大変多くの反響をいただいた!
少しでも多くの人に伝わる事が
私の望みだったので
とても嬉しく思っている!
私はもう
すっかり泣き止んだので
ご心配なく!
はてさて!
朝起きたらする事!
最近の私は「映画鑑賞」と決めている!
自分の執筆作業に入る前に
他人の作品を観て
「私ならばこうするのに!」
と独自の発想を活性化させるのだ!
なので例えば
『マッド・マックス 怒りのデス・ロード』
のような私の想像力を越える作品は観ない!
もっと『殺人魚フライングキラー』とか
『食人族』などといった
「おいおい君たち!
何をしているんだね!」
と言いたくなる作品を選んで鑑賞する!
そんなわけで数日前の早朝
私は『大霊界2~死んだらおどろいた!』を観た!
そのあまりにもあんぽんたんな発想と映像には
生きているのに驚いた!
それによって私の発想は見事に活性化し
実に快調に執筆が進んだ!
そのうちに「カミさん」は
友人との昼食会に行くと言って
家を出て行った!
私は
”じゃあ私の昼食はどうなる?”
という心配も思い浮かばないほど
執筆に没頭していた!
そんな時である!
リビング・ルームから
かすかにインターホンの音が聞こえた!
昼時に我が家を訪ねて来る知人はいない!
我が家に客が来るのはたいてい19時以降だ!
どうせ何かの物売りか勧誘だろう!
そんな事にかまっている場合ではない!
執筆は頭脳が覚醒している時間にすべきものだ!
ところがだ!
インターホンは鳴り続けていた!
一度消えては
またしばらくして鳴り出し
また消えてはまた鳴り出した!
これはよくある事だ!
出かけた「カミさん」が
家の鍵と携帯電話をかばんに入れて
そのかばんごと忘れて出て行くと
こういう事になる!
さぞやお困りの事だろう!
いつまでもマンションの集合玄関に
立たせてはおけないので
私は水飲みついでにリビング・ルームへ向かった!
そしてへらへらと笑いながら
インターホンの中のモニタを覗いた!
とんでもなく驚いた!
それは「カミさん」ではなかった!
どこかの見知らぬ白髪親父だった!
いや!
違う!
見覚えがある!
なんとインターホンを押し続けるのは
かなり老けて見えるが
私の高校時代の友人である「佐藤君」だった!
一応芸能界でも仕事をしている私なので
同窓会名簿などには住所は載せていない!
なのにどうして?
モニタの中にいる老人のような佐藤君は
ちょいとあわてているように見えた!
何度も腕時計を見ては
カメラのレンズを覗き込んでいた!
私はなんだか少し怖くなった!
なので受話器を取らずに
しばし佐藤君の行動を観察した!
モニタは切れた!
しかし彼は
そこからも数回インターホンを押しては
モニタの中に登場した!
腕時計とレンズを見ては
集合玄関を少し歩き
我が家の郵便受けをパカパカさせては
また腕時計を見てレンズを覗き込んだ!
おかしい!
彼は私が家の中にいる事を確信して
インターホンを押し続けている!
ははーん!
これはどうやら
出掛けの「カミさん」に出会い
私が在宅である事を知ってのピンポンだな?
しかし「カミさん」の事だ!
「夫は執筆中なので
インターホンに出るかどうかはわからない!」
と伝えてくれているだろう!
ならば今更ながら受話器を取っても
佐藤君は怒りはしないはずだ!
私は恐る恐るではあるが
インターホンの受話器を取ってみる事にした!
「はい・・・。」
「会長?
会長だよね?」
間違いなく佐藤君だ!
高校時代の私が「生徒会長」であった事を
ちゃんと知っている!
「佐藤君だよね?」
「そう!」
「うっそ久しぶりじゃないの!」
私は佐藤君が好きだった!
彼は友達が多い方ではなかったが
とても面白い発想の持ち主だった!
なので
いわゆる高校生による
女性への興味話に飽きると
私はよく佐藤君と科学や数学の話をした!
「放物線を用いる二次関数は
大砲の弾道計算から発展した学問なので
熟知すれば
次の戦争では
最前線に立つ事はなく
より安全な大砲の後ろに配属される!」
という奇妙な護身術を教えてくれたのも
佐藤君だった!
そんな意外で刺激的な来客が
ちょいと嬉しくなった私は
”ここから執筆などしても
現実の方の面白さには勝てない”
と判断した!
なので玄関の自動ドアを開けるボタンを押した!
「どうぞどうぞ!」
ところがだ・・・
佐藤君は入って来ようとしない!
ただモニタに向かって
とてもおかしな事を言い始めた!
「それは今どこ?」
どういう質問だろう?
私の家を訪ねておいて
「それはどこ」もあったものではない!
ここは我が家だ!
「仕事場ではないよね?
違う部屋だよね?」
なんともおかしな質問だが
高校時代の物理の時間に
「時間というのも物質です!」
みたいな事を言って
先生をたいそう困らせた佐藤君だ!
(私はそれを聞いてから
佐藤君に興味を持って仲良くなった!)
おかしな質問こそ佐藤君の代名詞である!
「今ここはリビングだけど!
え?
上がって来ないの?」
私がそう言った瞬間にモニタは切れた!
私は1階まで降りてみようと
玄関に向かったが
またピロリロと呼び出し音が鳴り
モニタに佐藤君が登場した!
私はすぐに受話器を取った!
「なに?
