日本に住んでいる私たちは、どういう「手駒」を持っているのでしょう?
原稿執筆時点で、日本のトップは安倍晋三首相。彼を批判する側からは、「安倍首相は日本の軍国化を狙っている!」と言われています。
ただ、軍国主義者だというのは他人の張ったレッテルに過ぎませんから、彼がどういうシナリオを描いているのかはもう少し考える必要があります。
政治家は腹黒くて何を考えているのかわからないと思っている人もいるでしょうが、そんな複雑なものじゃないですよ。
政治家が本当にやりたいことは、公式の声明などに意外とはっきりと出ています。
プーチンは「世界統一」や「世界征服」といった言葉こそ使いませんが、彼があちこちで語っていることをつなぎ合わせれば「ロシアを軍事的にも経済的にも世界一の大国にします」と言っているのは明白です。
周りがそれを額面通りに受け取っていないだけ。
安倍首相も同様で、世界がどうなっていくか、日本はどうするかについて、あちこちで語っています。
要するに、アメリカと日本は密接な協力関係を築き、もう一度アメリカによる一極支配体制を作る、ということですね。
そういう世界シナリオにおいて、日本をアメリカの属国みたいな立場から、同盟国として強い存在感を示せるようにしたい。
それが安倍首相の描く、日本のサブシナリオです。
彼は、日本をアメリカ、ロシア、中国という三大国に匹敵する大国にしようとは絶対に考えていません。
日本は国土も狭くて、人口はこれから減っていくし、天然資源も少ないから大国にはなれない。
でも、アメリカに近づくことで、大国にはなれなくても世界の舵かじ取とり役にはなれる、そういうことでしょう。
日本を世界の舵取り役にするためには、軍事力というカードを使えるように憲法を変える必要があるけど、それは難しいから安保法案を通して憲法解釈を変えることにしよう……。
安倍首相には「世界はこうなる」という彼なりの世界シナリオが見えていて、「だから、日本はこうあるべきだ」というサブシナリオを描いている。
「何でお前らそんな当たり前のことがわからないんだ」と、イライラしているのがもう手に取るようにわかります。
安倍首相に限らず、歴代の首相もそれぞれの世界シナリオと、それに応じた日本のサブシナリオを持っていました。
池田勇人の「所得倍増」とか田中角栄の「日本列島改造論」は、シナリオがシンプルでわかりやすかったので、歴史に名を残す宰相となりました。
それ以外の首相もシナリオは持っていたのでしょうが、複雑すぎたためにわかりやすく伝えることができませんでした。
プーチン大統領や安倍首相が描いているシナリオは、政治には門外漢の私から見てもとてもわかりやすい。
一般の国民からすれば、とても支持しやすい、あるいは反対しやすい政治家ということになります。
安倍首相もよかれ悪しかれ歴史に名を残すことになるでしょう。
カリスマ論
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