FOOL'S MATE ff掲載のJ(LUNA SEA)インタヴューの続きはこちらになります。

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――問い質して、新しい橋が架かったのは?
「「THE ONE」をみんなで作り上げられたのが大きかったと思う。きっかけは俺の発言だったと思うんだけど、“とにかくみんなが思ってることを全部ぶつけて1曲作ってみないか?”と。当時のLUNA SEAっていうのはすべてのフォーマットが窮屈になってしまうぐらいバンドとしてのエネルギー? 可能性?――それはポジティヴもネガティヴも含めてね――が、ものすごいものがあったからさ、“シングルだ、アルバムだって制限作んないでとにかく作ったらいいんじゃないの?”って。そしたらひとつ扉が開いて、誰かがオープニングを作り、(途中の)パートを作り、また別のパートを作りってやっていくなかでポンポンポンポンすべてが開いていったんだよね」
――まさにONE、5人がひとつになった瞬間だった。
「そう。もちろんそれは大変な作業だったけど、既成概念みたいなものから解き放たれた瞬間に、自分達のフォルムが実際に音として、体温を持った音として見えたというか」
――その体温は13年前とは違った?
「どうだったんだろう? でも少なくともLUNA SEAだったね。どこをどう切ってもLUNA SEAだった。そこで、このまま今見えてる光に向かって行けば絶対確かなものが出来るっていう思いがそれぞれ生まれたんじゃないかな。だからアルバムにトライしてみようっていう話になったんだと思う。で、そこから合宿に入るんだけどさ、なぜ合宿だったんだろうって今思うと、LUNA SEAとしてまた目覚めさせなきゃいけかったのはそこにある共鳴だったんだよね」
――共鳴?
「今の時代、活字もそうでしょ? 本を買って読む人がどんどん少なくなって来てさ、音楽もデータをやり取りすればいいだけの話で」
――ほとんどがPC上での作業。
「うん。そういうことも含めて俺達がもう一度呼び覚まさなきゃいけなかったのは、響き合うってことなんだ。そのためにはまずメンバーで響き合わないと。ドラムが鳴ってベースが鳴ってギターが鳴って、そのすべてが響き合って何かが生まれる。それがまさにバンドっていうこと。それがバンド・サウンドっていうこと。だからものすごくアナログな合宿っていうところから始めたんだろうね。ともすればLUNA SEA復活っていうのはそれだけで…」
――ビジネスとして成立してしまう、質はどうあれ。
「そう。だからこそちゃんとっていうか、想いを詰め込まないと」
――上辺だけなぞっても、それこそ自分で自分のクローンを作っても意味がない。
「それは本当にそうなんだ。俺達はまだ生きてるって確信したからさ、バンドとして。マシーンが叩いたドラムの上でベースを弾いてもそれはそれなの。だけどそこに人が叩いて温度があったりとか想いがあったりすることによってベースは変わるんだ。それがギターに伝わり、ヴォーカルにも伝わり、もっと言ったらヴォーカルから伝わるものもある、ギターから伝わるものがある。それがバンドなんだよ。時代が忘れそうになってる音楽の熱ってそれなんじゃないの?という。その延長にあるものこそ、俺達が作ろうとしてるものだったんだ」
――1曲目の「Anthem of Light」を聴いたとき、真っ先に浮かんだのが“延長”という言葉で。
「それは本当に嬉しいな」
――止まっていた感がまったく感じられなかったんですよ。
「そう。この13年間ずっと続いていたかのように、それでいて新しい始まりというか。まさにそのイメージが俺の中にもずっとあって」
――原曲だけじゃなくてタイトルもJが出したの?
「うん。まさに読んで字のごとく“光”っていうものをテーマにエネルギーを感じてもらえる曲になればいいなって思いながら作ってたからね。13年という時間と、それ以前の自分達もそうだし、未来もそうだし、そういうの全部を含めた上で、ただ勢いだけじゃない、堂々とした立ち姿を見せられたらいいなと思ってたな」
――あの音像にはもう完全に圧倒されました。ラストの「Grace」もそうだったけど。
「「Grace」も圧倒って言うと変だけど、聴いてる人を最大限包み込むような、圧がかかるぐらいの優しさとか情熱とかをイメージして作ってたからね。そこにRYUが仮の歌詞を入れた時さらに世界が広がったんだ」
――13年の総括も、再びLUNA SEAを開幕させた理由も、そしてこれからどこに向かって行くのかもすべてが描かれた歌詞だから?
「そう。しかもハモなんかとてつもなく高いキーで歌って来てて。それぐらいRYUの中にも燃えるものがあったんだろうなって嬉しかったよ」
――「Grace」というタイトルもJが?
