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2012年7月、風見雄二は昇進試験のため、所属先の“市ヶ谷”へと来ていた。
雄二の担当官である春寺由梨亜――通称JB――に呼ばれ、自らの過去についてまとめた手書きの資料を元に当時のことを聞かれる。
雄二の姉、風見一姫は何でもやれば出来、必ず人並み以上の結果を残す少女だった。
特に非凡な才能を見せたのは絵で、若き天才として美術界に名を轟かせる。
そんな姉とは違い、平凡だった雄二はしばしば『出来損ないの弟』『姉の搾りカス』などと揶揄され育った。
そんなある日、一姫と両親が仕事の付き合いで外食をする中、雄二は一人、留守番をしていた。
しかしその日は、夕食として買い置きがされているはずの菓子パンがなかった。
空腹に耐えかねた雄二は、固くなった食べかけの食パンを水道水でふやかし食べていた。
それを見た一姫は己を恥じると共に、ろくな食事を与えない両親を叱責した。
弟思いの一姫は、時に雄二の女友達に嫉妬し、時に性的な悪戯をするほどに愛していた――
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時は過ぎ、一姫は私立の有名校に進学する。
一姫は両親の期待を裏切り、美術部ではなく、バスケットボール部に入部する。
しかし、この選択が多くの人生を狂わせる。
滝園学園マイクロバス転落事故――
凄絶なその事故で一姫は死に、風見家は崩壊する。
父は酒浸りになり、暴力を振るうようになる。
母は雄二を連れ、そんな父から逃げる。
しかし、1年ほどで父に見つかってしまう。
逆らうことも出来ず、父の命令で酒を買いに行かされる雄二。
そんな彼が帰宅して目撃したのは――母が父に犯される姿だった。
沸々と芽生えた殺意に、雄二は酒瓶で父を殴りつける。
ぐったりと動かなくなった父を尻目に、雄二は母と逃げようとする。
だが母は
「私は、この人が私たちを追ってこれないようにするから…先に逃げなさい…お母さん、後から行くから…」
と言われ、一足先に駅へと向かう。
けれど雄二は母を一人置いてきたことを悔い、家へと戻る。
そこで雄二が見たものは――
担架で運ばれる父の死体と
首つりをした、母の姿だった――
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身寄りをなくした雄二を引き取ったのは、父と仕事の付き合いのあった桐原礼という男だった。
美術商である彼の本当の姿は、ヒースオスロというテロリストであった。
偶然オスロの“食客”を殺してしまったことで、雄二の運命が大きく代わる。
雄二の才能に気付いたオスロによって、テロリストとして育てられたのだ。
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そんな雄二を救ったのは、日米合同対テロ組織、中央調査部諜報2課分室――通称サーズに属する日下部麻子だった。
強襲作戦にて根幹組織の抑制に成功するも、オスロの拘束には失敗してしまう。
その作戦において雄二を保護した麻子は、JBに『アイツは私が引き取る』と宣言する。
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しかし雄二を更生させるのはなかなか上手くいかない。
虫を殺しては吐き、食事は全然摂らず、裸の女を前にしても無反応。
そんな雄二に対し、麻子は強引に食事を取らせたり、動物園に連れて行ったりし、根気よく面倒を見ていく。
ボーダーコリーの子犬を育てさせると、笑顔を見せるなど、改善の兆しを見せる。
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しかし、オスロによって植え付けられたトラウマはそう簡単には消えない。
麻子はそんな雄二を、一人前の男へと育て上げようとする。
ガキのうちは足が速い方がモテる――
駆けっこが速い奴がヒーローになれるのは小学生までだ!
中学生になれば、喧嘩の強い不良っぽい男がモテるようになる――
多少馬鹿でも喧嘩が強い奴がモテるのは中学生までだ!
