「サッカー」の話をしても
「ゴミ映画」の話をしても
「電車」の話をしても
「宇宙開発」の話をしても
「ルチャ・リブレ」の話をしても
「パブロック」の話をしても

・・・「昆虫」の話をしても
だいたい居酒屋だと15分ぐらいで
「そろそろ話題変えません?」
と断ち切られる!
無視して30分話す頃には
周囲から人がいなくなっている!

今年2月に開催した講義イベント
『王立大学 出張講義〜昆虫学の時間』は
どれだけ「昆虫」の話をしたとて
誰からも
「話題変えません?」
とは言われない場だった!
幸せだった!
しかしそれよりも幸せを感じたのは
先日の「伊丹市昆虫館」における
「奥山館長」とのトークだった!
『ピーチケパーチケ』放映はいよいよ今週!)
なにしろ
「そうそう!」とか
「いやそれはどうでしょう?」
と言ってくれる相手がいるのだ!
私が好きなだけ持論を投げつけると
それに対する反応があり
やがて更に深い「知識」を与えてもらえるのだ!
かのマリリン・モンローは
「寝る時には何を着てますか?」
という『LIFE』誌記者の質問に対し
「シャネルの5番」
という香水の名を答え
衣類は着用していない事を男子の想像力に委ねた!
”服装の趣味が悪い”
と方々から言われる私だが
私は外出する時に衣類など着用している気はない!
私の着衣は逮捕されないための護身用具だ!
私が外出する時にまとう物は
「知識」なのである!

私は一つの興味に没頭すると
かなり短期間のうちに
専門家としか話ができない人間になってしまう!
最近の私は「サッカー好き」や「昆虫好き」として
知られているようだが
残念ながら
「サッカー好き」や「昆虫好き」とは
うまく話ができない場合が多い!
私の中で「知識」が増え過ぎてしまっているせいだ!

それは「恐竜」に関しても同様である!

先日
とんでもなく素敵な場に
呼んでいただいた!
それはどれだけ偏っても構わないという
トークイベントだった!
タイトルは
『夏休み!恐竜居酒屋』

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失礼な話ではあるが
私はこのイベントの主役である
「恐竜くん」なる人物を
芸人だとばかり思っていた!
甲高い声で
「ぎゃぎゃぎゃ!」
とか言う人物だとばかり思っていた!
しかしそれはとんでもなく大きな間違いだった!
彼は高校時代から6年間カナダに留学し
純粋に古生物学を研究した
れっきとした研究者だった!
頂戴した名刺を見れば
「企画・講演・執筆・イラスト」
と書かれていた!
なんでも「恐竜くん」は
北米の研究所に発注した
実物大の「ティラノサウルス」全身骨格レプリカを
個人で所有しているのだと言う!
それのみならず貴重な標本を
様々所有しているものだから
前述の肩書きを組み合わせると
たった一人で”恐竜博”を開催できる
いや!
開催して生きている人物なのだと言う!

かくして
「Bugって花井」なる
「メガマウス」アイドルを間に挟み
延々3時間半に渡る「恐竜」トークが行われた!
「メガマウス」というのは
異様に巨大な口を持つ深海鮫の一種だ!
どういうわけか「メガマウス」に惚れ込んだ彼女は
自らが「メガマウス」となって
歌ったり踊ったり喋ったりする
「メガマウス」アイドルになってしまったのだった!

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私は何の遠慮もせずに「恐竜」を語った!
トーク開始直前に宣伝チラシを見たところ
私の役は”聞き手”と書かれていた!
しかしそうはいかない!
話したい事が山ほどある!
尋ねたい事が山ほどある!

とは言え私と「恐竜くん」とで
本気で会話してしまえば
観客も「Bugって花井」ちゃんも
時速100km以上の速度で置き去りにしてしまう!
それではトークイベントは成立しない!
まずは「恐竜くん」が大前提を宣言してくれた!

「”鳥は恐竜なのではないか?”
 とか
 ”鳥が恐竜の進化した生物という可能性がある”
 とかおっしゃる方が多いようですが
 ここに断言しておきます!
 ”鳥は恐竜です”!
 僕らは恐竜に餌を投げ
 電線にとまる恐竜を見上げ
 恐竜の親子が道路を横断するのを見守り
 恐竜を食べながら生活しているんです!」

この宣言を聞き
会場では必然的に唐揚げの注文率が上がった!

さて!
私は言語というものにも非常に興味がある!
「昆虫」にしても「恐竜」にしても
生物のほとんどはラテン語の学名を持っている!
だがポピュラーな和名や英語名があるおかげで
動物園や水族館にいる生物を
学名で呼ぶ人は少ない!
「アイルロポダ・メラノレウカのぬいぐるみが欲しい!」
とねだる子供もいなければ
そうねだられてすぐに
「パンダ」のぬいぐるみを買える親もまずいない!
ところが「恐竜」に関しては
学名が通り名になっている場合がずいぶんと多い!
そしてそこには
ラテン語さえ理解できれば
実に楽しい足し算が存在している!

例えば!

“Tri(トリ)”がラテン語で”3”を意味し
“Ceratos(ケラトス)”が”角”を表し
“Opus(オプス)”が”顔”を指すからこそ
「Triceratops(トリケラトプス)」
という名の「恐竜」が誕生する!

更に人気の高い名称を分割してみよう!

