今は、政治家をキャラクターで選ぶ時代になりました。
キャラが立っていてカリスマ力を持った政治家が支持され、彼らのシナリオに沿って物事が進んでいくのです。
「そんな風に政治家を選ぶなんてとんでもない! 政策をよく吟味みして、どの政党、政治家に投票するかを決めるのが民主主義だ」
そうやって怒る人もいるでしょう。
政治が「趣味」なら、政策を丁寧に吟味し、「この政党の経済政策には賛成するけど、外交については反対だな」と考えるのはよいことです。
私も、それこそが民主主義の本質だとは思います。
だけど、あらゆる事柄について、そんな風にじっくりと考えることが今できるでしょうか?
テレビやラジオ、紙の新聞や雑誌、単行本が主要なメディアだった頃なら、多少なりとも政治に興味があれば、普通の人でも政治についてあれこれ考えることができました。
新聞を毎日読んで、週刊誌を毎週読む。
時々書店で政治関係の単行本を買って読む。
テレビのニュース番組を見る。
それくらいでも相当の政治通と言われたでしょう。
そして、選挙の時には、どの政策を支持するのかを考えて選んでいたのです。
やがてインターネットが普及し、本当の意味での民主主義が実現できるのではないかと言われるようになりました。
ネット上では、政治家のサイトでは政策を読むこともできますし、マニフェストを比較できるサイトもあります。
ソーシャルメディアで積極的に発信する政治家も増えてきました。
自分で政治家の言っていることを判断できるだけの材料は、昔よりずっと簡単に集められるようになっています。
その一方で、情報はあまりにも膨大すぎ、なおかつ次から次へと流れていきます。
東京オリンピックの競技場の建設費用が高すぎることが問題になったと思ったら、今度はエンブレムをめぐる騒動が起こり、それが一段落するまもなく安保法案が可決され……。
ソーシャルメディアでは何かの政治ネタが流れてちょっと話題になったかと思ったら、もう1カ月後には誰も見向きもしないようになっています。
人々の関心を引く話題が流れては消え、流れては消えていきますから、一つひとつについて政治家たちがどう発言しているのかを確認し、自分の意見を持つなんてことをやっていられません。
そんなことができるのは、政治関連のメディア関係者か、政治マニア、そうでなければよほどの暇人だけでしょう。
じっくりと政策についての自分の意見を持ち、何年かに一度の選挙で投票する。
そういう行動はもう「コスパが悪い」んです。
コスパとは、コストパフォーマンス(費用対効果)の略。
誰しも、自分の時間だとか考えるためのエネルギーといった貴重なコストを、何だかよくわからない政策のために費やしたくありません。
だから、「キャラ」なんです。
今はどうやってみんな政治に関わっているのかといえば、テレビやネットで政治家を見て、「この政治家のキャラは、頼りになりそう」「こいつは悪そうなキャラをしているから信用できない」と、ざっくり選びます。
キャラで選んだら、あとはもうその政治家にお任せ。
自分の時間は、自分のために有意義に使うことができます。
大きな事件が起こったら、ソーシャルメディアでちょっとだけ騒いだり、デモに出かけてすぐ帰ってきたりして、あとはさっさと忘れてしまう。
これが今の平均的な政治参加スタイルになっています。
カリスマ論
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