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本屋大賞も受賞か? いとうせいこうが「作家魂」をかけた『想像ラジオ』

2014/02/14 12:30 投稿

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マルチに活躍するクリエイター、いとうせいこう氏が16年ぶりに発表した小説『想像ラジオ』は、生者と死者をつなぐ物語でした。東日本大震災のちょうど2年後の3月11日に上梓された『想像ラジオ』はツイッターなどの口コミで大きな話題を呼び、「ダ・ヴィンチ編集部が選ぶプラチナ本第1位」「野間文芸新人賞」をはじめ、2013年の多くの賞を受賞しました。そして、ここにきて「本屋大賞2014」のノミネート作品にもなり、さらなる栄光に輝くのか、注目されています。


物語は、想像ラジオのDJアークの軽妙な語りで始まります。想像ラジオとは「あなたの想像の中でオンエアされる」というもの。奇妙なことに、38歳のDJアークは杉の木のてっぺんに仰向けに引っ掛かりながら想像ラジオを放送しています。語られるのは、昨日までの暮らしのこと、朴訥な父や兄のこと、中学生になる繊細な息子のこと、いちばん連絡を取りたい妻から何の連絡もないこと。雄弁なおしゃべりの中で、ただ一つ何も触れられないのは、なぜ、その状況にいるのかということでした。

この状況は何なのだろう、と読み手が思いはじめるころ、想像ラジオに届いたリスナーからの声によって、真実が明かされます。真実とは、DJアークは東日本大震災の津波によって杉の木のてっぺんに運ばれた被災者であり、つまりは死者であることでした。物語では、DJアーク自身も、徐々に自分に起きたことを認識しつつ、やはり死者であるリスナーの声に耳を傾けながら、想像ラジオを続けます。放送を続ける本当の目的は、最後に妻や息子と連絡を取りたい、その一心からでした。

いとう氏は、震災というテーマに正面から向き合わなければ、自分はこれから一生、小説は書けない、と思ったことをインタビューで語っています。また、この小説を発表することに逡巡したことも明かしています。東京にいて被災経験もない自分に書く権利があるのかと。

その葛藤は、本作の中でも、想像ラジオを聞こうとするボランティアの男の気持ちとして描かれています。死者の悔しさや悲しさを果たして生者は想像しうるのか、想像することは意味のあることなのか...、読み手もまた問われます。さらには、本作を通して、死者に寄り添う想像力こそが、現実に起きた災害を未来に伝えつづけるという、大切な人間の能力であることに気づかされます。もうすぐ東日本大震災から3年。犠牲者の一人ひとりの声に耳を澄ませてみませんか。

【書籍データ】
・『想像ラジオ』いとうせいこう著 河出書房新書

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