予選大会への賞金上乗せ額3000万円、決勝大会の賞金総額3000万円と、格闘ゲーム至上過去最高金額を賭けて行われた『カプコンプロツアー2015』。『ウルトラストリートファイターIV』を使用した最後の大会とも言われ総決算ともなったこの大会では、大きな緊張に包まれながらも数多くの熱い試合が繰り広げられた。
今回はその激戦を制し、見事賞金1500万円を獲得したかずのこ選手と、一緒に番組『【講師かずのこ】半熟GAMERS~かずのこのたまご【はげたま】』に出演されている、せんとすさん、忍野ペペさんにお話を伺いました。
●事前の手応えと練習方法について
せんとす:凄かったですよホント、おめでとうございます。『カプコンカップファイナルズ2015』優勝ということで。
かずのこ選手(以下、かずのこ):ありがとうございます。
せんとす:ぶっちゃけた話、感触としてはどうだったんですか? 事前に練習してたりとか、このメンバーだったり、この組み合わせだったりっていうのは。
かずのこ:『TOPANGAリーグ』でかなり仕上がってる感はあったので、結構自信はありました。トーナメント表を見てもキツイ相手は3回戦ぐらいですか、ボンちゃんに当たったらキツイかなぐらいの感じだったので、2回戦までは突破するかなみたいな感じはありましたね。
――:今年1年、どのようなペースで練習に取り組みましたか? 1日のうち『ウルトラストリートファイターIV』(以下、ウル4)を何時間ぐらい練習していたのでしょうか。
かずのこ:今って『ウル4』がかなり煮詰まってるじゃないですか、分からないことも全然ないから。ただ大会でどれだけ自分の実力が出せるかっていうのが重要な展開になると思って、できるだけモチベーションが上がるように他のゲームで遊んだりとかして、格闘ゲームがやりたいなって思うところまで待って、モチベーションが凄く高まってる状態でヘッドホンとかして大会と同じ気持で練習に臨む。ずっと練習するよりは、時間を決めて大会と同じ環境をできるだけ作って、集中してやる方が大会でパフォーマンスが出やすいかなっていう感じで練習しました。
ペペ:確かに、練習をしなきゃっていう感じの練習はしてないですよね。
かずのこ:練習しなきゃっていう状態って、ゲームを全力でやれない状況だと思うんですよ。嫌々やっちゃってると悪い動きする時もあるじゃないですか、そうするとその動きが手癖になっちゃったりとか。凄いプレッシャー感じた時って相手の考えてることとか読む余裕がないじゃないですか、そういう時って手癖が出る。良い手癖が体に染み付いてれば大逆転されたりとかするようなことがないから。
ペペ:凄い考えてますねー。
せんとす:マジ凄いっすね。
かずのこ:優勝したから言えることなんですけど(笑)。
――:対戦してない時、例えば布団の中とかで新しい戦略を考えたりすることはありますか?
かずのこ:ないですね。ゲームをするって決めた時だけですね、それ以外は全然ゲームを意識しないようにわざとしてます。本当に集中してる時に考えたほうがいいと思うんですよそういうのも。凄いゲームについてモチベーションを高めた時にそういうのやった方が迷わないし。なんとなくの時に攻略とか考えないようにしてます。
せんとす:本当に新時代の格ゲーマーですよね。歳もあるのかもしれないですけど、多分『スト2』からやってる人はそうなれないんですよ、勝手なイメージですけど。
●日本人選手優勝のピンチ、サブキャラについて
せんとす:二回戦目で日本人がボロボロいなくなって、かなり早い段階でかずのこさんとウメハラさんとミッセさんぐらいしかルーザーズにも残ってないみたいになって、しかもかずのこさんとウメハラさんが次当たっちゃうとかで、日本人優勝キツイかなみたいな。しかもXian選手、Infiltration選手、Poongko選手みんな残っちゃってて、結構絶望でしたよ途中。
かずのこ:ウメハラさんに勝った時に、日本人が優勝するにはウィナーズファイナル負けちゃマズイなって結構思いましたね。
――:Xian選手やウメハラ選手が、エレナやサガット、ケンを使ってくる事は想定してましたか?エレナ対ユンという組み合わせについてはどう考えてますか?
