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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
 岡田斗司夫の解決!ズバっと 2015/07/03
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おはよう! 岡田斗司夫です。
メルマガ読者の方から、多数質問をいただいています。
かたっぱしから答えてみましょう。

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「庵野監督の押井守批判」

ケンタさん/21歳/フリーター

 実写版『パトレイバー』が公開されますが、庵野監督が押井守監督を盛大にディスっています。
 同じ業界の岡田さんはどうみられますか?

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 盛大にディスってないよ。
 
 庵野君は樋口真嗣と「アニメ映画を作るときには、ちゃんとお金儲けないとダメなんだけど〜」という話をした。
 そのときに「お金なんか全然儲けようとしない押井ナントカさんって人がいますね」なんて言って、樋口真嗣と笑ってただけ。
 
 庵野君は誰かにケンカを売るような人間じゃないよ。


■"当てる"ことを考えない映画監督は押井守だけ

 宮崎駿ですら、金儲けは考えるし、スケジュールは守ろうとするし、映画を当てようとする。
 なぜなら、スタジオジブリで一緒に働いている仲間に給料を払いたいから。
 仲間にちゃんとした待遇を与えたいから。

 スタジオジブリを始めた時の宮崎駿が、鈴木敏夫に出した条件がある。
 それは「アニメーター全員を正社員で雇う」ということなんだ。
 もともと東映の労働争議でこの業界で入ってきたバリバリの運動家だから、宮崎駿は"みんなの幸せ"を考えるわけだ。

 富野由悠季はガンダムの映画を作るとき、"当てること"しか考えてない。
 元・虫プロで絵コンテという技能一つでフリーになった人間だから、「当てないと次はない!」と分かっているから。
 自分が今、「富野由悠季でござい!」なんて言ってられるのは、『ガンダム』で当てたからだ。
 当たる映画を作らないとメジャーでいられない。
 メジャーでいられなかったら、次のチャンスが与えられないと思っているんだ。

 庵野君も、樋口真嗣も、『寄生獣』の山崎監督もそうなんだよ。

 あらゆる映画監督は当てなきゃいけないんだよ。
 それはスピルバーグやルーカスですら言ってる。
 ちゃんと"当たる映画"をやらないと「自分達には次のチャンスはないんだ」と、みんなが言ってる。

 でも世界中でそれを言ってない唯一の映画監督が押井守。
 押井守は、「俺の映画が当たるか当たらないかなんて知らねえよ」って言ってる(笑)

 それでも押井守に金を出すヤツがいるので、みんなはズルいと言うしかない。


■押井守よりも、高畑勲のほうがひどい奴?

 でも高畑勲は、思ってても言わないんだよ。
 ディスって言うなら、高畑勲は押井守以下だよ。

 俺が思うに、押井守はひでえヤツだと思うよ。
 でも、押井守に金を出したい人がいるから、やっぱりすごい。

 一方で、高畑勲はひどいけど、自分がひどいということを言わない。

 
 押井守は、
 「俺のアニメや映画が当たるかどうかなんて知るかい!」
 「映画監督やクリエイターは、スタジオなんか持っちゃダメ!」
 「自分が食わせなきゃいけないスタッフを抱えちゃダメ!」
 ――って言うんだよ。

 押井守は、自分が考えてることをはっきり分かっている。
 それを言うことが、自分が映画を作るという社会運動になってると考えるからなんだ。
 その意味で押井守は、“正義のあるひでえヤツ”。

 でも高畑勲は一切言わない。
 ひたすら締め切りを遅らせて、8年かけて『かぐや姫の物語』を作って、スタジオジブリを倒産させた(笑)
 高畑勲の方がよっぽどひでえヤツだよな。


【まとめ】
 あらゆる映画監督は映画を当てようとしますが、押井守はやりません。
 庵野秀明はそれを笑っているだけなので、ディスってはいません。