FOOL'S MATE ff掲載のINORAN(LUNA SEA)インタヴューの続きはこちらになります。
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――それは作品を作り出すことにおいての重みですか? それともLUNA SEAというバンドを背負った上での責任ですか?
「ちょっと抽象的な話になっちゃいますけど、30代のときは再び出会う人に対してそんなに多くのことを思わないけど、40代になると“めぐり逢い”だと思うんですよ。不思議と自然にそういうふうになってくるというか……。何でしょうね。感謝の心ですかね。このチームで、また音を作れるわけだから、それに対して返さないといけないと思うというか。まぁ、終幕前まではほんとに走り続けてきたから、そんなことを思う暇もなかったんですよね」
――“次に進まなきゃ、前に行かなきゃ”っていう。
「そうですね。当時は力強さというよりスピード重視ですよね。今はどんな坂だろうと、どんな荊の道だろうと力強く走っていくというか、“めぐり逢い”によってスピードだけじゃ前に進めない道があるってわかるようになったんじゃないですかね。僕ら5人だって25年前にめぐり逢ったわけで、再び出会って、こうやって一緒にやっているわけだから。それはファンの人もスタッフの人も同じで…」
――そういう想いがアルバムに詰まってるんでしょうね。
「各々が絶対にそういうことを思ってやってるでしょうね。それを熱く受け止めているメンバーもいるだろうし、クールに受け止めてるメンバーもいるだろうし、でも、全員、見つめている方向は一緒かなって」
――2000年に終幕して以来、ひとりひとりが誇りを持って音楽活動をしてきたからこそ、今のLUNA SEAがあり、だからこそ完成したアルバムだと思うんですけれど。
「うん。だと思うし、変な話、メンバーがひとりもいなくなっていないわけで、そういうことにも感謝だし」
――それも30代じゃ思わなかったことでしょうね。病気で休養しているメンバーもいないわけですし。
「そうですね。もう、そろそろしたら病気自慢してるかもしれないですけど(笑)」
――(笑)健康の話題が多くなるとかね。
「そう、そう。50代になったら“人間ドック行った?”みたいなこと言ってるかもしれない(笑)」
――話を戻すと、今回、INORANさんはソングライターとして、また、ギタリストとしてLUNA SEAにおける自分の役割的なことは意識したんですか?
「してないですね。前からそれはない」
――例えば、こういうタイプの曲は誰かが持ってくるだろうから、自分はこういう曲を持っていこうとかは?
「音楽的なことでいうと、LUNA SEAってポジションがもう決まってるんですよ。JはJらしい曲、SUGIZOはSUGIZOらしい曲、RYUICHIらしいメロディ、真矢らしい曲だったり。だから、曲を作る段階でバランスを考えることはないですね。LUNA SEAの中ではマイペースでやらせてもらってます」
――RYUICHIさんがこういう曲を歌ったら合うだろうなとか、LUNA SEAのために曲を書くというわけではないということ?
「歌のキーに関しては考える。それぐらいですね」
――方法論的にはソロ曲やMuddy Apesに曲を書くときと違いはないと。
「そうですね。ただ面白いのはみんな“INORANらしいアルペジオ”だったりを意識して曲を作ってくるので、僕もたぶん“Jがこういうベース弾いたらカッコいいな、SUGIZOがこういうギター弾いてくれたらいいな”っていうのは無意識の内に考えてると思います。それはすごく自然なことで」
――なるほど。『A WILL』の中に収録されている楽曲の中で、INORANさんが原曲の曲について少し質問したいんですが、たとえば「MARIA」はREBOOT後、2010年の東京ドームで初めて披露された曲ですが。
「はい。何年かの時を経て音源化されたのが嬉しいですね」
――メロディとともにバンド・アンサンブルが美しくてグルーヴが心地いい曲ですね。
「曲に関しては僕はコード進行が変わらないのなら、みんなに好きにやってもらいたいと思うほうなんですね。自分の頭の中でアンサンブルはできているけれど、その通りじゃなくても全然いいというか、だから、僕が原曲の曲は出来てみないとわからないところがありますね」
――RYUICHIさんとの歌詞のやりとりについては?