“Tyranno(ティラノ)”が”凶暴な”
”Saurus(サウルス)”が”とかげ”
”Rex(レックス)”が”王様”
これらを足し算して
「Tyrannosaurus-Rex
 (ティラノサウルス・レックス)」
が完成するわけである!

そんな仕組みを説明するだけならば
トークイベントなどせずに
インターネットでどこかに書き込めばいい!
”45歳のどちて坊や”と異名を持つ私は
この学名に関する巨大な”どちて”を
「恐竜くん」に投げつけてみた!

「恐竜と鳥が同種という考え方が
 確実な学説として成立しているのであれば
 なぜ我々はまだ
 ”ティラノサウルス”
 と呼ばなければいけないのか?」

オセアニア大陸で絶滅した
立ち姿3.5mの巨鳥「モア」の学名は
「Aepyornis(エピオルニス)」と言う!
“Aepy(エピー)”が”最長身の”を意味し
”Ornis(オルニス)”は”鳥”を表す!

「恐竜が爬虫類ではないと断言された今
 ”とかげ”を意味する”サウルス”で呼ぶ事は
 古生物学上の恥ではないのか?
 ここらで
 ”凶暴な鳥”を意味する
 ”ティラノルニス(ティラノ・オルニス)”
 と改名するべきなのではないのか?」

観客が私の提案に賛成してくれている空気を感じた!
私は”サウルス”名を持つ「恐竜」すべてを
”オルニス”に訂正する事を訴えた!
(同時に
 ”鳥だか恐竜だかわかならない”
 という今となってはあまりにも理不尽な理由から
 “〜もどき”を意味する
 ”Mimus(ミムス)”
 というラテン語を用いて
 「Ornithomimus(オルニトミムス)」
 つまりは”鳥もどき”と名付けられた
 悲しい「恐竜」の全改名をも訴えた!)

「んー!
 それはねぇ!
 難しいんですよねぇ!」

「恐竜くん」は生物の学名に関する
大人のルールを詳細に説明してくれた!
しかしその規定の第1項は
”一度名付けたら変えちゃだめ!”
という案外子供なルールだったりした!
しかも驚くべき事にその規定の中には
”よく知られている名前は変えちゃだめ”
という
細木数子に対する批判のような条項が
存在している事も明らかとされた!
「ティラノサウルス」は
当然そこに該当するのだそうだ!
どうやら「ティラノサウルス」は
私が生きている間は
ずーっと爬虫類な名前でいなければいけない!
ティラノよ!
「違うのにぃー!」
と鳴くがいい!

そう!
そうだ!
こういう事だ!
私はこういう会話にひろぐのだ!
ただただ会得した「知識」を
見せびらかしたり見せ合ったりするのではない!
「知識」から生まれてしまった謎や疑問を
解決できない事を知りながらも
真剣な顔で語り合いたいのだ!
「後藤さんその話はもういいじゃないですか!」
いやいや!
そこから先の世界こそが
私の飛び込みたい場所なのだ!

客席からこんな質問があった!

「恐竜は再生できますか?」

「恐竜くん」はそれに答えた!

「マイケル・クライトンが
 『ジュラシック・パーク』に記した発想
 つまり恐竜の血を吸った蚊から
 恐竜の遺伝子を取り出し
 近縁種とかけ合わせ続ける事で
 恐竜を再生するという方法が有名ですね!
 けど!
 あの方法では恐竜は再生できません!」

その方法で古生物を再生できない事は
わずか1万年前まで島根県でも歩いていた古生物
「マンモス」であっても証明されている!
6千5百万年前に絶滅した「恐竜」が
どうして再生できようか!

「けど!
 もう一つ考え方があります!」

そこで「恐竜くん」が述べた方法には
私のみならず
会場中が大きくどよめいた!
すごい考え方なので
よく読んで理解し
今夜の居酒屋で語って頂きたい!

「恐竜が鳥に進化していくためには
 遺伝子が付け加えられなければいけません!
 手を羽にする遺伝子!
 体を軽くするために骨を空洞にする遺伝子!
 体を小型化する遺伝子!
 そうした情報を持つ遺伝子が
 どんどん付け加えられて
 恐竜は鳥になっていったんです!
 だとしたら?
 その遺伝子の情報が伝わらないようにすれば?
 つまり
 化石から取り出した恐竜の遺伝子を
 どうのこうのするのではなく
 現存する鳥の遺伝子を操作して
 進化の情報をストップさせてしまえば?
 その時に卵の殻をパリンと割って出て来るのは
 ・・・ティラノサウルスの子供かもしれません!」

ご理解いただけた方からの拍手が
今の私の耳には聞こえている!

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「恐竜くん」との出会いは
私にとって強烈なものとなった!
さっそく連絡先を交換し合い
今後も様々な「知識」と「想像」を
ぶつけ合うつもりだ!
聞けば彼は常々
子供達を相手にイベントを開催し続けており
酒を飲みながらの大人の前で語る事など
初めての経験だったと言う!
ならばまだまだ彼の存在を知らしめたい人達が
私の周囲には大勢いる!
今回のイベントは彼がメインだったが
いずれ私が彼を呼び出したいものだ!

そんなわけで打ち上げの席で
私は無茶をいっぱい盛り込んだ
私なりの「恐竜」を描いた!

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「恐竜くん」は私の落書きを
じっと真剣に見つめた末に
命名してくれた!
「Hexapoda Ceratopteryx」
(ヘクサポーダ・セラトプテリクス)
「六本の足を持つ角の生えた翼」
だそうだ!
うん!
どっさり気に入った!

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