毎週木曜24:55~フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送中のTVアニメーション『僕だけがいない街』。自分だけの時が巻き戻る現象“リバイバル(再上映)”に悩まされる青年・藤沼悟が、自らの過去と対峙し、もがく姿を描く三部けいの“時間逆行”サスペンスを原作としています。
本作で、主人公の悟を演じるのは、俳優の満島真之介さん。幼少期の悟を演じる女優の土屋太鳳さんと共に、キャラクターに命を吹き込んでいます。「同年代の悟をリアルに演じる為に、何も作らずに挑んだ」と話す満島さんにインタビューを敢行。色々とお話を伺ってきました。
―まず、原作の漫画『僕だけがいない街』はご存知でしたか?
満島:オファーをいただいてからこの作品を知りました。とても面白くて一気に惹き込まれました。
―どんな所に特に惹かれたのでしょうか?
満島:三部さんの人間を見る力がすごいなと思いました。まず、僕が演じている「悟」は何の変哲も無い青年で、しかも現状にあまり満足していなくて。そういう人を主人公にする事自体がすごいな、と。現実逃避をしたり、日頃のストレスを解消する為に漫画やアニメの作品を選ぶ人も多いと思うのですが、あえてそうさせない、という。どんどん現実をつきつけられるですよね。
―確かに、本作は時間を遡ったりという描写はあるにせよ、現実に実際起りそうなお話というか、私も読んだ時は読むのを止められませんでした。
満島:本当にそうですよね。僕は、悟が持つ「リバイバル(再上映)」(※)という現象を、そこまで特別だと思っていない部分があるというか。例えば、街で音楽が流れていて、周りの人はただ通り過ぎるだけなのに、自分にはその曲に思い出があって、当時の様子がバーッと蘇ってくる事ってありますよね? そういう、過去の記憶が蘇る瞬間って、ある意味「リバイバル」を頭の中で体験していると思うんです。
※リバイバル(再上映)とは:「悪いこと(事件・事故等)」が起きる直前の数分前に時が巻き戻り、その原因が取り除かれるまで、何度もタイムスリップしてしまう現象。
―今回、声優のオファーを受けた時の率直な気持ちを教えてください。
満島:おお! 遂に!と思いました。これまでにも、色々なナレーションをやらせていただく機会があって、声だけで表現するお仕事は好きですし、自分の世界観が広がるなと思っていたんです。特にこの悟という人物は、キャラクターを演じる、というよりも自分の生きてきたこれまでの経験が活きる役だと思ったので、喜びがとても大きかったです。
―声で演じるという事で、意識した事はありますか?
満島:そのままの自分を出してみたいなと思い、何も作らずに臨みました。家のソファに座って、外を見て「今日、雨だなあ」とつぶやくような、そのままの声で挑戦したいなと。実写になると衣装を着て、その役に心も体も入っていくんですけれど、アニメは多くのスタッフの皆さんによって作られた世界観が既にあるので。素直に、今ある力を信じて誠実に演じること。それを望まれているのではないかと感覚的に思いました。声優さんは声によって、様々な“色”を演じ分けますが、僕はそうじゃなくて、自分の色が何色かも分からない、悟を通して自分を知りたいと思っています。
―アニメは、満島さんの普段の声でありながら、悟が動いているという、新鮮な気持ちで楽しめそうですね。
満島:声って一番自分が向き合いにくい場所じゃないかなって思います。体は、運動したりダイエットしたり、自分が目指す場所に近づけると思うんですけど、声は変え様が無くて、だからこそ大切なんじゃないかって思います。だから、今回は、声優のお仕事をいただいて、自分のアイデンティティを信じていくしかないなと。普段体験出来ない、とても良い経験をさせていただきました。
―幼少期の悟を土屋太鳳さんが演じるというのも、アニメでは無いと出来ない事ですものね。
満島:実写だと基本的に男の子は男の子の役しか出来ないけれど、アニメだと今回の様に女の子が男の子を演じる事が出来る。これまで女の子として生きてきた人が、男の子に息を吹き込むわけですが、これって実生活ではなかなか無い事だし、すごく面白いなと思いました。セリフを読んで、キャラクターに声をあてて、映像がピッタリと合わさった時、“作品を皆で作っている”という事を強く感じる事が出来ました。声だけだから、絶対に誤魔化せない面白さもありました。
悟のイメージって、僕とは真逆なんですよね。僕は顔が濃くて、何をやっても“生きてる感”が出ちゃうので(笑)。実写ではオファーいただけないような役を、声なら演じられるというのも面白いですし、新しいことに挑戦する緊張感と作品を背負う責任をもって、三部さんの強いメッセージをしっかりと届けていきたい。
―悟に共感した部分、似ている部分はありますか?