かずのこ:想定はしてましたけど、それで負けるなら別に。エレナはユンで一番きつい組み合わせなんですけど、海外のプレーヤーはそれに気づいてないっぽくてラッキーでしたね。
――:TOPANGAリーグも含めて、ユンでキツイと言われてるケンやサガット、エレナに対してセスを練習しようとは考えなかったんですか?
かずのこ:そうですねー、緊張する舞台になればなるほど迷っちゃいけないと思うんで、あえてサブキャラを選択肢から消したほうが良いパフォーマンスが出るかなって。
――:その分、勝率が悪いサガットやケン戦の練習に時間を割いたりしましたか?
かずのこ:一番時間を割いたのはサガット戦ですね。3回戦で当たる可能性が高いなと思ってたので。サガット戦8割ぐらいじゃないですかね。
●ウメハラ選手との激闘を制す
ペペ:グランドファイナルでウメハラ選手と当たった時に、ウメハラ選手の動きが(ウィナーズセミファイナルと比べて)ガラッと変わったじゃないですか。あの時はどう思いましたか。
かずのこ:元々ウィナーズセミファイナルの時点で、裏話になっちゃうんですけど、ステージに入るのに裏から階段を昇っていく時に、ウメハラさんが「用意できるものは用意してきたんで、今回どうなるか分からないよ」みたいなことを言ってきたんですよ。だから凄い用意してきたんだって思ったんですけど、実際用意してきたものをあの舞台で出すっていうのって、しかも凄い難しい事をやることを詰めてきてたので、ウィナーズセミファイナルの時点で新しいことはやってたんですけど、そのタイミングが分かってなかったんですよ。
向こうは最初探り探りでやってて、それが間に合わなくてウィナーズセミファイナルは勝ったんですけど、そしたらまた当たったじゃないですか。そしたらこっちの跳ぶタイミングとかも分かってきてるじゃないですか、リズムとかも、どんどん対策が機能し始めて。動きを変えたって言うよりは、対策してきたものを俺のタイミングに合わせるようになってきてた。
せんとす:なるほどねー、そういう試合だったんだ。
かずのこ:だからどんどん追いつかれてきてたんですよね。
ペペ:KSKさんが応援配信で「ずーっとリセットされたらやばい」って、それしか言わないロボットみたいになっちゃってて(笑)。
せんとす:ハートの強さ感じました。もうウメハラさんがあそこまで変わってきた中で二翔打ちまくってて(笑)、まーじかこの人って思ってて。
かずのこ:最初あまり打つ必要なかったんですけど、向こうの対策が完全に機能しはじめたんで、まともにやっても勝てなくなった。そこで結構賭けになってましたね、で、賭けしてダメでリセットされたらこっちも動きを変えないといけなくなるので、そこでちょっと考える時間を取らないと勝てないだろうというのは思ってましたけど。そこで賭けに勝って3試合取ったのがギリギリよかったですよね。
ペペ:『TOPANGA』Aリーグの戦績から見ると、あの時点でずっと勝ってたじゃないですか。で、決勝で試合を取られてっていうのがあったから、こっちとしてはすごい心配というか、「やばいやばいやばい」って……。
かずのこ:ウィナーズセミファイナルで新しいことをしてきたって俺は思ってて、で、勝つじゃないですか。(グランドファイナルに)上がってきてほしくないなって思いましたね。
ペペ:あぁ~。
かずのこ:空対空成功する数とか増えていったじゃないですか。ということは、これは対策が実を結んできてる状態だから、もう一回あがってきたら多分完璧にこっちのリズムとか読んで対策機能しちゃう段階になっちゃうから来てほしくないと思ったんですけど、そこはさすがでしたね、(ウメハラさんが)あがってきちゃって(笑)。
ペペ:あがってきますよね(笑)。
かずのこ:一試合取られた時に「あぁもう対策、コレ機能しちゃってるな」って感じになって。そしたらこっちも嫌だけどコマ投げと無敵技を増やさないと勝ち目ないです、と。
ペペ:やりたいことやらせてたら。
かずのこ:そうですね、でもそうしたらやり返してきたりとかして(笑)。
ペペ:そうですね、最後ホントもう心臓に悪い。
せんとす:凄かったです。
