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〔PHOTO〕gettyimages

東京都議会選挙が終わった。結果は、自民党と公明党の候補者が全員当選という「完勝」だった。しかし、ここで注目すべき点は他にある。共産党が第三党に躍進したことだ。

こういう結果になったのは、なぜか。「反新自由主義」のあらわれだ、と僕は考えている。新自由主義が何を目指すかといえば、市場の自由化、規制緩和……、つまりは「小さな政府」である。アベノミクスの主柱となっている思想は、新自由主義と言っていいだろう。

メディアや学者たちといった、いわゆる日本の「インテリ」たち、そして経団連、農協、医師会などは、新自由主義が大嫌いである。だから新自由主義によって、格差が広がる、貧困層が増えるなど、批判の大合唱をする。

このままでは、日本はいずれジリ貧になる。そのことは、彼らもわかっている。それなのに彼らは、いま自分たちが持っているものが大事なのだ。

さて、今回の都議会選挙で、安倍晋三首相は変節した。7月の参議院選挙を前にして「日和った」のだ。農業、医療、企業……。どの分野でも、思い切った政策をまったく打ち出せなかった。既得権益団体にそっぽを向かれたら、選挙に負けるからである。安倍さんが「日和った」結果、自民党は、民主党、日本維新の会、そしてみんなの党などと違いがなくなってしまった。

一方、民主党をはじめとした野党も情けない。与党と違いがなくなってしまったから、自民党を叩けないのである。だが、それならば自民党が「日和った」点を攻め立てればよかったのだ。結局、これら野党は反自民票の受け皿になれず、それが共産党に流れたのである。

このままいけば、参議院選挙も自民党が大勝するだろう。大勝した安倍さんは、腰を据えて経済問題に取り組まねばならなくなる。だが、経済を立て直すことは、そう容易なことではない。

まず、新自由主義に対する抵抗は相当、強いだろう。新自由主義者の筆頭といえば、小泉構造改革の司令塔だった竹中平蔵さんだ。そして「反新自由主義」の人びとは、竹中さんをもっとも嫌っている。小泉内閣の業績は認めても、悪いところはすべて竹中さんのせいにする。このままでは日本という国全体が立ち行かなくなることは、目に見えている。それなのに、そんな理由でアベノミクスに反対する。「既得権益者」である彼らは、日本の経済が「自分たちの時代までもてばよい」と考えているとしか思えない。