断言しよう! 三谷幸喜監督最新作『清須会議』は、全サラリーマン鑑賞必達の傑作歴史エンターテインメントだ。日本の歴史の中で、初めて会議で歴史が動いた"清須会議"。メガホンを握った三谷監督も、「組織で働く方は観たほうがいいですね」とアドバイスを贈る。
"清須会議"とは安土桃山時代、織田信長が散った天正10年(1582年)の本能寺の変の後、織田家の後継問題や遺領配分を決定するために開催した評定(会議)のこと。参加メンバーは信長の重臣だった柴田勝家、羽柴秀吉、丹羽長秀、池田恒興で、日本史の中で初めて会議で歴史が動いたという実話。この史実を幼少時に知って感激した三谷監督が、構想40年をかけて映画化。自身初本格時代劇エンターテインメント映画として世に送り出す。
この"清須会議"の"会議"、まるで現代と変わらない策略を登場人物たちが行う。後継問題で対立する勝家と秀吉は味方を増やそうと仲間や部下の懐柔作戦を行い、会議当日に有利な結果を導こうと"根回し"に奔走する。「結局は、人間関係がすべてですからね。そこには、どの時代でも多数派工作はありますよね」と三谷監督も同意する。「それを制する者が勝利を収めることは必然だと思うし、それは誰かって言うと一歩先を見ている人。今の自分のポジションを俯瞰で見ることができる人ですよね。たとえばカメラがクレーンで上がっていくとセットなどの先が見渡せることと同じで、上の方で見渡している人間だけが先を見越せて、そういう人たちの言葉には説得力がある。結局、そういう人が天下を取る」。
冒頭で"全サラリーマン鑑賞必達"と思い切った断言をした理由には、組織内外の敵と戦う破天荒な銀行員の奔走を描いたドラマ「半沢直樹」が大ヒットした市場的な背景もある。評判を集めた土下座、敵を切り崩していく戦法、裏切りのドラマなど、「半沢直樹」と『清須会議』には観る者の感情を煽るシーンが多く、前者を観ていない三谷監督も期待感を示す。「そうらしいと聞いて、波がきているなと。全然関係ないけれど、『半沢直樹』的匂いを感じ取ってほしいな。漢字四文字も同じ。これはきているなと僕も感じてはいます」。
ともあれ、「組織で働く方は観たほうがいいですね」と三谷監督はアドバイスを贈る。少々観方を変えれば、『清須会議』には理想のリーダー像を描いている側面もあって、それは組織人全員にとって参考になるものに違いない。この点、三谷監督は言う。
「ある局面、決断しなければいけない瞬間に腹をくくれる人に、人はついていくと思います。どういうことかって言うと、清須会議の資料をよくよく調べると、秀吉は実際に大事な会議の席を途中で外しています。あれは史実で、僕の創作ではない(笑)。会議で迷う長秀に業を煮やした秀吉が彼に無言の圧力を加えるため、お腹を壊して席を立ったことにしたということを知って、秀吉の本当の凄さを知りました。先がどうなるかわからない状態で、すべてを長秀に託して席を外した。そう考えると、秀吉がゆくゆく天下を取ることは必然だったでしょう」。
すべてのビジネスマンが組織内で天下を目指す必要はなくとも、将来を見通す眼力を養ったほうがベターなことは確かだ。『清須会議』は、そういうヒントが満載の一作でもあるのだ。
映画『清須会議』は、2013年11月9日(土)より、全国ロードショー
【参照リンク】
・『清須会議』公式サイト
http://www.kiyosukaigi.com/index.html
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