佐藤君どうしたの?」
佐藤君はモニタの中で腕時計を見ていた!
カメラのレンズを見なくなっていた!
私は何が何だかさっぱりわからなかった!
さては賢さ余って気でも狂ったのか?
「会長?
会長?
いる?」
「いるよ!
だから上がって来なって!」
私がそう言った時!
書斎「LEVEL 4」の中で
とんでもなく大きな音がした!
以前ねこの「FUTURO君」が
空気清浄機を倒した時にも
なかなか大きな音が鳴ったが
その時聞いた音は
明らかに空気清浄機どころではない物が
落下もしくは転倒した音で
むしろ爆発音に近かった!
「佐藤君ちょっとごめん!」
私はインターホンをほったらかし
あわてて書斎「LEVEL 4」に入った!
信じられない光景だった!
書斎の天井が半分落ちていた!
上の住人の家具や衣類が
書斎「LEVEL 4」の中に転がり込んでいた!
幸いにして
今これを書いているコンピュータは無事だったし
それまで執筆していたデータも残っていたが
私の座る椅子の上には
巨大なたんす状の物が鎮座し
私の椅子をぐしゃりと押しつぶしていた!
もしそこに座っていたら
間違いなく命を失っていただろう!
運が良ければ首の骨折とかいうレベルではない!
絶対に死んでいたはずだ!
なんとか写真をお見せしたいのだが
階上住人の弁護人から
厳重に止められているため
それはできない!
ありがとう佐藤君!
私は佐藤君にそれを伝えようと
リビング・ルームに戻った!
しかし・・・
もうモニタの中に佐藤君はいなかった!
そこからもうインターホンが鳴る事はなく
佐藤君は二度と現れなかった!
探しに出たかったが
書斎の惨状がそれどころではなかった!
私はそのままリビング・ルームにとどまり
マンションの管理会社と連絡を取った!
翌日になって
幾つかの立ち入り調査なども終わったところで
私は数名の同級生と連絡を取り
佐藤君の所在を尋ねた!
なんでも磁気か磁場かの研究施設に
長いこと勤務しているとの事だった!
電話は苦手な私だが
山梨県にあるというその研究施設の代表番号に
佐藤君を尋ねて電話をかけてみた!
男性職員の少々お待ち下さいという言葉の後
「はい佐藤です。」
というあの佐藤君の声が聞こえた!
どうにもけろりとした様子の佐藤君だった!
私は書斎で発生した落盤事故を伝える以前に
昨日の訪問の用事は何だったのかを尋ねた!
しかし!
またしても佐藤君の様子がおかしい!
「ん?
はい?
え?
会長だよね?」
佐藤君であるのは間違いない!
「昨日どうして来てくれたの?」
「え?
僕、佐藤だけど。」
「それはわかってるって。」
「ごめん。
ちょっとよくわかんない。」
かなり不毛な問答が続いた!
15分以上はこの調子の二人だった!
とにかく佐藤君は
私の家など
行った事はないし
そもそもどこにあるのかも知らないと言う!
やがて話がぼんやり噛み合った時!
佐藤君はとんでもなく奇妙な言葉をつぶやいた!
「・・・あ。
やった。
やったかも!」
そこから聞いた話に関しては
今の私も半信半疑
いや!
全部を疑っている!
「高校の頃ね。
会長だけが”時間は物質”っていう話を
信じてくれたよね?」
信じたと言った覚えはない!
興味を持っただけだ!
「僕ね。
山梨でね。
その研究してんのよ。」
”時間が物質である”という研究?
佐藤君は少し声のトーンを落とした!
「詳しい事は説明できないし・・・
しちゃいけない事になってるんだけどね。」
わからない!
これを書きながらも
私は首を横に振っている!
だが敢えて書こう!
なんと佐藤君の研究は
要するに”タイムマシン”だと言うのだ!
椅子に座ってハンドルを握って
うぃーんと移動する物ではないらしい!
なので厳密には違う物なのだそうだが
佐藤君の話をつなぎ合わせると
彼が研究しているのは
結局は”タイムマシンのような物”だ
と私は判断した!
なぜか私まで小声で話した後
我々は電話を切った!
私は荒れ果てた書斎「LEVEL 4」の中で
しばらくぼーっとしながら考えた!
そして徐々に理解し
やがては全身に衝撃が走った!
私はあの時!
どうやら書斎「LEVEL 4」で死ぬはずだったのだ!
佐藤君はそれを止めるために
どこかから(敢えて”未来”とか言いたくない!)
やって来て我が家のインターホンを押したのだ!
私が書斎の椅子にさえいなければいい!
どこか別の部屋にいれば
私は死なずに済む!
それを目的に佐藤君は
腕時計をちらちら見ながら
何度も何度も我が家のインターホンを押したのだ!
佐藤君は私の命を救うために
”どこか”からやって来たのだ!
今の佐藤君にお礼を言っても仕方がない!
本人の知らない事だ!
とは言え
何年後かの佐藤君にもお礼は言えない!
なぜなら電話で喋った山梨にいる佐藤君は
私が死なない世の中の佐藤君だからだ!
こういう面倒な話は
「喜劇王・川下大洋」に任せよう!
私はもっとシンプルな事を考えていたい!
それにもう
この佐藤君が関わる怪事件に関しては
考えたくもない!
なにしろこれで私は死なずに済んだ!
私が生きている今のこの世の中を
もっともっと楽しませようと思う!
それでいいのだと思う!
2016年4月1日