高校生の頃に山形県民会館(現・やまぎんホール)で聴いた
「淀川長治」氏による講演会は生涯忘れる事ができない!
観客は氏による饒舌な語りに爆笑し
そして時には頬つたう涙を拭いた!

「毎週テレビで解説やってますけどねぇ。
 他の解説者の人どうか知りませんけど
 私はぜーんぶちゃんと観てるんです。
 そやからね。
 どんだけ映画が好きやからと言ってもね。
 時々ありますよ。
 もうやめてくれー言いたくなる映画。
 そんでも名作のように解説する僕ってすごいでしょ?」

言葉は正確ではないが
そんな愉快な話がいくつも炸裂した!

「子供の頃はバレリーナになりたくてね。
 ”男はなられへん”て親に言われても
 そんでもやっぱりなりたくてね。
 すっぽんぽんでお風呂屋さんの鏡の前に立って
 白鳥みたいに・・・
 こうやって・・・。
 どうしたらあんなに綺麗になれるんやろ?
 って悩みながら
 こうやってねぇ・・・。」

両手を広げて延々踊り始めた氏の姿を
今でも鮮明に覚えている!
最初は一同爆笑していたのだが
どれほど踊っても白鳥になれない淀川少年の切なさに
次第にすすり泣く声が聞こえ始めた事も記憶している!
氏の講演会は私が人前で話す時の手本として
今でも私に大きな影響を与え続けている!
私が個人的に作り続けている自分だけの辞書
「ひろペディア」で
「映画評論家」と引くと
以下のように説明されている!

★映画評論家
 他人が何かを作らない限り
 個人では一銭の利益を生む事もできない
 非生産的な職業。
 鑑賞する前にスピルバーグ映画を否定する。
 反意語→映画ファン
 例外 淀川長治

そんな淀川氏が
世界一と称した映画館が
かつて山形県に存在した!
「酒田グリーンハウス」は
1976年
山形県酒田市の中心街22.5ヘクタールを焼き尽くした
酒田大火の火元となった事で
ぬぐえない悪名が強く残ってしまった!
当時小学生だった私も
一日中ニュースで中継されたあの火事の事は
強烈に記憶している!
そして火元が映画館であった事も聞いていた!
しかしその映画館が
淀川氏をして「世界一の映画館」と称された場所である事は
最近まで知る事はなかった!

山形出身の芸能人で構成されたLINEグループ
「山形芸能戦略本部」にて
「上々颱風」の「白崎映美(しらさき・えみ)」嬢が
とあるドキュメンタリー映画に出演した事を知らせてくれた!
タイトルを見た瞬間に
私はどうしてもこの映画を観たいと思った!

『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』

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私の感性は映画館で養われたと言っても過言ではない!
字幕も読めない幼い頃から
毎週のように父「ごんぼちゃん」から
映画に連れて行かれて成長した!
なので私は今でも映画館に入ると無条件で興奮し
脳の吸収力が膨大にアップする!
そのためこれまでも
情緒あふれる映画館の存在を知れば
営業中であろうが
既に廃館となっていようが
成人映画館になっていようが
おかまいなしに探検に出かけて来た!

山形シネマ旭・山形東映
2011年5月18日記事
『北に帰ろう!〜第二章 映画館貸し切り』

中洲大洋映画劇場(福岡市)
2015年11月23日記事
『カビ人間ツアー2015〜博多編』

八丁座(広島市)
2015年11月28日記事
『カビ人間ツアー2015〜広島底力ツアー』

首里劇場(那覇市)
2016年4月27日記事
『ポルノ映画をひろぐ!〜大会のすすめ』

しかし地元山形に存在した「世界一の映画館」を私は知らない!
現在でこそ私が生まれた山形市と酒田市は
高速道路を使用してわずか2時間ほどで移動できるのだが
1970年代の山形・酒田間は
驚くなかれ4〜5時間ほどを要した!
とても映画を観に行く場所ではない!
なので酒田グリーン・ハウスの存在すら知らなかったのである!

本来はゴールデンウィーク中の上映予定だった
映画『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』は
なんとも幸いな事に期間が延長され
私が山形に滞在する間も上映されていると言う!
では!
世界一の映画館を映像で探検するべく!
「たっちゃんゴー」!!

『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』予告編

厳密に言えばこの時は「たっちゃんゴー」ではなかった!
「たっちゃん」こと「龍巳」君も
「俺も観たかったんです!」
と同席した!
それでもたっちゃんは
「大王は確か映画は一人で観る人ですよね?」
とつぶやくと
てんで離れた席に座って鑑賞した!
どこまでもクールなたっちゃんである!

とても興味深い映画だった!
この映画を観る限り
酒田グリーン・ハウスは
ほぼ間違いなく世界一の映画館だったのであろう!
なにしろ芳香剤や消臭剤の無い時代に
スクリーンと客席の間に大量の生花を並べて
お花越しに映画を観せていた映画館だ!
上映前には必ず
グレン・ミラーの『ムーンライト・セレナーデ』が流され
曲に乗せてスクリーンの幕が開いたと言う!
そのため今でも『ムーンライト・セレナーデ』を聴くと
酒田グリーン・ハウスを想い出す人が多いのだそうだ!
映画以外にも想い出をくれる映画館!
どれほど素敵な場所だったのだろう!

残念な事に
酒田大火のせいもあってか
全盛期の写真資料があまりにも少なく
映像からはそれほど深く劇場を知る事ができなかった!
しかしここで呼びかけておこう!
もしも古いアルバムに
全盛期の酒田グリーン・ハウスの写真などがある
もしくは8mmフィルムなどで
酒田グリーン・ハウスをほんの少しでも撮影した物がある
という方は
是非とも私なりに関係者なりにお知らせいただきたい!
「もうドキュメンタリー映画は完成しているのに?」
と思うなかれ!
この話にはまだ続きがあるのだ!

