「道後温泉に行きたい!」
と「カミさん」が言い出した!
夏目漱石の『坊っちゃん』でも有名な
「道後温泉本館」が
なんでも来年2019年の1月から
改修工事に入るらしく
今を逃せば
しばらくは完全な姿が見られなくなると言うのだ!
私は以前
なにかの舞台のツアー公演の際に
道後温泉本館を目にしていた!
「キッチュ」こと松尾貴史がいたので
きっと『なにかBIZ』だったのだろう!
(『Big Biz』『Bigger Biz』『Biggest Biz』
の三部作のうちいずれか)
その道後温泉本館と呼ばれる建物の姿に
ずいぶんと驚かされたのを記憶している!
恐らくは古くから増築を繰り返したせいで
取り返しのつかないぐらい不思議な姿をしており
その複雑な外観を目にすれば思わず
”日本のウィンチェスター・ハウス”
と呼びたくなるような歴史的建造物だ!
しかも普通に浴場として営業しており
道後の街の中心としてそびえている!
あの見るからに複雑な建物を全館改修するなど
素人の私が想像しても気が遠くなる!
改修工事には間違いなくかなりの年月を要する事だろう!
ならば是非ともその全景を
今のうちにカミさんに見せたいものだ!
そんなわけで大阪から飛行機でわずか40分!
私とカミさんは愛媛県は松山市の
道後温泉にやって来た!
我々ごときにはもったいないほどの
素敵な旅館「ふなや」に一泊し
ふぐ料理を頂きながら翌日の行動を議論した!
そもそもはカミさんの
「道後温泉本館での入浴」
を唯一の目的として
数ヶ月前に計画された旅行だったため
私はただそれにくっついて行くだけの予定だった!
しかし!
そのわずか数ヶ月の待機期間に
私の状況は大きく変化していた!
今の私には
日本中を巡りたい衝動が発生していた!
「ラヂオ塔」だ!
「一幡公平(いちまん・こうへい)」氏による名著
『ラヂオ塔大百科2017』
の巻末リストによれば
昭和14年(1939年)には
「道後湯之町公園」なる場所に
ラヂオ塔が建造されたと記されている!
しかもそのリストでは
一幡さんによる現地確認の印が付けられていない!
(存在が確認されれば○が!
確認できない
もしくは撤去が確認された場合には
☓が付けられている!)
一幡さんが印を付けていないと言う事はつまり
建てられたのは間違いないが
”あるかないかわからない”
というわけだ!
そこがまたラヂオ塔探検の大きな魅力と言えよう!
一幡さんはラヂオ塔の権威ではあるものの
460基以上建てられたとされるラヂオ塔のうち
実際に現場検証を行った数は
約200件ほどのようである!
となれば!
まだまだ未発見のラヂオ塔がこの国には存在し
それを発見するのは
私か!
もしくはあなたかもしれないのだ!
”あるかないかわからない”物を探す!
なんとロマンチックな事だろう!
架空とされていた伝説の都市トロイアを発見した
ドイツ人考古学者
「ハインリヒ・シュリーマン」!
解答など存在しないかもと囁かれた数学問題
「ポアンカレ予想」を解決した
ロシア人数学者
「グリゴリ・ペレリマン」!
2日間で撮影し
誰も観ないだろうと言われたゴミのような映画に
大勢の観客を集めた
アメリカ人映画プロデューサー
「ロジャー・コーマン」!
”あるかないかわからない”事に挑んで結果を出した彼らを
私は
「世界三大あるかないかマン」
と呼び崇拝している!
”あるかないかわからない”ラヂオ塔を探す事は
私にとって
「世界三大あるかないかマン」
に近づく一歩なのだ!
もしも『ラヂオ塔大百科2017』のリストに掲載されている
「道後湯之町公園」が
現在の「道後公園」であれば
旅館「ふなや」の部屋の窓から
もうそこに見えていた!
チェックインしてすぐに
中居さんにその件について尋ねてみたのだが
その返事はまだだろうか?
「あっ!
