時間を掛けても聞きたい、という方がおりましたら、過去ログを見てみてくださいね。
http://www.nicovideo.jp/watch/1370838324
他にも毎日ためになる話があったりなかったりもするので良かったら生の生放送もどうぞ。
http://ch.nicovideo.jp/goto-junpei/live

今回は生放送の中でパースの話をしたのですが、そもそもパースって何?って方もいらっしゃると思います。パースとは…簡単に言うと透視図法のことです。一点透視図法、二点透視図法、など美術の時間にやった人も多いのではないかな?これが一点透視で描いた机と本棚です。

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ここから先はちょっと踏み込んだ話になるのですが、この机と本棚は、ちょっと不自然なんですよね。これをそのままマンガのコマの中に入れてキャラを立たせたら、たぶん机ナガッ!ってなると思います。横幅何メートルあるのと。試しにもう一つ同じ大きさの机を奥に並べてみると分かるのですが、地平線の彼方へ続いてしまう感じになると思います。貴族ならいいんですけど。で、自然に直したのがこっち。

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消失点は変わってないのに、描きようがいくらでもある。これが背景作画の難しいところです。逆に場面によっては自然な見え方が効果的でない場合もあります。たとえばこんなときとか。

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これはまた別の回で触れた話ですね。去っていく車を後方から描いたものです。迫力が欲しい場面なので多少誇張したほうが効果的なこともあります。これは背景教室の打ち合わせで畑先生が話してたのですが、消失点ここらへんで車を描いてって頼んで、上みたいのを持って来られるととっても難しい、と。なぜなら上のも"間違ってはない"、からリテイクしてもらうにもどうしていいか頼みづらい、、ってことでした。このあたりのこと、漫画家やアシスタントの方は誰もが経験することなのではないでしょうか。正解だけど、正解じゃない。むずかしいですよね。

あ、その適切なパース感、漫画としての正解、を習得できるのが、前田さんの背景教室ですよ!続報お楽しみに!


それで話を戻して一点透視図法なのですが、前田さんも背景教室の中で、この一点透視が透視図法の中で一番難しいと言っていました。机の件のように、油断すると奥行きの感覚が狂ってしまいがちだからです。前田さんの教室ではこの感覚を掴むために、実際に立方体を並べて描いたりしました。

そして僕が個人的に面白かったのは、その教室の後の帰り道で、動画編でお馴染みのプロアシゆのきんさんが「そこらへんのことって計算でも分かるんだよね。」って言ってたんですね。僕はその言葉にハッとして、言われてみればそうだ、それなら実際計算して先に基準を知ることもできるんじゃないか、って思ったんです。


生徒さんからも「立方体の上の厚みをどれくらいに書くかが分からない」という質問がありました。(その生徒さんも前田さんの授業の中でとても納得のいく答えを得られたようです。)

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こんな感じで一点透視で描いた時の立方体の上の厚みですね。これは視線の高さを(つまりは消失点を)同じと考えた時に、この立方体と視点との距離で変わってきます。

けどこれってようは、自由、なんですよね。なぜならこの立方体と視点の距離、つまり立方体がどれだけ離れた場所にあるか、というのは描き手が自由に決めていい場合が多いからです。

(離れたら小さくなりますが、その分拡大してやれば大きさは変わらないわけで。先の車の絵ですが、視点の距離が違うことが分かるでしょうか。上のほうは少し遠くから、下の方は近くに寄って描いてるわけです。)


このことは僕も昔ずいぶん悩まされました。学校の教室の床を描くときに正方形のタイルを敷き詰めたいのですが、どのくらいの厚みで書けば長方形でなく正方形に見えるのか、分からなかったからです。

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今は場数を踏み、感覚で描けるようになってしまったのですが、実はこれはゆのきんさんの言うとおり計算で求められたことだったのだなと。それをもっと早く知っていれば、、上達の手助けになったかもしれません。

それで今回は、今こそこの基準を計算して出してしまおうじゃないか!ということなんです。


さてではまずこの厚みはどこを測ればいいのかってことなんですが、たぶんこの下の図の太い矢印の部分、ここが見た目の厚さになるはずですよね。

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それで基準作りにあたって、今回は、
「身長168cmの人(僕)が教室に立って真っ直ぐ前を見たときの、3メートル先の30x30cmの正方形のタイルの、見た目の厚さ」を求めます。

