我々の日常に密接に関わっているにもかかわらず、意外と知られていないのが、タクシー業界の裏側。その典型が、『お化け』『天長節』『大きな忘れモノ』 といった業界用語だ。
業界特有の隠語をまとめた書籍などでも紹介されているため、ご存知の諸兄も多いかもしれないが、『お化け』とは、長距離客のことを指している。通常、中心地を流していると、ワンメーター程度の乗客も多いが、時折、県境を跨いでの乗車を希望するケースもあり、そうした際には一度に万単位の売上を計上できる ため、ドライバーが「今日はお化けが2回も出てさ...」とホクホク顔で仲間に語る光景も珍しくない。
次に有名な隠語といえば、『大きな忘れモノ』。「落し物」などと表現されるケースもあるこのフレーズが使われるのは、主にタクシー無線上の通達。これは 犯罪者に関する情報共有を意味しており、タクシー強盗等、彼らに直接関係する内容の事件から、当局からの協力要請により、逃走中の被疑者や車両を探す際に 使われる表現だ。
そのため、無線上では、「忘れモノを落とされたお客様は、五反田駅周辺でお降りになられ、年恰好は30~40代、背が高く180cm程 度、赤いシャツを着て...」という具合に、その時点での目撃情報をまとめたものがセンターから一斉アナウンスされるという寸法だ。なお、こうした重要な内容 の直前には、普段は滅多に耳にすることのできないアラート音が鳴るため、注意深く聞いていればわかるだろう。また、はからずも犯罪者を乗せてしまうなどし て、タクシーが危機的状況にある場合などは、屋根の上に設置されているタクシー会社を示す「行燈」(あんどん)と呼ばれる電灯が赤白に点滅しているので、 そうしたタクシーを見かけた際は、迷わず警察に通報しよう。
そして意外と知られていないのが『天長節』。これはメーターを倒さず、賃走(有料走行)モードにしない状態で客を乗せて移動してしまっている状態のこ と。数十メートルならまだしも、しばらく気付かずにそのまま走ってしまうと、業界的には不正行為としてペナルティを与えることが決まっており、実はこうし た行為を見張るために、主要駅のロータリー出口や、繁華街には、"覆面パトカー"よろしく、近代化センターの監視部隊が隠れているのだ。
今回ご紹介したのはほんの一部だが、この3つを知っているだけでも、ちょっとしたタクシー通になること間違いなし。次にタクシーを利用する際には、是非 ともチェックして頂きたい。
鈴木將義
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