そう言えばさっき
あなたに渡せとメモが届いてた!」
カミさんさんにそう言われた私は
「なぬー!」と言った!
翌朝
旅館を満喫した後にチェックアウトした我々は
さっそく道後公園に向かった!
天気は快晴!
絶好のラヂオ塔探し日和だ!
公園とは言うものの
そこは運動場と遊具で構成されているような
街の小さな公園とはわけが違う!
そもそもは
「湯築城(ゆづきじょう)」という城跡であるため
広大な上に高低差もそこそこにある場所だった!
さーて?
そもそもラヂオ塔とはどういう所にあるのだろう?
私の中でのヒントは「ラジオ体操」だった!
家で1人でやっても効果は変わらないはずのラジオ体操を
屋外に集合して行う日本人独特の奇習は
ラヂオ塔が日本各地に配備されていた事の名残だ!
ならばラヂオ塔のある場所は
人々がラジオ体操をしに集合できるような立地条件が
不可欠と言える!
そのため林の中や
急勾配の傾斜地などには存在しえない!
山中で目的の場所を探すためには
まず高い場所に登れと
「ランボー」は教えてくれた!
そこで我々は公園中央部にある展望台に登った!
かつては湯築城があった小高い丘の上である!
このページではお見せできない
360°全天球カメラ写真を
別ページに掲載したので
興味のある方は以下のリンクでご覧いただきたい!
「道後公園 展望台」
ぐるり360°を見渡せる高台から
それらしい場所を探して見下ろすと
広場のようなグラウンドが見えた!
そこがいつからグラウンドなのかはわからないが
ラジオ体操をするには最適な場所だ!
我々は展望台を降りてグラウンドへと向かった!
「さぁ!
存分に探すがいい!」
カミさんは景気よくそう唱えて
どこかに歩き去った!
まぁカミさんはカミさんで
歩いてみたい場所を見つけたのだろう!
私はそこでカミさんと別れ
グラウンドの周囲を歩いてみた!
喫煙ベンチでは仲良しそうな老人が2人
ベンチに並んで何やら楽しそうに方言で話していた!
なんとも素敵な光景だった!
その昔の若かりし頃は
2人でそのグラウンドを駆け回ったのだろう!
グラウンドで意味なくグルグル回って
2人でげーげー吐いたりもしたのだろう!
隣町の奴らに絡まれグラウンドに逃げ込み
2vs6ぐらいで大喧嘩をした事から
「ホーク」と「アニマル」という異名を授かり
”道後ウォリアーズ”として恐れられたのだろう!
そんな2人がじっとグラウンドを見つめながら
何かを語っては笑い合っている!
それを見た私も一服したくなり
ベンチに腰を降ろした!
道後ウォリアーズは見たところ70代だ!
ひょっとしたら何か知っているかもしれない!
「すいません!
ちょっとお尋ねしたい事があるんですがね!」
まずは「ラヂオ塔」という物を説明するのに
ずいぶんな時間がかかる!
『ひろぐ』読者であればここ数回の記事にて
熟知しておられるのだろうが
まず「ラヂオ塔」という言葉を出すと
100%「電波塔」として理解されてしまう!
「そんなもんはここにはないよ!
山の中に行けば何本もあるけどね!」
道後ウォリアーズから得たのはそんな答えだった!
5分ほど説明したところで
やっと彼らがラヂオ塔を理解してくれた!
しかし彼らの想い出の中にそんな物は存在しないと言う!
「ここら昔は動物園だったのよ!」
遠くを指差しながら
アニマルの方がそう教えてくれた!
さすがはアニマルと呼ばれるだけの事はある!
もしもそこがかつて動物園だったのだとしたら
そこにラヂオ塔は無い!
ラジオを購入できない一般庶民に対して
情報を提供したラヂオ塔が
有料公園の中にあってはならないからだ!
「そこに見えてるおっきな建物が
”子規記念博物館”なんだよ!
そこで聞いてみるといい!」
ホークがそう言うと
アニマルもそれに同意した!
愛媛県松山市の出身にして
「野球」の夢を捨てて歌人になった男
「正岡子規」の功績を讃えて作られた博物館が
すぐそこにあった!
