●"戦死者を選定する女"から"戦死者を積み上げる女"へ。
80年代からよみがえった"ドット絵の戦乙女"は何を殺すのか?
業界初の全編ドット絵マンガ『ファイナルリクエスト』単行本の第2巻が2015年11月9日に発売された。
物語の舞台は、レトロRPG"ファイナルクエスト"(このタイトル大丈夫……?)で魔王を倒した後の世界。バグにまみれた世界から居なくなった勇者を探す仲間NPCたちの冒険が、懐かしのドット絵でアイロニーとペーソスあふれるストーリーに仕上げられており、ファミコン・スーファミ世代のゲーマー・元ゲーマーから非常に高い評価を受けている。
今回も中身はフルカラーのドット絵!
2巻では1巻に引き続き、勇者の元仲間が集結し世界の真理と謎に迫る冒険が展開される。じじいとおっさんばかりだった物語にも次々と華が加わるわけだが、今回は2巻より本格登場するキャラクター"ヴァルキリー"の"シロテ姫"にスポットを当てて紹介したい。
……が、その前に。「まだ読んだことがない!」という方は、まずはニコニコ静画での視聴をお勧めしたい。2015年11月30日までなら全話が公開中。百聞は一見に如かずだ。
水曜日のシリウス:ファイナルリクエスト
http://seiga.nicovideo.jp/comic/12658
■ゲーマー男子あこがれの高根の花"ヴァルキリー"
"ヴァルキリー(ワルキューレ)"の原典は北欧神話に登場する女性の半神であり戦死者の魂を不死の戦士"エインヘリアル"として主神オーディンに差し出す"戦乙女"である。血生臭い戦場にペガサスで舞い降りる天女のような姿は、美しくも畏れ多い存在として絵画等に描かれてきた。
日本のゲーム、特にRPGでもヴァルキリーは一定のイメージとキャラクター像が確立されている。古くはナムコ(現バンダイナムコ)の『ワルキューレの冒険』があるが、日本での"戦乙女像"を明確に定めたゲームは1999年にエニックスが発売した『ヴァルキリープロファイル(VP)』に間違いないだろう。
(C)SQUARE ENIX
VPの主人公"レナス"は、美しく高潔でありながらも勇ましく敵に立ち向かう"戦乙女"だった。羽をあしらったヨロイとカブト、風になびくロングスカート、剣を携え祈るようにしおらしくうつむく銀髪の乙女……。吉成曜・吉成鋼兄弟によるイラストは、数多のゲーマー少年の心を揺さぶり、わしづかみにした。(筆者もその一人であり、VPは個人的にベストオブJRPGと思っている)以降、国内のゲームに登場するヴァルキリーの姿かたちのほとんどがVPのレナス像に影響を受けている。今を時めくソーシャルゲーム"パズドラ"や"モンスト"に登場するヴァルキリーもその例外ではない。
……と、前置きが長くなったが、ここまでジャンルとして既に定まっている"ヴァルキリー"枠に一石も二石も三石も投じる存在が、何を隠そう『ファイナルリクエスト』の"ヴァルキリー・シロテ姫"なのである。
■ファイナルリクエストの"ヴァルキリー"はここが違う!
●露出がすごいぞ!
ヴァルキリーと言えば、清らかな風貌の中に垣間見える程度の"ほのかな色気"がお決まりであったがシロテは半裸といって差支えのない薄手のビキニアーマーである。清らかさも恥じらいもあったもんじゃない。
これは単なる読者サービスではなく、装備が身軽になればなるほど素早く強くなれるという"ニンジャ"の技を身に付けているという設定によるものであるが、それなんてウィザードリィ……である。細部に過去の名作へのリスペクトを織り込む作風が何ともニクい。
MSX版ドラクエ2の"ABUNAI MIZUGI"を思わせるドット絵ビキニ。彼女の豊満(?)な肉体に青少年たちはドキドキだったに違いない。
●機械竜に乗っているぞ!
ファイナルリクエストの世界のヴァルキリー達は"機械竜"にまたがり空を飛ぶのだ。飛行機型の飛行モードから竜型の戦闘モードへトランスフォームをする様はマクロスシリーズの"バルキリー"が元ネタであることは明らかだ。
剣と魔法だけでなく、SF要素を唐突に放り込む強引なセンスは往年のレトロゲームらしさの演出と言えよう。
アニメさながらの空中戦描写は作中でも大きな見どころのひとつだ。
●好戦的で血生臭い!おてんば加減もスゴイ!
挨拶代りに敵の首を落とし、祭りのように殺りくを楽しむ!勇者タケルを探す動機は子孫を残す相手にするため!
ヴァルキリア国の王女なだけあって、やんごとなき言葉遣いや高慢な態度は気位のあるお姫様然としているが頭の中は殺りくと、強い男と子孫を残すことでいっぱいなのだ。(つまりヤることしか頭にない!)
仲間をして「魔王よりもたちが悪い」と言わしめる、度の過ぎたおてんば姫加減を作中でご確認いただきたい。
おてんばの本家アリーナ姫も真っ青だ!
VPから長らく停滞していた"ヴァルキリー"のイメージを打ち崩したシロテ姫。ヒロインと狂言回しの二役を兼ねる彼女は、ファイナルリクエスト2巻のMVPに相違ないだろう。
■"ヴァルキリー"から"バルバロイ"へ
元来、死者の魂を選別する存在であったヴァルキリーだが、ファイナルリクエストの世界では"バルバロイ"とも呼ばれる蛮族として命を直接刈り取る存在として、自ら戦死者のむくろを積み上げている。
作中で明示されていないが、物語の舞台であるゲーム"ファイナルクエスト"はおそらく80年代後半あたりに発売されたゲームだろう。仮に、『ファイナル"リ"クエスト』の時代がまさにリアルタイムの今現在であるとするならシロテ達はおよそ30年間も忘れ去られていた小さな世界からよみがえって冒険をしていることになる。
何かに囚われたかのように殺りくを繰り返すのは消費したゲームを積み上げるゲーマーたちのメタファであり、世継ぎを残そうと必死なのは、30年間彼女らを忘却の彼方に葬り去っていたプレイヤー(勇者)に対する報復ではないかと考えてしまうのは、深読みに過ぎるだろうか?
シロテのアウラが貫き裁こうとしているのは、世界を見捨てた勇者=我々……なのかもしれない。
■2巻発売イベント開催決定!
今後の展開も目が離せない『ファイナルリクエスト』だが、11月30日には阿佐ヶ谷ロフトAで第2巻の発売記念イベント"勇者タケルたちの集いー第2章ー"が催される。作者やゲストによる裏話やレトロゲートークのほか、ニコニコ静画でしか聞けないBGMが収録されたオリジナルサウンドトラックが配布される予定とのこと。平日であるがファンならば押さえておきたいイベントである。
イベント紹介ページ
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/lofta/38719
前回配布されたサントラがこちら。いつかはプレミア品に!?
1枚目、2枚目、最後は筆者撮影
3枚目 スクウェア・エニックス『ヴァルキリープロファイル レナス』公式サイト http://www.valkyrieprofile.com/vp1/
他の画像は ニコニコ静画『ファイナルリクエスト』マンガページのスクリーンショット http://seiga.nicovideo.jp/comic/12658
(C)日下一郎 ・ヒューガ (C)講談社 (C)BANDAINAMCO (C)SQUARE ENIX
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