世界経済の先行き不透明感が強まっている。国際通貨基金(IMF)の世界経済見通しは「下ぶれリスクは明白である」と強い言葉で警告した。欧州ユーロ圏は4~6月期にゼロ成長に落ち込み、中国も「すでにマイナス成長ではないか」という声がある。これで日本は消費税を10%に引き上げられるのか。
欧州経済の先行きは悲観的
まずIMFの予想をみよう。10月7日に発表された世界経済見通し(http://www.imf.org/external/japanese/pubs/ft/survey/so/2014/new100714aj.pdf)によれば、好調なのは米国と英国くらいだった。あとは日本を含めて悪化か、せいぜい横ばいだ。なかでも停滞が際立っているのは欧州である。ユーロ圏は債務問題という負の遺産から抜け出せず、2012年は▲0.7%、13年も▲0.4%とマイナス成長を続けた。14年はようやくプラス0.8%に転じる見通しだが、これは希望的観測かもしれない。
欧州連合統計局(eurostat)が9月5日に発表したユーロ圏18カ国の4~6月期の国内総生産(GDP)は前期比0%成長だった(http://epp.eurostat.ec.europa.eu/cache/ITY_PUBLIC/2-05092014-AP/EN/2-05092014-AP-EN.PDF)。
この後に発表された7月の鉱工業生産は前月比1.0%増とプラスを保ったが、建設部門の生産高は同じく0%と横ばいにとどまっている(いずれもeurostat)。景気回復はとても視野に入っていない。IMFも「ユーロ圏の回復が失速し需要がさらに弱まり、低インフレがデフレにシフトするリスクがある」と先行きには悲観的だ。
中国の金の卵は壊れた
それから中国である。IMFの見通しは14年に7.4%成長を見込んでいる。これは中国政府の公式目標7.5%とほぼ同じだ。ところが、中国出身の中国ウォッチャーである石平・拓殖大学客員教授は最近発売された『月刊Voice』の論文で「中国経済はいま、生きるか死ぬかの瀬戸際に立たされている」と書き出して、次のデータを紹介している。「それを端的に示しているのは、今年8月20日に中国煤炭工業協会が公表した2つの数字である。今年1月から7月までの全国の石炭生産量と販売量は前年同期比でそれぞれ1.45%減と1.54%減となったという」
そのうえで、李克強首相が公式のGDP統計を信用せず、もっぱらエネルギー消費量や物流を基に本当の成長率を判断する、という有名なエピソードを紹介しつつ「このような物差しからすれば、…政府公表の『7.4%』ではなく、実質上のマイナス成長となっている可能性がある」と指摘している。
日本の市場関係者に聞いてみても「7%成長は信用できない。実際はせいぜい3~5%くらい、というのが市場のコンセンサス」という。先週のコラム(http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40720)でも指摘したが、中国では不動産バブルがすでに弾けた。
中国の国家的闇金融であるシャドーバンキングは、不動産バブルが高金利を生み出す金の卵になっていた。その卵が壊れたからには、いずれシャドーバンキングの破綻も免れない。GDPの半分に達する500兆円規模ともいわれる闇金融システムが壊れれば、どうなるか。中国だけにとどまらず、中国への輸出で息をついている韓国、さらに世界経済への打撃も避けられない。
コメント
コメントを書く