映画を観終えて「山形放送」
たっちゃんゴーした!
「呼ばれてなくても遊びに来て!」
といつも言われている山形放送ラジオの生番組
『ゲツキンラジオ ぱんぱかぱ〜ん』
を荒らすためだ!
いつ訪れても楽しい番組で
今回は特に新潟のお酒の宣伝コーナーで
番組放送中ずいぶんな量のおいしい日本酒をいただいた!
そのせいでお昼間の番組にも関わらず
後半は深夜番組のようなトークになってしまった!
正式な出演者ではないのだからまぁいいではないか!
粗相があっても謝るのは山形放送だ!

その日はお薬師様の植木市だった!
山形市内ではとりわけ有名で盛大なお祭りだ!
私はほろ酔い気分で局を出て
そのまま植木市をひろぐ事にした!

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幼い頃の私は数年間
その名も”薬師町”に住んでいた!
このお祭りが行われるお薬師様から頂戴した地名だ!
なので久しぶりにこの植木市を訪れると
なんとも言えない懐かしさと幸せを感じる事ができた!

「愛知県は蒲郡(がまごおり) 
 親の因果が子に報い
 こういう姿にあいなりました!
 一つの体に頭が二つ!
 重い頭を右でどっこい左へどっこい!
 お代は後から!
 お代は後からで結構!」

「かおちゃん」「よっと」そして私は
今でもこんな奇妙な口上を朗々と語る事ができる!
お薬師様の植木市となれば
毎年必ず現れていた見世物小屋の呼び込み文句だった!
あまりのおどろおどろしさに
中に入る勇気は湧かなかったが
小屋先で語られる名調子にはとにかく魅せられた!
「どうせまた見世物小屋の前にいるのだろう」
と察した親が迎えに来るまで
三人でこの口上に聞き入ったものだ!
そのせいで私は
「名古屋」でワークショップ「Royal Plant」を開催した際
空き時間を利用して「蒲郡」を訪れた事がある!
一度実際に行ってみないと
「蒲郡には”一つの体に頭が二つ”がいっぱいいる」
という妄想を一生引きずりそうな気がしたからだ!
実際の蒲郡はなんとも優雅な海辺のリゾート地で
中でも日本における「カンブリア紀生物」研究の権威である
「蒲郡市生命の海科学館」
は生涯で何度か訪れたい場所となった!

今となってはそんな見世物小屋は無くなり
かわりにあったのはお化け屋敷だった!
お化け屋敷に入るの入らないので
いくつもの子供グループが
にこやかに大激論を繰り広げていた!
幸せな光景である!

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驚く事に40年以上昔に私が住んでいた家は
今もほとんどそのままの建物として存在し
現在もちゃんと人が住んでいた!
いずれ交渉して中に入れてはもらえないものか?
と考えている!

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そうこうするうちに日は暮れ
とある飲み会に出かける時間となった!
主催者は山形放送の「芳賀ちゃん」こと
「芳賀道也」氏だ!
知らぬ間にその会は芳賀ちゃんによって
「大王を囲む会」と銘打たれ
私の生家に暮らす「林海象」監督!
「爆笑コメディアンズ」
注目の番組アシスタント「なみへいちゃん」
などなど!
20人ほどの素敵な人々に囲まれる盛会となった!

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芳賀ちゃんから気の弱そうな眼鏡の青年を紹介されると
なんと!
その日の朝に観た映画
『世界一と言われた映画館 酒田グリーン・ハウス証言集』
の監督である「佐藤広一」氏だと言うではないか!
しっかりと向かい合って
その日観た映画について語り合った!

この映画はわずか67分しかない作品だ!
完成して公開されたとは言っても
その尺であればまだまだ再編集の余地があると私は主張した!
もしも公開された事によって
更に多くの鮮明な写真資料などが入手できれば
もっともっと優れたドキュメンタリー映画になるだろう!
90分ぐらいの再編集版が生まれれば
より価値の高い映画となるだろう!
そんな話を監督本人としたわけだからして
私が先ほど記した「酒田グリーン・ハウス資料探し」は
今後も続行されるべきなのである!

ゴールデンウィークが終わるのを見計らって
私は山形への帰郷をひろいだ!
その理由は母親に会うためだった!
もしかしたら
これが母親に会う最後の機会かもしれないと感じていた!
なぜなら私は
「群馬県」に呼び出されたからだ!
後藤ひろひと作品と言えば
その目印として
どこかで群馬県を馬鹿にしてきた!
地名を!
食べ物を!
高校を!
運動会を!
牧場を!
温泉を!
ブラジル移民を!
彼らのライフスタイル全てを!
私は彼らを馬鹿にし続けて執筆を行って来た!
そんな群馬県は伊勢崎市の劇場が
私のワークショップを企画した!

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だが!
これは恐らく罠だ!
実際は受講生などは存在せず
私はそのままネギの固いので打ち殺されるのだろう!
もしくは洗脳施設に収監され
強制的にあの忌々しいかるたを覚えさせられるのだ!
その前に
そうなる前に
母に会っておかなければ・・・。

「またおいでね」
と優しく微笑んだ母に
「うん」
と嘘をつき
私は生まれて初めてまともに訪れる事になる
群馬県へと向かったのであった!

もちろん山形駅までは
たっちゃんゴーだった!

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次回!
遂に後藤ひろひとが
初めて群馬県に潜入する!
果たして生きて帰る事ができるのか?
乞うご期待!
(BGM『Theme from S.W.A.T./Rhythm Heritage』