私は道後ウォリアーズに礼を述べ
カミさんを見つけ出したところで
子規記念博物館に入館した!
ところで!
道後という街はスタンプ・タウンだ!
神社、公園、駅、浴場、博物館!
いたる所にステンレス製のボックスが設置され
その中にスタンプが収納されている!
その多くは様々な歌人による俳句だ!
今でも「後藤おすひと」を名乗る私にとっては
休む間もないほど
「スタンピー(”スタンプが多い”という形容詞)」
な街だった!
「実はこの公園で探してる物がありましてね!」
子規記念博物館の受付の女性に
まずは5分間かけてラヂオ塔を説明した!
朗らかで上品な女性で
私とそれほど歳も変わらないように思えた!
子規記念博物館で受付に立っているという事は
きっと野球と詩が大好きな女性に違いない!
となれば世代的に考えて愛読書は
『野球狂の詩』だったはずだ!
「んー・・・そういった塔は記憶してないですねぇ!
歌碑ではないんですよねぇ?
んー・・・わっかんないですねぇ!」
ずいぶんと悩んでくれたのだが
返球はドリームボールとはいかなかった!
「ここを出て公園の外周に沿って少し歩いて下さい!
そしたら”湯築城(ゆづきじょう)資料館”があります!
公園の管理事務所も兼ねてるんで
ひょっとしたら何か知ってる人がいるかも!」
なるほど道理だ!
彼女の専門は野球と俳句であって
いわばシンガー・ソング・ピッチャーだ!
公園内の施設など把握していようはずがない!
私は仮称”水原勇気”に礼を述べて博物館を出た!
「どうだった?」
と待たせていたカミさんに聞かれた!
私は歩きながら
「もう1箇所だけ
この先の資料館ていうのに行って
だめならあきらめるよ!」
と答えた!
湯築城の内堀に沿って歩く散歩道は快適だった!
愛媛県の名所である松山城は
ロープウェイで登らなければいけないほどの
山頂に建築された警戒心旺盛な戦う城だ!
それに比べるとこの湯築城は
先の展望台にしても
軽く息切れする程度の勾配で
なかなかにのんびりした城跡である!
左手に見える内堀は現在では庭園のように整備され
老人や親子連れの散歩コースとなっていた!
「ほんとにいい公園だねぇ!」
と言いながらカミさんと歩くうち
ほどなく前方に湯築城資料館が見えて来た!
さて?
”あるかないかわからない”物について
何か情報は得られるのだろうか?
もし得られなかったとしても
ずいぶんと道後公園を散歩した想い出は
きっといつまでも夫婦の心の中に・・・
ん?
ちょっと待って!
私は早足で資料館に向かうカミさんを呼び戻した!
左手には水の貯まった内堀!
歩いているのは木々が植えられた遊歩道!
右手は「いこいの広場」と看板が建てられた広場!
不思議な既視感に襲われた!
これはかつて
ラヂオ塔を知った日に自転車で見に行った
「大阪城公園」や「中之島公園」と
まったく同じ立地条件だ!
私は木々に隠れた地面をふと覗いてみた!
「あ・・・これかも・・・。」
という私のつぶやきに対して
「ええーっ!」
というカミさんの声の方が圧倒的に大きかった!
それは四つのボルトが短く突き出た
コンクリートの台座だった!
一辺の中央に穴があり
そこには切断された塩化ビニール管のような物が見えていた!
恐らくは電源ケーブルを通すパイプだ!
塩化ビニールの工業使用は1941年と言われている!
だとすれば1939年というラヂオ塔の建造時期と合わないが
軍事使用がもっと早かったとしたら?
もしくは撤去の後に挿入された物であったとしたら?
残念ながらわかりやすい手がかりであるはずの
国旗掲揚塔の跡は見られず
コンクリートの質も
第二次世界大戦開戦年の物とは思いづらいほど
劣化が少ない!
しかし!
ここに!
この立地条件の下!
何かが立っていたのは明らかだ!
電球の入った石灯籠という可能性も高い!