「うん。いろんな想いがこの13年の間にはあったと思うんだ。“ふざけんな!!”って怒ってるやつもいたり、悲しんでる人達もいたり、ゼロになってる人も、途方に暮れてる人もいて。まさにカオスだよね。そういったすべての想いがここで浄化されるというか。それは待っててくれた人達だけじゃなくて、俺達もぶつかって木っ端微塵になった終幕があって、その後13年かけてひとつのアルバムを作る。その間のプロセスも時間があればぜひみんなに追ってってもらいたいんだけど(笑)、想像しえなかったことでしょ? 終幕のときには。今ここでアルバムが出来上がったこと自体、メンバー全員が実はものすごく不思議だと感じてると思うよ」
――だから、Grace=恵み、という。
「そう。このアルバムが出てみんなからの評判、“すごいアルバムが出来たね!!”っていう声を聞くと余計それがリアリティを持って舞い降りて来たんだよね。自分達の手元を離れるというかさ、みんなに聴いてもらって初めてまたLUNA SEAの時間が動き出すんだって俺は思ってたから。まぁ、寝た子を起こしちゃったのかもしれないけど(苦笑)」
――台風だの大雪だの、動くと必ず何かが起きるバンドだからね(笑)。
「確かに(笑)。でも冗談は置いといて、すごくバンドとして手応えは感じてると思うな、みんな」
――手応えという意味では「Glowing」もものすごい手応えだったんじゃないかと。
「そうだね。俺が作って来た曲の中で一見シンプルなんだけど、こういう曲をアルバムに入れられなければ俺達は成長もしていなければ進化もしてないんだろうなって個人的には思ってたんだ。“深く”もそうだし、“進む”っていう意味でもね。いわゆるロックが持つ揺らぎっていうものを、速さとかではなくそれぞれの楽器の色気で成立させられるバンドにならないといけないでしょ?っていう。そういう意味では自分で自分達を試してた部分もあるんだけど、このデモを聴かせたときのメンバーのリアクションは未だに忘れられないな。みんな“カッコ良い”って言ってくれたからね」
――その発言こそ全員がちゃんと進化していた証拠でしょう。
「だと思う」
――しかもこういうグルーヴ重視の曲ってともすれば熱くなりがちじゃないですか? 感情一発というか。
「うんうん」
――でも「Glowing」は本当にフラットで。
「そう。フラットなの。その感情っていうところで言うとね、正直13年前とは同じテーマで怒れないし笑えないし泣けないんですよ、もう。人間、歳をとれば味覚も変わるじゃないですか? 着る物の趣味も変わるんだ。そういうことをちゃんとリアリティとして曲に込めていかない限りバンドとしてカッコ良くないなと。時代もあるよね。今まで自分達が見て来た世界と、今現在起きていることの違いというか。そういったこともすべて吸収して吐き出していくわけだから、音楽っていうのは。そういう意味で「Glowing」はまさにリアリティっていう言葉の中で存在してる曲だと思うし、ヴィジュアル系シーンというものがまだあるとすれば、そのひとつの突破口を開くモデルになってくれたら嬉しいかな」
――いや、これ以上の落とし前の着け方はないでしょう。
「そうね。この13年間が何を意味してたかってみんなに訊かれるんだど、未だに自分達の中で整理がついてないんだ。でも、このアルバムを聴いてもらえば見えて来ると思うんだ。それぐらいの作品になったし、もっとすごいのが、それがちゃんと音楽として成立してるっていう」
――あくまでもポピュラー・ミュージックとしてね。
「うん。想いばっかりだと重たいじゃない? “うるせぇよ、13年13年って!!”って、“知らねぇよ、そんなの!!”ってなっちゃうじゃない?(笑) 一番それが嫌だったからね、苦節何年みたいになるのが。それはサイドストーリーでいいと。そういう意味では音作りから曲作りから含めてものすごくプロフェッショナルだったな、今回は。みんな一瞬にして欲しい音を理解出来るし、それを表現出来るプレイヤー達だからね。そこからの会話だったからレコーディングはすごく楽しかったよ」
――5人が5人ともそれぞれの役割を把握して、しかもそれを完璧に果たすことが出来るから?
「そう。ともすればこのバンドって理論だけで成り立っちゃう部分ってあるからさ。でもそれだけでは音楽って鳴らないから、どういう風に曲の中に血を通すかっていうところで俺はベースを弾いてるんだ。それが出来るのも他のメンバーのプレイがあるからなんだけど、より高度なところで作り上げて行くことが出来たかな、今回は」
――僕は「MARIA」のベースがとてつもなくプロフェッショナルだと思った。
「ああ。原作者が作ってきたベースラインを忠実に再現してる曲もあれば、俺なりに“ここはちょっと溜めた方がいいな”とか“ここは押した方がいいな”という作り方をしてる曲もあるんだけど、「MARIA」は後者かな」
――原曲はINORAN?
「うん。それも含めて今回は俺、今までのアルバムより守備に廻ることが多かったかもね。でもそれはあえてなんですよ。ものすごく真矢くんのドラムが良かったし、ギターチームのフレージングもカッコ良かったから、そこにどういう風にベースを絡ませていくかっていうのをすごく考えた。まぁ、シンプルに弾いても耳につくからさ、俺のベースって(苦笑)。だったら余計なこといらないじゃん、みたいな。サッカーと一緒でヘソがしっかりしてないチームは勝てないからね。そういう意味ではかなりヤバいベースを弾けたと思いますよ」
――早く生で聴きたいです。
「ね。ただ5月29日は25周年記念ということでこのアルバムの曲だけプレイするんじゃもったいない。それぐらいのお祭りになると思うんで、ここから数曲プレイして、今までの曲達もプレイしてという感じになると思うんだけど、“こんなすげぇアルバムを作ったからにはみんなの近くでプレイしたいよね”ってメンバーとも話してるしね。だからツアーなんかもやれたらいいなって思ってますよ」
――おぉっ!!
「やっぱりアルバムを再現するツアーはちゃんとやりたいから」
――5月29日の代々木体育館の後ということは、夏ぐらいですかね?
「出来たらいいよね。約束するよ。とにかくすごい2014年にはなると思うんで、楽しみにしてていいと思いますよ」

(インタヴュー・構成=加藤祐介)