区分所有による節税方法
新築物件を購入すると、初年度は不動産投資をしたことによる節税効果が期待できます。その理由は、不動産購入の初年度のみ、大きな額となる登録免許税および不動産取得税を経費として計上できることにあります。
さらに、不動産を購入したことで発生する固定資産税や借入金利、また減価償却費や保険料、不動産投資をするために必要となった交通費にいたるまで、経費としての計上が可能です。
以上のことは不動産投資全般にいえることですが、区分投資の場合はさらに、将来的に大規模修繕工事を実施するための修繕積立金や、水道光熱費や管理委託費などの管理費もまた経費として計上できるのが特徴です。
節税効果・長所と短所
二年目以降の経費の大きな割合を占めるのが、建築物が経年劣化することに伴い減少していく価値を控除する、いわゆる減価償却費と呼ばれるものです。新築の建築物の耐用年数は鉄筋コンクリート構造が47年、重量鉄骨造が34年、木造であれば22年となっており、この耐用年数をもとに償却率が定められています。1,000万円の物件を購入したケースで減価償却費を試算してみましょう。
鉄筋コンクリート構造であれば1,000万円×0.022(償却率)で、減価償却費は1年あたり22万円です。重量鉄骨造であれば1,000万円×0.030(償却率)で、減価償却費は1年あたり30万円となります。木造であれば1,000万円×0.046(償却率)で減価償却費は1年あたり46万円となる計算です。これだけの額が経費として毎年申請できるため、大きな節税効果が見込めます。
ポイントとして、鉄筋コンクリート構造であれば耐用年数が長いため、それだけ長期的に安定した家賃収入を期待できます。しかし、減価償却費による節税という観点から考えると、メリットはやや小さくなるといえるでしょう。
区分所有と一棟所有の節税効果の比較
区分所有と一棟所有の物件では、次のような節税効果の違いが表れる場合があります。
不動産賃貸業は、税務上「業務」と「事業的規模」とに分けられ、その線引きとなるのが「5棟10室基準」と呼ばれるものです。これは貸付数による基準を示しており、一戸建てであれば5棟、アパートやマンションであれば10室以上の場合に事業的規模とみなされます。例えば、10室以上ある一棟所有物件であれば事業的規模となりますが、区分所有する部屋が10室に満たなければ、業務にあたるというわけです。
事業的規模として判断されることで、青色申告特別控除や家族への給与など、所得税を算出する際の必要経費として認められる範囲が大きく広がることも覚えておきましょう。
区分所有による節税における注意点
いくら減価償却費が経費として申請可能とはいえ、それが意味を成すのは、当然経費を上回る家賃収入があってこそです。区分所有であれば、二年目以降も修繕積立金や管理費などのランニングコストが必要となるため、毎年支出があります。節税の対象範囲以上に損失が出てしまっているようでは、本末転倒です。
不動産投資によって最終的に利益が出るようなら、当然のことながら適切に税金を納めなくてはなりません。反対に、利益を生まない区分所有物件を抱えていると、毎月の経費によって赤字となり、その後の融資が受けにくくなることも十分に考えられます。
儲かる不動産投資は節税対策にならないですし、儲からない不動産にはそもそも投資する価値がありません。つまり節税対策目的として不動産投資を始めても、期待以上の節税効果は見込めない可能性を十分に理解しておく必要があります。もしも、節税対策として不動産投資の話を持ちかけてくる不動産業者がいるとしたら、注意が必要です。
節税の際にはカラクリまで知ろう
不動産投資、特に区分所有に着眼し、その節税効果について紹介してきました。
莫大な資産を有する資産家が相続税対策のために行う場合でない限り、大きな節税効果は期待しないほうがいいかもしれません。本業を持つ投資家が税金対策を目的として不動産投資を行う場合には、その仕組みをしっかりと理解しておくようにしましょう。