「3年ぐらい前に僕が書いた歌詞があって、それをRYUICHIがリアレンジしたんですけど、彼の言葉や言い回しってあるから、さらにRYUちゃんの歌になったなっていうのはありますけどね」
――歌詞は共作なんですね。「absorb」はINORANさんらしいテイストのある幻想的で深みのあるキレイな曲だなって。
「これはさらに古くて5年ぐらい前からあった曲なんです。歌詞はRYUちゃんでメロディは僕ですね。今回、それぞれが書いてきた曲を合宿の前や合宿中、もしくはプリプロのときにみんなで吟味したんですけど、最初、この曲に対してはあまり反応がなかったので、1回、ひっこめたんですよ。自分のソロでやってもよかったし」
――やっぱり、そこに線引きがないんですね。
「LUNA SEA用に書くとかないんですよ。絶対、分けたほうがやりやすいと思いますけどね」
――あえて分けないっていう?
「たぶん、僕はそれだけバンドマジックが好きなんだと思いますよ。原曲から変わっていくのがバンドのミラクルであり、グルーヴだと思っているので」
――そういう意味でシングルとしてリリースした「Thoughts」の出来方というのは?
「『Thoughts』も実は4~5年前からあったんですよ。メロディも考えてたんだけど、今ひとつだなって思っていて、RYUICHIには聴かせなかったんですよ(笑)」
――メロディが付いていたにも関わらず?
「そう。で、仮歌を歌ってもらったら、いいメロディが出てきました。さすがですよ」
――ということはデモであえて余白を作ったりするんですね。
「そうですね。ドラムとベースは打ち込んでいきますけど、たとえばSUGIZOのギター・パートにはBメロがないとか、サビがないとか。そういう余白はありますね。僕がSUGIZOのギターを描くよりもイメージで弾いてもらったほうがリアルだし」
――曲を聴いてメンバーがどういうふうに感じるのかも楽しみのひとつなんでしょうね。
「そうですね。あと、バンドの中の闘い方みたいなものが、すごく変わりましたよね。デモで提示されたフレーズに対して各々がそれを上回るプレイをするんですけど、それはフレーズ自体を変えるわけじゃなく、弾く音符の強さや長さで変えていくっていうのかな。俺は今のLUNA SEAの在り方について、そう思っているんですね」
――他のメディアの取材で真矢さんに話を聞いたとき、今回のアルバムではみんなのデモになるべく忠実にプレイしようと思ったって言ってたのがとても印象的だったんです。
「僕もそれに近いですね。例えばSUGIZOの作った曲『銀ノ月』のアコギのギター・ストロークとか僕にはないパターンなんです。自分の手グセで弾くとあのグルーヴは出ないんですけど、SUGIZOのデモ通りにコピーしたんですよ。その中で自分らしいニュアンスを出していくっていう。真矢くんに近いやり方ですよね。思うに“我”っていうのが月日を経て、優しさや強さになっていったんじゃないかと思いますね。バンドのみんなが」
――それはほんとに音から感じられます。だから、音楽って雄弁だなぁと思いますよね。さっき、バンドマジックがいちばんの魅力だって話してくれましたけど、LUNA SEAの中で起こるマジックの特殊性ってあります?
