僕がよく相談される話し方の悩みというのは、次の4つくらいのレベルがあります。
「人前で話せないんです」
「話すのが苦手なんです」
「話すのが下手なんです」
「もっと上手くなりたい」
「人前で話せないんです」というのは人前で声が出ないというレベルです。
いくら質問されても「ああ……」と小っちゃい声が漏れる程度。
本書は、人前で「話すのが苦手」「話すのが下手」「もっと上手く」というレベルの人に向けて書いており、「話せない」という人への対策はほとんど扱っていません。
その意味では、中級者以上向けの内容になっています。
そもそも「人前で話せないんです」という人は、ハートの訓練という段階を踏んで心を強くしないことにはどうしようもありません。
しかし、このハートの訓練、各レベルにも共通した課題でもあります。
お茶とかワインを売っているお店で、お客さんに試飲をすすめている光景を見ることがありますよね。
そうしたアルバイトに対するお客さんからのクレームの8割から9割は、「何言ってるのかよく聞き取れない」ということだそうです。
「お茶どうですか?」とか「ワインどうですか?」と、朝一番では声が出るけど、いろいろな人から、「いや、いい」「いいです」「いい」って断られるうちにどんどん怖くなって、声が出せなくなっちゃうんです。
じつは僕も大学で教えだして半年ぐらいまでは、学生の目を見て話すことができませんでした。
ある程度人前で話せる人でも、ハートが弱ってしまったらやはり声が出せないのです。
▼ハートを鍛える訓練とは?
では、どのようにハートを鍛えればいいのか。
参考になったのが、ヨシモトのお笑い養成所でやっている方法です。
お笑い芸人になりたい人というのは、学生時代から面白い人も確かにいるんでしょうけれども、意外なもので、家でずっとお笑いばっかり見てきた、友人なんかもいないという人もけっこういるそうです。
だから「人前で話せない」という悩みを持った人もいるんですね。
では、そんな彼らがどのような訓練をしているかというと、「え? そんなことで?」と思ってしまうような、日常生活で実践できる簡単なことばかりです。
ぜひ、あなたも挑戦してみてください。
|見られる訓練①エレベーター
エレベーターに乗ったら、あえて一番奥に行って入口のほうを向きます。
気が弱い人は、エレベーターに乗るとボタンの近くで壁を向いて押してあげるか、もしくは後ろのほうに行って壁を向くんですが、堂々と正面を向いてください。
ほかの人がどんどん、まるで自分を見てエレベーターに乗ってくるような感じがしますが、慣れるまでこのプレッシャーに耐えてください。
|見られる訓練②電車
電車に乗ったら、前の席に座っている人たちが「今から自分の話を聞いてくれるんだ」とイメージし、左右に視線を走らせます。
慣れていない人は、ほんのちょっと他人の視線が自分のほうを向いているだけですごく怖くなっちゃう癖がありますが、この方法に耐えれば、ある程度は他人の視線の恐怖を克服できるようになります。
|見られる訓練③映画館
映画館入ったら、あえて座席の前方に行き、席を探しているふりをします。
エレベーターや電車同様に、映画館の客席にいる人は全員、ただ単に映画がはじまるまでスクリーンをボーッと見ているだけで、前に誰が立とうがまったく気にしていません。
その微妙な安心感と緊張感を背負いながら、見られる訓練をしてください。
|声を出す訓練 街頭のティッシュ配り
見られる訓練に慣れてきたら、次は声を出す訓練です。
街頭でティッシュ配りをしている人がいたら、「ありがとう」と言って受け取り、そのあとに「あ、これどこで売ってるの?」などと質問してください。
もし相手が「○○のキャンペーンを行っているんです」と答えてくれたら、まったく興味がなくても、「あ、そうなの?」とか、「いつまでやってるの?」「どこでやってるの?」と聞いて応答の形にしていきます。
この程度のことでも、慣れていない人にとっては訓練になります。
なぜティッシュ配りかというと、まず相手のほうから「ティッシュをもらってください」というワンターン目が出ているからです。
自分は受け取るほうだから、「ありがとう」と言うのは簡単です。
これが、ナンパみたいに自分のほうから声をかけなきゃいけないとなってくると、ものすごくハードルが上がってしまいますよね。
プロのお笑い芸人ですら、話せるようになるための最初の訓練は「見られること」「声を出すこと」です。
ここが抜けて、発声法とか、話の組み立てとか、声の出し方を学んでも仕方ありません。
話し方の基礎力として、どのレベルにいようとも「強いハート」は必須です。
頭の回転が速い人の話し方
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