高校生になったら今度は頭の良い奴がモテるようになる――
そんな麻子の教えによって、
朝は山の中をかけずり回り、
午前中は本を読んで知識を蓄え、
午後には格闘技などの実技を習う日々を過ごしていく。
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よく家にいる麻子の仕事が気になって訪ね、その特殊な仕事について知ることとなる。
仕事のことを隠す必要のなくなった麻子は、雄二の前でライフルのメンテナンスを始めるようになる。
そんなある日、麻子はほんの気まぐれから雄二に銃を撃たせてみる。
そして、雄二の非凡な才能に気付いた麻子は銃を教え、雄二専用のライフルを与える。
穏やかに時間が過ぎる中、雄二と麻子が過ごす山小屋に餌を求めて野生の熊がやってくる。
運の悪いことに麻子は急な仕事で留守のため、山小屋にいるのは雄二と愛犬・ジョンのみ。
巨体の熊に雄二が怯む中、ジョンが連れて行かれてしまう。
ライフルを手に熊を追いかけるが…取り返せたのはジョンの首輪のみ。
長い月日を共に過ごした愛犬であり家族であるジョンとの別れに、雄二は麻子の胸で泣き叫ぶ。
大切なものを失った雄二は、麻子に大切なものを守れるくらい強くして欲しいと頼む。
雄二の決意を聞いた麻子は、その願いを受け入れる。
こうして、風見雄二は日下部麻子の弟子となった――
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体の調子が優れない麻子が、仕事を休むこと増えたある日。
麻子の携帯に仕事の電話がかかってくる。
電話に出ることが億劫な麻子は、雄二に断りの返事をしておくように言う。
しかし電話向こうの男に『本命令に従わない場合は国家反逆罪として略式裁判に掛けられる』と言われてしまう。
断ることが出来ずに仕事を引き受ける雄二だが、体調の悪い麻子は寝ている。
仕方なく、麻子の代わりに雄二が“仕事”をすることに。
そんなことが何回か続いたある日、JBに雄二が麻子の代わりをしていたことがバレてしまう。
雄二にとって、麻子の代わりに仕事をしていたのは“麻子の役に立ちたい一心”だったが、JBは納得しない。
あまつさえ、雄二の気持ちを尊重すべきだと主張する麻子と意見が対立する。
それでも最終的にはJBも雄二の決意を受け、理解を示す。
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麻子と同じ仕事をするため、雄二はライセンスを取ることとなる。
そのため、雄二はアメリカに渡って海軍兵科練成学校へと通い始める。
そこで出会ったダニエル・ボーンらと相棒になり――
時にギャレット大尉にしごかれ――
時に同班のミリエラ・スタンフィールドに勝負を吹っかけられ、完勝して惚れられ――
賑々しい日々を過ごし、前期を終える。
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後期実践配置ではエロゲが好きなロバート・ウォルソンと、
そして射撃を教えたエドワード・ウォーカーと行動を共にすることになる。
彼らを取りまとめるジャスティン・マイクマイヤー軍医少尉を加えたヤブイヌ小隊は死地を転々とする。
酷烈な任期を終えた雄二は、仲間たちと別れて日本へと帰国する。
麻子の顔を見てホッとした雄二は静かに涙を流し、「初めて、生きてて良かったって思った」と漏らす。
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日本用の資格を得るため、雄二がジャパンアカデミーで後期訓練中、かつての上官、アニエス・ギャレット大尉から電話を受ける。
話を聞けば、常に強風が吹き、霧が多く発生する中での超長距離射撃をして欲しいと言う。
バンクーバー国際空港テロ事件――
その事件の対応に駆り出された雄二だが、その途中で事態が悪化する。
しかし雄二は、なんとかより悪条件での狙撃を成功させ、人質を救出する。
その人質は誰であろう、私立美浜学園の学園長、橘千鶴だった。
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正式に麻子の跡を継いだ雄二は、バンクーバー国際空港テロ事件での活躍もあり、
休む間もなく仕事をこなすこととなった。
それらの仕事もそつなくこなして評価を得て、雄二は少し自信を持つようになる。
そんな折、ふとした拍子に『今の俺なら、もう麻子に負けないんじゃないか…?』と口にしてしまう。
その一言にカチンと来た麻子は、雄二と狙撃の勝負をする。
結果は…麻子の完勝。
麻子との勝負で自分の臨機応変な対応力の低さを悟った雄二は、経験を積むべくJBに頼んで仕事を増やしてもらう
そして仕事をこなす日々が続く中、JBから電話がかかってくる。
「急いで日本に戻ってきて! 出来るだけ早く!」
「麻子が倒れた。もう長くない。急いで!」
そんなJBの言葉に頭が真っ白になりながらも、雄二はなんとか日本へと戻る。
そして…長い時間を共に過ごした山小屋で、麻子を看取る。
麻子と別れ、廃人のような日々を過ごしていた雄二は、JBに引き取られて一緒に暮らすようになる。
しかし麻子という大きすぎる存在に縛られた二人の生活は上手くいかず、長いことは続かなかった。
JBの元を去ることを決めた雄二は、ふいに麻子とした話を思い出し、旅へ出ることにする。
バイクに乗り、当てもなく北海道を旅すること、およそ1ヶ月。
たまたまであった男に、雄二のしていることは“青春”だと称される。
その言葉に、雄二は今までのことを思い返す。
普通とは違う、これまで風見雄二が歩んできた道。
それらを振り返って、雄二の中に一つの思いが生まれる。
普通の学校って奴にでも通って
青春ってのを、やり直してみるか――
バンクーバー国際空港テロ事件で助けた橘千鶴に頼み、雄二は私立美浜学園へ通うこととなった。
コメント
コメントを書く(ID:17861367)
あ
(ID:20061336)
隠された非凡な才能が発揮されるのが許されるのは、一度までだと思います!