――:ヨシヲさんも応援配信で「(賞金の)差額が何万あると思ってんだ」って(笑)、どんだけかかってると思ってるんだって言ってましたよ。
一同:(笑)。
かずのこ:でも、賞金は全く意識してなくて。
せんとす:もう多分二人には賞金とかじゃなくて、意地の張り合いというか、心どっちが折れるかという勝負になってて。凄い良かったですよあれは。
かずのこ:どっちかっていうとウメハラさんが(自分に)追いつこうとしてる側なんで、こっちは結構プレッシャーかかりますよね。追いつかれたら‥追い越されたら負けちゃうから。
せんとす:いや、でもあれは今までの歴史で言うと例えば『ストリートファイターZERO3』の日米決戦とかも、やっぱり最後ギリギリまで追い詰められてから逆転してたっていうウメハラさんの勝ち方があったから、今までのオールドファンは「今回もやっぱりウメハラ勝ってくれるんだ」みたいな気持ちにちょっとなってたはずなんですよ。そこでしっかり(かずのこさんが)勝ち切ったのはハートの強さだと思うから、そこはみんな、オールドファンも新規のファンもぐうの音も出なかったんで。完全に胸はっていいっすよ(笑)、凄かったっすよ本当に。
かずのこ:逆に(ウメハラさんが)一番試合した相手で、一番人対策した相手だったんで、その辺がよかったですよね。
せんとす:それは大会(カプコンカップ)の前じゃなくて、今までのずっとある歴史の中でってことですよね。
かずのこ:そうですね、だから無敵技をいっぱい打ってくるのも意外じゃなかったし、むしろ向こうも勝負掛けてきたんだなっていうところが分かるくらいまで人対策できてたんで。一番人対策できてるんじゃないんですかね……。
せんとす:そりゃあそうでしょうねー。あらゆるゲーマーの中で唯一ウメハラさんに勝率が良くて自信持ってるんですよね、そんな人他にいないっすよ。
●ウメハラ戦でのコマンド投げ、賞金の使い道について
せんとす:あと聞きたいことがあるんですけど、セミファイナルの時にウメハラさんに前方転身が面白いように当たってたじゃないですか、普通ヒヤヒヤする技だと思うんですよ、垂直ジャンプからフルコンボ入れられたら(投げが通った時のコンボより自分が受けるダメージの方が)もっと減るじゃないですか、あれはどういったゲームプランだったんですか?
かずのこ:ウメハラさんの対策が当てはまってきてる状態だったじゃないですか。ってことは、向こうは無理する必要はなく丁寧なプレーを心がけるようになると思うんで。空対空した後とかに技を重ねる回数がすごい減ってきたりしたんで、それは対策がハマってきたから向こうはもう無理しなければ勝てる、っていうイメージに多分切り替わったと思うんですよ。そういうイメージにさせないように、こっちはまぁ……。
せんとす:いやでも、やり過ぎっすっよ!何回(前方転身を)通したんすか! 7回ぐらい通したんじゃないんすか?
一同:(笑)。
かずのこ:でもそのかわり、向こうも無敵技いっぱい打ってきたじゃないですか。そうすると向こうは当てはまってきてる対策を一回手放さないといけない。そうなった時に勝負になるかなと思ったんで。向こうが無敵技打つまで(前方転身を)うつつもりだったんで。
せんとす:じゃあもうひとつ。今年2000万円以上稼いだと思うんですけども、お金……どうするんですか?
かずのこ:どうする? んー、まぁ応援してくれた人達に……。
――:地方のゲームセンターに、はげたまで回ったらみんな喜ぶんじゃないですか?オフ会みたいで。
ペペ:かじゅの金で!?
かずのこ:俺のお金で!?
一同:(笑)。
せんとす:でも、あなたのとこの『借金王』がいるじゃないですか。アレが本当に「ツルシカナインデス!」とか言ったら?
かずのこ:警察呼びます。
一同:(笑) 完全に正解!
ペペ:また、はげたまの方の番組もありますので。
せんとす:凄いですよ、だって世界一が教えてくれる番組ですからね。それがまさかのっ、108円!! レッツ入会。
一同:本当におめでとうございました。
かずのこ:ありがとうございました。
【ニコニコチャンネル】半熟GAMERS~かずのこのたまご【ゲキマガ】
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