芸能界のイスの数は限られている、というのはよく言われる話である。たとえば女性タレント枠であれば、最近ではおのののかや平愛梨などがそのイスに座っているわけだが、盛者必衰、あるいは群雄割拠が芸能界の常だ。2015年、そのイスを陥落しようとする、ブレイク必至の女性タレントが頭角を現している。一体誰の話かと言えば、アイドルグループ℃-uteに所属する、岡井千聖その人である。
そもそも女性タレント枠の中にアイドル枠というイスがあるのだが、かつては道重さゆみが、近年では菊地亜美や嗣永桃子がそのイスに座ってきた。だがここへ来て、岡井千聖の勢いはめざましく、最近になって多くの番組で爪痕を残している。テレビ東京「ゴッドタン」、フジテレビ「アフロの変」、そして最近ゲストとして出演したフジテレビ「ミレニアムズ」。その全ての番組で確実に結果を残しており、業界内での評判も高い。
特にフジテレビ「ミレニアムズ」では実力には定評のある若手芸人を向こうにまわし「父親がスナックにハマっている」「父親の浮気癖がすごい」「最近19歳年下の弟ができた」といったエピソードを真顔で披露。視聴者と番組スタッフが想像するよりも遥かに斜め上のトークを展開し、ブレイクの兆しを自らの実力によって創出したのであった。
そこで本日は、2015年にバラエティタレントとしておそらくブレイクするであろう岡井千聖の3つの凄さを紹介したい。これは言わば、岡井千聖の取り扱い説明書である。
【1】おバカの破壊力が尋常ではない
いわゆるおバカタレントというのは、まあここ最近では少なくはなったが、それでも数多く存在する。だが岡井千聖のおバカっぷりはそんなものではない。たとえば「自分たちの世代は年金が貰えないらしい」という話をされたときに「大丈夫。ちゃんと良い子にしてたら貰えるよ」という一切根拠のない、だがどこまでもポジティブな答えを残したのはファンのあいだでも語りぐさだ。「年金」と「良い子」という単語を暴力的にそのまま繋げることが出来るのは、おそらく岡井千聖だけだろう。
現在20歳となる岡井千聖だが、幼いころからハロー!プロジェクトで純粋培養されたため、世間一般の常識は通用しない。だがそれこそが、岡井千聖の武器でもある。笑いを取りに行った、いわゆる狙ったおバカではない。それが出来るほど彼女は賢くない。むしろ野性的な、天真爛漫なおバカを彼女は持ち合わせている。クイズ番組というよりはむしろトーク番組で活きるはずなので、誰か大御所のMCにハマれば間違いなくあっと言う間にブレイクするだろう。出来れば日本テレビ「踊る!さんま御殿!!」などで様子を見たいところだ。
【2】仲間思いなところがある
バラエティ番組とはチームプレイであるというのは間違いのないところだが、そこで活きるであろう彼女の特徴が、仲間思いであるという点だ。特に℃-uteのメンバーである萩原舞との信頼関係は強い。かつて「笑っていいとも!」にゲスト出演した際に年齢の問題で萩原舞が出演できなかったとき、テレビを観ている萩原舞に向かって「コンプライアンスなんて気にすんな!」と叫んだほどだ。明らかに「コンプライアンス」という言葉の意味は理解していない。気にするとか気にしないとか、そういうものでもないだろう。しかし萩原舞を思う気持ちが、彼女にそうさせたのだ。
まあ実際に萩原舞もまた相当なものなのだが、最近コンサートで話したところによると、二人で電車で帰っていた際、一緒に乗り合わせた男性からいきなり睨まれたらしい。二人して「絶対に殺される」と、こそこそ話をしていたのだが、岡井千聖が最寄り駅についたために先に電車を降りることに。だが岡井千聖は萩原舞のことが心配になり、彼女が殺されていないかと、スマートフォンでニュースを検索していたという。はっきり言って、ほぼ全部間違っている。しかしそれが岡井千聖の魅力でもある。岡井千聖と萩原舞のセットで出演すると異常な化学反応を起こすことがあるはずなので、何かの番組で二人の掛け合いを観てみたい。日本テレビ「有吉反省会」などでどうだろうか。
【3】常在戦場イズムが凄い
日々コンサートを重ねてリアルタイムでお客さんを喜ばせているというのもあって、常在戦場イズムが非常に強い。「ゴッドタン」出演の際の収録後、演出・プロデューサーの佐久間宣行氏に「私がいるせいで使えないところ増えたらすいません」と伝えたという。これが出来るタレントというのはなかなかいない。カメラが回っていようが回っていなかろうが、職場は戦場である。このプロ意識の高さは、確実に後に繋がる。というか、それをやれるタレントならば間違いなく最低限の仕事はしてくれるはずなので、困ったときの岡井ちゃん、という最後の砦を任せられるタレントになるだろう。たとえば「ゴッドタン」の「マジ歌選手権」の審査員になったら、確実に良い仕事をするはずだと思うのだが、いかがだろう。
なお岡井千聖が今後ブレイクするとして、というか間違いなくブレイクするわけだが、そのきっかけとなったのは「ダイノジ大谷ノブ彦のオールナイトニッポン」だというのは記しておきたい。岡井千聖の取扱説明書はここで初めて書かれている。℃-uteが全員でゲスト出演した際、エンディングで大谷ノブ彦氏が矢島舞美への想いを語り出したとき、予定にはなかったにも関わらず岡井千聖はブースに入ってきて「もう、バカ!」という名言を残した。まさしく常在戦場である。もしも願いが叶うなら、大谷ノブ彦氏がパーソナリティをつとめるニッポン放送「キキマス!」で、岡井千聖の食レポコーナーが欲しい。たぶん、全然うまくはやれないだろう。だけどその、全然出来てない感じ、そしてそれを笑える余裕こそが、今のエンタテインメント業界に足りないものなのではないか。そんなことを、わりと本気で思っている。
<結論>
とは言え、岡井千聖の本当の魅力は、一番の魅力はそこではない。彼女の一番の魅力は、笑顔が可愛い、という点に尽きる。岡井千聖が笑えば、楽しくなる。視聴者も笑ってしまうだろう。岡井千聖は、言わば日本国民にとっての、良い感じの親戚の子どもである。何はともあれ、彼女の幸せを願ってやまない。
文・相沢直
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