「やっぱりLUNA SEAは日本のバンドだなぁと思いますね。自分が今やってるMuddy Apesは洋楽寄りのバンドというか、感覚が違いますね。どっちがいい/悪いじゃなくて、曲の組み立て方、気持ちの込め方、音の鳴き方が、全然違うんですよね。Muddyはもうちょっとストレートな成り立ち方なんですけど、LUNA SEAは構築美ですよね」
――確かに。今、Muddy Apesの話が出ましたけど、INORANさんは終幕後、いろんな音楽にチャレンジしていってキャパシティを広げたじゃないですか。それが今回のアルバムのギターにも反映されていると思うし、音に色気と強さが出ていて、INORANさん、SUGIZOさん、2人の存在感はハンパないなって思いましたよ。それは変化のひとつでもあると思うし。
「どうでしょうね。SUGIZOのほうが音デカいんで(笑)。それは冗談として、僕はギターをフェンダーのジャズマスターに変えたのが大きいですね。それも出会いだし、ものすごくそれから変わりましたね」
――生涯つきあえる相棒を得たんですね。LUNA SEAのメンバーって性格も違えば趣味も違う。でもアルバムを聴いて、改めて似た者同志なんだろうなって。音楽に賭ける情熱、バンドのロマンについては完全に一致していて、時代が変わっても“俺たちはこうなんだ!”っていう信念を持ち続けての13年ぶりのアルバムというところが凄い。
「きっと、それが“物語”なんでしょうね。情熱というか、簡単に言うと“音楽バカ”なんでしょうね。しかも誰にも負けない音楽バカ。みんなが世界のどのミュージシャンにも負ける気がしないと思ってやってるだろうし」
――そういう5人が集まっちゃったってことなんでしょうね。
「集まっちゃったていうか、友達バンドじゃないからでしょうね。自分の使命というか、ミュージシャンとして生かされている意味をわかっているから、進んでいっているし」
――結成時から友達バンドじゃなかった?
「全然、違いましたね。仲が悪いとか、そういう意味じゃないですよ。いい意味でね」
――最初から運命共同体みたいなものだったってことですかね。
「近いかもしれないですね。仲良しの青春バンドだったら、どんなに楽だったか。ミーティングもリハーサルもそんなに長くしなくていいし(笑)、こんなスケール感なんて必要なかったかもしれないし。決して、青春バンドを否定してるわけじゃないですよ。LUNA SEAというバンドの物語がそうではなかったっていうだけで…。でも、だからこそ、聴く人がLUNA SEAの曲に自分を投影してくれたり、バンドの存在を自分の身近にいる人のように大切にしてくれたり…。そういう意味で数少ないバンドだと思いますけどね。僕自身、当事者だけど、一部に過ぎないと思っているから。(LUNA SEAは)それぐらい大きなもので、僕はその中の下手で演奏しているギタリストなだけで、何百万分の1だけど誇らしいというか」
――今の話を聞いていると、それだけに中途半端なものは出せないし、裏切れないでしょうね。
「ですね。だから、最初に話したようにミュージシャンとして置かれた立場の責任と感謝の想いを強く感じる」
――だからこそ、終幕後のソロ期間も闘いの連続で、大変だっただろうなって想像するし。
「大変じゃなかったよ。楽しかったし」
――だって、バンドがなくなったあともLUNA SEAという称号はついてまわるわけで。
「それは途中であきらめたけどね。“ex.LUNA SEA”とか、どっちでもいいよって。そんなことより、前に向かって走るほうが先だったからソロだったり、FAKE?だったり、Tourbillonやったり、Muddy Apesだったり」
――ほんとに変化を怖れない活動をしてきましたよね。ところで、5月29日には代々木競技場第一体育館で“25th ANNIVERSARY LIVE”が行なわれますが、ここではスペシャルライヴとは言え、アルバムの新曲も聴けるんですよね。
「そうですね。アルバムができたらライヴをやりたいと思うのが自然だし、旧曲と新曲がいい感じで混ざりあっていくんじゃないかと。あと5月29日は結成記念日なので、記念日好きの僕らとしては…“僕ら”っていうのは5人だけじゃないですよ、みんなも含めてね。とにかく特別な日になるんじゃないかと。具体的にはまだ5人やスタッフと話していないけど、そろそろ各自が考え始めている時期だと思います」
――5月29 日が過ぎても“物語”は続きますよね。
「そうですね。ライヴ、やりたいですね!」
(インタヴュー・構成=山本弘子)
(インタヴュー・構成=山本弘子)
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