将来の不安から資産形成をしようとはしているものの、やみくもに運用と貯蓄を行っている方もいるのではないでしょうか。その人の人生設計や世帯規模によって、その運用と貯蓄のバランスは大きく変わります。効率的に比率を見極めてみましょう。

貯蓄と運用の違いをもう一度理解してみる

「貯蓄と運用の違いは知っている」と思っている方でも、その違いをはっきりと定義できないかもしれません。

例えば「老後のための貯蓄」という言葉は自然に聞こえますが、実は現代の環境では理にかなっていません。貯蓄はいざというときのためにすぐ引き出せるためのお金です。昭和の時代なら「貯蓄は老後のために」で間違いありませんでした。利率もよく、物価上昇と所得上昇が比例していた時代です。しかし現代のように利率が低く、物価は上昇し続けているのに所得は同じ比率で上がらない場合では、貯蓄だけで将来を守るための準備はできません。

運用は、時間をかけてしっかり増やしていくという性質のものです。将来の予測を立てて、これくらいは必要になるという試算を算出し、計画して増やしていくことです。貯蓄とは大きな違いがあることがわかります。

目標と年齢別で比率も変わる

今は、貯蓄では全くと言っていいほど増えない低金利時代です。だからと言ってすべてを運用に回してしまうと、お金が必要な場合に引き出す余剰金がなくなってしまう恐れがあります。

急な出費としてどの家庭にも影響する可能性があるのが、教育費です。ある程度の予算を立てていても、進路によっては公立から私立に変わったり、その受験勉強のための塾費用が負担になったりします。また、家族や身内の急なけがや病気に備えておくことも大切です。医療保険などに加入していても、いざとなったときはそれなりに他の出費もかかってきます。

一方で子どもがいない家庭や一人っ子の場合で、親も他の兄弟が見ている場合など、備えがあまり必要でない世帯なら、早いうちから運用を行うことも可能でしょう。

よく言われるのが、年齢を基準に貯蓄し、残りを運用するという比率です。例えば、1,000万円の貯金がある38歳の世帯だとします。この場合は、380万円を貯金として残し、620万円を運用に回すという比率です。しかし、小中学生の子どもが2人いる場合、この比率ではいざというときに教育費のための現金が不足する可能性も出てきます。私立高校では、1年間に平均130万円ほどかかります。

貯蓄高でも変わる運用戦略

年齢と世帯とそのライフスタイルで、同じ所得の人、同じ貯蓄高の人でも、運用と貯蓄の比率が変わってくることがわかりました。さらには、運用方法にも二つの考え方ができるので注意してください。

運用というと長い時間をかけて気長に行うイメージがありますが、運用の中に投資も含まれてきます。株式やFXなどは運用というより投資に含まれます。長期で取引をする場合でも、そのスパンは運用ではなく積極的に利益を確保していくという方法に部類されます。貯蓄高の中からまず貯金として置いておく比率を差し引き、運用の中で投資か長期運用かの比率もある程度線引きしたほうがよいでしょう。有事などで投資面に打撃を受けると結局全てのお金が消えてしまったという結末になりかねません。

例えば1,000万円の貯蓄の人は、380万円貯金して200万円で投資を行い、420万円を頭金にして不動産で運用するなどです。同じ比率で500万円の人だと、190万円貯金して100万円の投資を行い210万円で長期的運用をと考えても、バランスが悪いことに気づきます。このような場合は、250万円の貯金、投資ゼロで残り250万で長期的運用活用を行ったほうが次のステップへと進みやすくなるでしょう。

このように、貯蓄高でも運用できる割合が変わります。1,000万円、500万円いずれの貯蓄高の人でも、割合を試算することで運用に適した金額を試算できるでしょう。