だがこの庭園として整備されている場所から
石灯籠を撤去する理由などあるだろうか?
庭園にするならばなおの事
石灯籠はそこにあるべきだったのではないだろうか?
だとしたら撤去された物は一体?
この”何かの土台”が置かれた立地条件を示すべく
これまた360°全天球カメラ画像を載せてみたので
興味のある方はどうぞご覧下さいな!
「ここで見た!謎の土台!」
「取り敢えず資料館の人に聞いてみよう!」
とカミさんが言うので
すぐ先の資料館を尋ねてみた!
そこには地元のボランティア・スタッフが
道後公園のガイドとして待機していた!
彼らは当然生粋の「教えたがり」だ!
観光客からの質問に1つ答えて
「1ぼっちゃん」
を手に入れる事で徳を積む!
そんなライフスタイルの彼らだ!
私の奇妙な質問に対して
自称・道後公園クイズ王達が次々と現れ
なんだかわいわいにぎやかな事になってしまった!
中には御年90歳を越えるスタッフもおり
ラヂオ塔を説明するのに倍近くの時間がかかってしまった!
「戦前のお生まれですよね?
じゃあすぐそこでラジオ体操をした記憶はないですか?」
「んー・・・やったかなぁ?
やったような気もするなぁ。
まぁなにしろ電波塔なら山の中に行けば・・・」
「いやいや!
電波塔じゃないんです!
ラヂオ塔なんです!」
そんな不毛な問答を遮って
奥の事務所からボスが現れた!
ボスなのかどうかはわからないが
「なんでぇなんでぇ騒がしいなぁ!」
といった雰囲気での登場は
彼がボランティアではなく
正式スタッフであるという貫禄をアピールしていた!
私は改めてボスにラヂオ塔を説明し
資料館のすぐ横で
それかもしれない台座を発見した事を告げた!
「え?
それってポンプ室のあたりですよねぇ!
そんな物ありましたか?
あったかなぁ?
まぁちょっと一緒にそこまで行きましょう!」
私が示す物を見て
ボスもたいそう驚き首をかしげていた!
なにしろ公園の施設を管理する身でありながら
そこにそんな台座があった事にすら
これまで気づいた事はなく
それが何であるのかなど考えもつかないと言う!
そしてこの事とこの物体に関しては
今後調査したいと言ってくれた!
なにしろ今は
この『ひろぐ』を読んでくれた一幡さんからの
お返事が欲しい!
これが単なる石灯籠か何かの台座であれば
それでもまったく構わない!
石灯籠の土台とラヂオ塔の土台の違いがわかれば
今後のラヂオ塔探しに向けての大きな飛躍となるからだ!
そしてなにより私は
自分なりに大きな成果を上げたと自負している!
誰が何と言おうが私は
旅館の中居さんに!
道後ウォリアーズに!
仮称・水原勇気に!
90歳を越える親父さんや
自称・道後公園クイズ王達に!
そして資料館のボスに!
「ラヂオ塔が何なのか?」
を伝えたのだ!
そういう行動こそが
更なるラヂオ塔発見につながるのだと
私は信じている!
ほんの少しだけ
「世界三大あるかないかマン」
に近づけた気がした!
ただ街を歩いて
名所を訪れて
名物を食べて
お土産を買ういつもの旅行よりも
ずいぶんと楽しい思いができた!
こういう事を私はこのブログにおいて
「ひろぐ」という動詞で表しているのだ!
「伊予鉄道」通称「いよてつ」は
昨年の愛媛国体を期に
バスも列車も路面電車も
全ての車体を愛媛みかんにちなんだ
オレンジ色に塗装した!
残念ながら有名な「坊っちゃん列車」には
乗る事ができなかったが
私は路面電車で充分ひろぐ人間だ!
そちらはそちらで思い切りひろいだ!
「360°版いよてつ路面電車の車内」
松山という市は
歴史と温泉と
謎と素敵な人々と
オレンジ色の乗り物にあふれた
どことも似ていない面白い場所だった!
ブロマガ会員ならもっと楽しめる!
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ひろぐ
後藤ひろひと
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