日本・トルコ合作映画『海難1890』は、1890年に和歌山県沖で沈没したトルコの軍艦エルトゥールル号の乗組員を串本町の人々が命を賭して救ったとこと、そして1985年のイラン・イラク戦争時にテヘランに残された日本人のためにトルコが救援機を飛ばしたというダブルの史実に基づいた感動巨編だ。現在の日本・トルコ間の友好関係のルーツを扱い、そこから現代に通ずるメッセージを投げかける本作について、両時代のキーマンを演じるトルコの名優ケナン・エジェ。京都で撮影中だった彼に、作品に込めた想いなどを聞いた。
――『海難1890』は、日本とトルコが友好的な関係であることの時代的な背景と、現代にも通じるメッセージが感動を呼びそうですね。オファーがあった当初は、いかがでしたか?
わたしも興奮と感動を覚えました。トルコと日本の合作映画で日本での撮影もあること、国際的なプロジェクトに参加したい想いは以前より持っていたので、自分の夢が叶うということで興奮を覚えたことを思い出します。実際にシナリオを読み進め、この物語に自分が参加できることに非常に栄誉を感じました。この歴史を知るまで事件をほぼ知らなかったですが、こういう史実が過去にあったこと、シナリオのメッセージに共感を覚えました。
――しかも今回の作品では、一人二役という重責です。どのように演じ分けをしましたか?
この作品では一人二役を務めますが、まずオスマン・トルコ時代の海軍将校のムスタファという役柄を演じています。彼は政府が日本に派遣したエルトゥールル号に乗り込み、帰国途中に和歌山県の串本沖で船が遭難してしまい、任務を果たせなかった、無事に祖国に帰れなかったこと、そして船が沈み、友人や同僚の死を目の当たりにして心理的なショックを受けます。しかし彼は、串本の日本人たちの献身的な援助で立ち直っていくわけです。
――そして現代、1985年のイラン・イラク戦争時、テヘラン邦人救出で活躍する人物です。
もう一方がムラットという人物です。1980年代の人間で、現代のトルコで生まれ育ち、トルコ総領事館で働いているキャラクターです。エルトゥールル号時代のムスタファと精神的な継続性があって、その後継としてムラットが登場します。彼はテヘランで取り残された日本人を救出するために任務を遂行しますが、演じ分けは難しいものではなく、時代背景がまったく異なることなど、さまざまな点で違いが多い。自然に演じ分けは可能でした。
――同じ俳優が演じ分けることは、今回の作品に、どういう意味をもたらすと思いますか?
まず、このことは俳優個人としても貴重な経験で、男たちは外見こそ違うものの、精神的な面ではつながっているので、意味のある経験になったと思っています。そして、その継続性を、一人の俳優が演じ分けることで示せることもあると思っています。日本とトルコの友情が結びついて今後も長く継続していくことをわかっていただく上で、伝わりやすい方法論だったと思っています。自分にとっても非常に貴重な経験になったと思っています。
――最後の質問になりますが、日本の映画ファンへ一言、メッセージをお願いいたします。
僕の職業は俳優なので、コメディーやロマンチックな作品に仕事として出ることはありますが、その一方で、こういう素晴らしいメッセージを発している作品に出られることは、自分にとって大変名誉なことだと思っています。いま暮らしている世界は暗黒の世界のように感じていて、その文明が混じりあうなかで衝突が生まれています。そして、その衝突をどう乗り越えていくか、世界が答えを模索している時に、乗り越え方のひとつの解決として、この映画のメッセージは非常に有効だと思っています。ぜひ観てほしい作品です。
映画『海難1890』は大ヒット上映中!
https://youtu.be/v1tYRBQ2mz8
■参照リンク
『海難1890』公式サイト
www.kainan1890.jp
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