計算しやすいように目の位置は150cmにしました。背景はだいたい肩くらいの高さにアイレベルを(つまりは消失点も)もってくることが多いので、ちょうどいい高さなのではないでしょうか。そうすると以下の様な図ができます。

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太い矢印の部分を求めます。
勘の良い人ならこれでどのように矢印の部分を求めるか分かったのではないかな? そうです、比例です!(なつかしい…)

具体的にはこういう計算式になりますよね。
小さい三角形と大きい三角形を見てください。

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そして、計算すると、出ちゃったんです。(あたりまえですが)
一点透視を習っても、この厚みをどう描くかは適当に感覚で描くと習ったと思いますが、実はちゃんと数字を出すことができるわけです。どきどきしませんか?

さあでは結果ですが!!

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13.6cmでした!!

つまり、、


「身長168cmの人(僕)が教室に立って真っ直ぐ前を見たときの、3メートル先の30x30cmの正方形のタイルの、見た目の厚さは、、13.6cmで描けばOK!!」


こんな感じ。横の長さの半分よりちょっと短い感じですね。

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ただこれ大事なのは比率ですよね。実際に30cmの長さで描くわけではありませんから。
背景の中でタイルの横線を1cmで描いたら、半分よりちょっと短い、0.4cmくらいで厚みを描けば間違ってないってことです。

そして一つ基準ができればそこからは製図的に数を増やすことができますね。こんな感じに。
(詳しいやり方は動画を!)一つできてしまえば他の正方形の比率を求める必要はありません。

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もちろんタイルじゃなくてもっと大きなものでも応用はききます。三メートル先に2x1mの浴槽があるなら、まず床の接地面を考えて、厚みが0.4m程に見え、そこから高さを導いて線を結べばできあがります。(このあたりも動画で!)

どうでしょうかこの30cmに対する13.6cmという数字。長年のモヤモヤがすっきりした感じです。
実際はここまでして描かなくてもよいと思うのですが、自分の描いたものをチェックするには十分に使えるのではないでしょうか。3m先のタイルの厚みが、横の長さの半分より長かったら、ちょっとおかしいって気づけるはずです。

もう一度書いておきます。

「3メートル先の30x30cmの正方形のタイルの、見た目の厚さは、13.6cm。」


でも実はあんまり囚われなくてもいいと思います。(最後に全否定w)
結局上達するには自分の頭に浮かんだ映像を投影させる感覚的な部分が重要です。作図ではないので。生放送内で何度か言っているのですが、パースは整えるもの、くらいに思って、ガシガシ描いたあとに、ちょっとこんなことを思い出して補正するくらいの感じでいいんじゃないでしょうか。絵は自由ですよ!

あとこれ、実はレンズの問題をまったく考慮してないんですよね。
この話は、カメラで言えば50mmレンズを使った時に限ります。とはいえこの辺りのことを詳しく話し始めると終わらないので、、レンズ解説編はまた機会を改めてお送りしたいと思います。なのでみなさん、ぜひこのニコニコチャンネル「彩色主義」をお気に入り登録しておいてくださいね!


ところで!
実は、実際に漫画の背景では一点透視ってあまり使われません。(更に完全否定ww)
二点透視のほうが画面映えすることが多いんですよね。でもみなさん、せっかくこんなに一点透視の話を読んだら、一点透視で描かれた絵をもっと見てみたいと思いませんか??

そんなあたなにはこれ!
ごとうの新刊『金魚ガールズ』です!
イラストとショートストーリーで綴ったイラストブックです!

今回改めて見なおして気づいたのですが、イラストの八割型が一点透視なんですよね。一点透視は扱いが難しいですが、印象的な画面を作り出せる気がします。スマートフォンやiPhoneでもご覧いただけますのでぜひご覧になってみてくださいね!

「どこかで聞いた、あの夏の物語。」

カラーイラストとシンプルな文章で綴ったショートストーリー、
漫画家ごとう隼平の新作は絵本とも漫画とも違う新カテゴリ、イラストブック…"イラブ"です。

私たちが枕元に置いていたお気に入りの小説や漫画が、キンドルや電子書籍に変わったとき、その魅力は増したと言えるでしょうか。これからの時代に、どんな作品なら愛着を持ち、電子書籍が大切な宝物になるのか、、そう考え辿り着いたのが、インクによる印刷では表現できない、液晶画面だからこそ可能になった、1677万色RGBカラーで描く世界です。

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