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「俺の嫁」という言葉がある。

Wikipediaによると「主に男性が理想的な女性(2次元のキャラクターを含む)に対して発する言葉」とのことだ。どちらかと言うと、今はもう2次元のキャラクターに対して使われるほうが多い言葉かもしれない。3次元に生きる生の人間は、「俺の嫁」という言葉が要求するその「狭さ」を、いつだって飛び越えてしまうほどには情報量が多すぎる。
だけど確かに、ぼく、相沢直にとっては、あややこそが「俺の嫁」だと言える時期があった。西暦2002年に放送されたその音楽番組は、当時でさえ「硬派」と謳われるような番組で、選ばれた者にしか上がれないステージが毎回用意されていた。ぼくはその番組をぼんやりと眺めていた。オープニングアクトをつとめるためにステージに上がった彼女は、突然のサプライズに色めき立つ観客の前で「ひこうき雲」を独り歌い、その歌唱力と存在感だけで、その場にいた全ての観客に鳥肌を立たせてしまった。
ぼくはそれを、テレビで観ていた。ふと気がつくと、涙がとめどもなく流れていた。15歳の少女が、世界を変えてしまっていた。ロックンロールっていうものが生まれた瞬間っていうのは、きっとこんな感じだったんだろうって、そんなことを思いながら。

そこからはもう、ぼくの人生は、あややと一緒に進んでいった。「あややは俺の嫁」と言うのは、恥ずかしく、おこがましいと思ってもいたけれど、ぼくの人生で一番信じられるものは、間違いなくあややその人だったから。
彼女はその後も沢山の名曲を歌ってくれて、沢山の笑顔をライブでぼくに見せてくれた。そのたびにぼくは、彼女を「俺の嫁」と信じた自分のことを、誇りに思った。
そして、西暦2013年、8月4日。彼女は10年来の交際を続けた橘慶太との結婚を発表し、文字通りの「嫁」となったのだった。

(※注)
本記事は個人の妄想を勝手に書き連ねたものであり、以下の写真は本文の内容とは一切関係ありません。


2013年の大晦日、中野サンプラザにて、ハロー!プロジェクトのカウントダウンライブが開催される。あややがこのライブに出演するというニュースは、少なからずぼくを動揺させた。あややが、ぼくがぼくの人生で一人だけと決めた「俺の嫁」が、おそらくは最高の笑顔で、最高の歌を歌うのだろう。素晴らしいことだ。だけど実際、ぼくはそのとき、どんなことを思うのだろう?
アイドルを「推す」という行為は、一体どういうことなのかということを、ずっと考えていたような気がする。それは明らかに、擬似恋愛なんかではないのだ。この片思いの恋が、いつか叶うかもしれないなんて、一度だって思ったこともない。
だから「推す」という行為は、とどのつまり、自らの理性を越えた倫理とともに生きるってことなんじゃないだろうか。それは権利というよりも、むしろ義務の話だ。「俺の嫁」と信じた、たった一人の女の子に対して、「彼女の夫」として何を返すことが出来るだろう? 彼女から貰ったものはあまりにも多すぎて、一生をかけても返しきれないかもしれないけど、それでもなお、何かが出来ないだろうかってことを、ずっと考え続けていたのだ。

もちろん、あややのことが大好きだから、色んな妄想もしてきた。彼女とずっと一緒にいたくて、彼女の人生を見つめていたかったから、彼女と結婚する夢なんて何度だって見たし、今でも見るくらいだ。

ぼくが一人で部屋にいるときに、玄関のカギが開く。そこにあややがいる。両手にスーパーの袋を下げて。
「ごめんね、直くん。帰り、遅くなっちゃった!」なんて。
それで、ぼくは言う。「いや、全然。っていうか、忙しいのにごめんな?」なんて。
「おなか、すいちゃったでしょ? 今すぐ晩ご飯、作りますからねー」
「うむ。よろしく頼むよ」
「何それ(笑)! そんな偉そうな旦那さんは、晩ご飯抜きですよー」
「えー? 勘弁してよー(笑)」
なんてさ。本当にこんな感じなんだ。ぼくの頭の中では、こんな光景が何度も繰り返されてきた。

だけどあややは、もうやっぱり、「俺の嫁」じゃなくて「慶太の嫁」だ。これまでも、これから先も、あややのことを一番近くで見つめてあげられるのは、慶太だ。そう。その通りだ。でも、それで良い。実際のところ、ぼくの気持ちなんてどうだって良いのだ。あややを「俺の嫁」って思った以上、一番に優先されるべきはあややの幸せであるべきなんだから。ちゃんとそう思えるためには、もう少しだけ時間が必要かもしれないけど、たぶん、いつかそう思えるはずだ。
だって、そうだろう? あややは「俺の嫁」なんだから。そんな女の子が幸せになることに対して、何の邪魔もしたくないんだ。ぼくはあややが好きだ。だけど、あややを世界で一番幸せにすることが出来る男がいるなら、その仕事はそいつの仕事なのだ。

本当に、それで良い。そう思う。そう自分に言い聞かせた、その瞬間、玄関のカギが開く。

そこには、あややがいる。両手にスーパーの袋を下げて。
「ごめんね、慶太くん。帰り、遅くなっちゃった!」って。
それで、ぼくは言う。「いや、全然。っていうか、忙しいのにごめんな?」なんて。
「慶太くん、おなか、すいちゃったでしょ? 今すぐ晩ご飯、作りますからねー」
「いや、それは嬉しいんだけど。慶太、って、芸名で呼ぶのやめてよ。照れくさいわ」
「たはは。ごめんごめん! 慶太くん、じゃない、直くん。晩ご飯、愛情いっぱいかけて作りますからね!」

ぼくの本名は、相沢直だ。ただ、芸能活動をする際は、芸名として、橘慶太という芸名を使っている。W-inds.というダンス&ボーカルユニットで、芸能活動を行っている。
ぼくは彼女と、10年来の交際を続けて、そして西暦2013年の8月4日に、彼女と結婚するに至った。だから、ぼくの嫁はあややだし、あややの夫はぼくなのだ。

これが現実なのか、妄想なのか、ぼくにはもう判断するすべがない。だけど、人生なんてものは、大体はそんな感じなんじゃないか。恋であれ、愛であれ、何かを本当の意味で信じるってことは、たぶんそういうことなんじゃないだろうか。
だから、あややは、「俺の嫁」だ。今も、これからも、ずっと。彼女を一番幸せに出来るのは、ぼくしかいない。彼女が選んだのはぼくなんだし、ぼくが選んだのは彼女なんだから。

そう。これから先も、ずっとこういう風にぼくは生きていく。ぼくはあややと、たった一人の「俺の嫁」と一緒に、これから先も、ずっと生きていくんだ。
だって、ぼくが歩くことを許されている道なんて、ほかにはもう、一つもないんだから。

(相沢直)

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