作中で"Buckle up, Buckaroos(シートベルトを締めて)"と車を暴走させるケイトリン・ジェンナーのように、思い切ってアメリカ政府を次々と皮肉ってきた『サウスパーク』。しかし、トランプ氏が大統領となった今、政府を皮肉るチャンスがそこら中に溢れているにもかかわらず、『サウスパーク』の製作者は、ただエンジンを暖めているだけのように見える。その理由は、悲しいかな、現実の方が彼らの作品よりも可笑しな事態になっているから、ということに尽きるようだ。


ブラック・ジョークを飛ばし、痛烈な社会風刺を展開するコメディ・アニメ、『サウスパーク』。その製作者であるトレイ・パーカーとマット・ストーンがオーストラリア放送協会(ABC)のインタビューに応え、12月に終了したばかりの最新シリーズであるシーズン20について次のようにコメントしている。彼らによれば、世間を二分した2016年の大統領選の最中、情勢を見ながら作品を作り上げるのに大変苦労したそうで、今年の9月からスタートする予定の新シリーズ、シーズン21では、まったく違う角度でストーリーが展開されることになるのだという。

トレイ・パーカー「現場はまだ微妙な感じです。と言うのも、ジョークが現実になってしまっているような状態だから、それを茶化すことは難しい。2カ月ほど前に終了したシーズン20では情勢に追いつくのが本当に大変だった。こちらが彼らを皮肉るつもりでも、現実が面白すぎて負けてしまっている、というような状況で。だから当面は一歩引いて、彼らが演じるコメディを見守ることにしたんです」

マット・ストーン「コメディは、政治家の人たちみんなにやらせておく」

ストーンは、あと8カ月は新作を作らなくても良い、と考えているようだ。そのため今はまだ、どんな作品になるのか語るには時期尚早、と言ったところだろうか。ネタが豊富な昨今の政況はジョークを作るのにとって最高では?とよく言われるそうだが、実際は全くそんなことはないのだという。

ストーン「こうした状況を皮肉るのは、より難しいと感じる」

パーカー「現実世界でコメディが演じられていて、僕らが分け入る余地は余り無い」

ストーン「世間の皆さんと同じく、僕らも驚かされている」

とは言うものの、やはり彼らはハリウッドの一般的なリベラル派とは一線を画す存在だ。『サウスパーク』はこれまで、その独特でフラットな視点から世の中のあらゆる事象を容赦なく物笑いの種にしてきた。デジタル世代から宗教までその範囲は実に幅広い。

20年もの間、その痛烈な風刺で政界をはじめとする世の中を鋭く描いてきた『サウスパーク』。そんな彼らが今、世間をただ傍観しているかのように感じて少し悲しい。しかし、彼らを信じるとすれば恐らく、今後数カ月は心配いらない、ということなのだろう。そして秋が到来する頃には再び、非のうちどころの無い完璧な政治風刺を我々に提供してくれるはずだ。

■参照リンク
http://www.moviefone.com/
RSS情報:http://news.aol.jp/2017/02/12/why-south-park-may-back-off-political-satire-in-trump-era/