満島:似ているところというよりも、生きていれば誰しも絶対に“過去”がある。皆がそれぞれのいろんな時代を経験して、今を生きて、未来へ進んでいく。そして、また今のこの時間が過去になっていく、という感覚を体現してくれているのが悟かな、と。僕は悟が本当はどういう人物か知らない。悟がどういう人かという事が大切なのではなく、一人の人間であるという事が大切だと思っています。
―悟は20代後半で、満島さんと同世代です。悟は漫画の冒頭で先ほど満島さんがおっしゃっていたとおり「現状に満足していない」状態でありますが、30歳が近づいてきて、将来の事を不安に思ったり、色々考えてしまう、なんて事はありますか?
満島:僕はあまり無いんですよね。でも周りの友達からはよく聞きます。結婚して、子供が産まれて、というのはもちろん、仕事でも責任が増えていく。後は、やりたい仕事をしていなかったり、夢を追いかけている人が焦り始めて来る年齢でもあると思うんです。僕は、「そんなに焦る必要は無いよと、いくつになっても夢は追いかけていい」と言いますが、なかなか素直に聞いてもらえないという事も多いです。だから、自分はあまり気にしていないと言いつつ、大きな変化がある年齢だと思います。とても大事な時期かもしれないですね。
―確かにそうですね。だからこそ、悟と同世代の方は特に、このアニメを見て色々考えさせられるのでは無いかと。
満島:悟って本当にリアルな29歳ですもんね。そんな悟(リバイバル)によって過去を変えて、未来を変えるんだと行動する所は、同世代にとっての“星”の様な存在かもしれません。スーパーマンの様な能力は持っていないけど、覚悟を決めたら自分の信念は貫くという、格好良さがあります。
―声優、と言えばお姉さんの満島ひかりさんが、ドラマ『ど根性ガエル』でぴょん吉の声をやっていましたが、とても評判が良かったですよね。私も大好きです。
満島:僕も見て、良かったですね。ぴょん吉を通して、ひかりが実写ではあまりみせてこなかった明るさが元気さが出ていたと思うのですが、僕からすると、あれが普段のひかりに近いです。でも、実写でひかりの外見が出ていると、ああいうキャラクターは完成しなかったと思うし、すごく新しい事が出来たよねって話しました。アニメって、可能性の広がり方がすごいと思うんです。だから、僕も誠実に挑んでみたかったんです。
―今日は貴重なお話をどうもありがとうございました。
TVアニメ『僕だけがいない街』
2016年1月7日(木)より、フジテレビ“ノイタミナ”ほかにて放送中
原作:三部けい(ヤングエース連載)
監督:伊藤智彦
シリーズ構成:岸本卓
キャラクターデザイン:佐々木啓悟
色彩設計:佐々木梓
美術監督:佐藤 勝
美術設定:長谷川弘行
撮影監督:青嶋俊明
CG監督:那須信司
編集:西山茂
音楽:梶浦由記
音響監督:岩浪美和
アニメーション制作:A-1 Pictures
オープニングテーマアーティスト:ASIAN KUNG-FU GENERATION
エンディングテーマアーティスト:さユり
【キャスト】
藤沼悟:土屋太鳳 満島真之介
片桐愛梨:赤﨑千夏
ヒロミ:鬼頭明里
カズ:菊池幸利
藤沼佐知子:高山みなみ
雛月加代:悠木碧
ケンヤ:大地葉
オサム:七瀬彩夏
白鳥潤:水島大宙
八代学:宮本充
【公式サイト】http://bokumachi-anime.com
【公式Twitter】@bokumachi_anime
(C)2016 三部けい/KADOKAWA/アニメ「僕街」製作委員会
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