F1ドライバー、アイルトン・セナの「音速の貴公子」、ボクシング、辰吉丈一郎の「浪速のジョー」、さらには男子テニス選手ジョン・マッケンローの「悪童」など、とかく、スポーツの世界では独特な二つ名を持つプレイヤーがこれまでも数多く登場しているが、ことオリンピックの代表選手に関して言うと、それはまさに"異名の宝庫"といった印象だ。
たとえば、現役選手時代に世界記録を35回も塗り替えたことで知られるウクライナ出身の男子棒高跳の元世界記録保持者、セルゲイ・ブブカにつけられた異名は「鳥人」。
ジャマイカ出身の"最速男"ウサイン・ボルトは、その走りを稲妻に喩え、「ライトニング・ボルト」。
さらに1948年のロンドン五輪&1952年のヘルシンキ五輪の2大会で、4つの金メダルと1つの銀メダルを獲得したチェコ(当時はチェコスロバキア)のマラソンランナー エミール・ザトペックは、苦悶の表情を浮かべて喘ぎながら力走するその姿から「人間機関車」と、実に個性的な異名がつけられていた。
他にも、体操6種目ですべてメダル獲得という偉業を達成したベラ・チャスラフスカが「体操界の女王」と呼ばれるなど、多くは、プレイスタイルや活躍にちなんだものであることが大半だが、
同じく体操界で活躍したナディア・コマネチが、そのあまりに美しい姿で「白い妖精」と呼ばれるなど、時代や競技の顔として知られる人気選手にも、必ずと言ってもいいほどに、個性的な異名がつけられているのである。「なでしこJAPAN」や「Qちゃん」といった日本人にとっても馴染み深いニックネームを加えると、その数はまさに枚挙に暇がない。
日本人になじみ深いもので言えば東京五輪で日本のバレーボール代表チームにつけられた「東洋の魔女」があるが、このニックネームは、決勝試合を中継していたアメリカのテレビ局のコメンテーターによって連呼された「オリエンタル・ウィッチ」(The Oriental Witches)というフレーズに起因し広まったもの。
「オリエンタル・ウィッチ」という名台詞が生まれた1964年は、静止軌道上の通信衛星を使用する形で、世界初の衛星生中継を行うことに成功した記念すべき年。また、異名とは少し違うが、1936年に開催されたベルリン五輪で飛び出した「前畑ガンバレ」の実況はラジオ中継によるものであった。
このように「二つ名」をつけることが一般化していった背景には、報道の形式の中心が、新聞に代表される"活字"によるものでなく、テレビやラジオで行われる実況中継へと移り変わったこともあげられる。有名アスリートにつけられた「異名」の歴史は、同時に、彼らの活躍を、現場で感じる熱のまま視聴者に伝えるべく、懸命に実況し続けた人々の歴史でもあると言えるだろう。
開幕したばかりのリオ五輪。果たして今年はどのような選手たちが活躍し、新たな異名が登場するのか、実に気になるところだ。
文・藤橋檎凜
https://youtu.be/jmqara4h4JQ
https://youtu.be/NlHIhpy68C8
https://youtu.be/XpobWQSH7Ck
https://youtu.be/eBrwQ7-I6t8
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