「なぜ人は漫画を読むのか」
【質問】
“何故、人は漫画を読むのか。岡田さんはなぜ漫画を読みますか”
【回答】
どうしようかね、これ(笑)。皆さんの回答はいかがでしょうか。
「深いようで浅い」(コメント)
「そこに漫画があるから」(コメント)
上手い!
人は、なぜ人は漫画を読むのかな。「なぜ、人は音楽を聴くのか」とか「なぜ、人はロックを聴くのか」とか聞かれたら、「俺はロック聴かねえよ!」と思うもんな(会場笑い)。
だから、「なぜ、人は漫画を読むのか」っていうのは、画面を見ている君と僕の間には成立する質問なんだ。でも僕らとは普段会わないような髪の毛をくるくる巻いた青山大学行ってるようなお姉さんは、この質問は多分無意味なんだけどね(笑)。
なぜ人は、小説じゃなくて漫画を読むのか。こういう時は対立物として、補助線を出せばいいんだ。
何かを語る時って、その漫画本体だけを語ろうとすると、やっぱり時々しんどくなるじゃん。なので、代わりに映画とか小説を持ってきて、この差で語ればい いんだよね。”人は創作を見る生物である”とするなら、「なぜ映画見る人は漫画を読まないのか?」「映画見る人でも漫画読む人と読まない人がいるんだろ う?」とか、そうやって考えてみると分かりやすいんだ。
漫画は、1人の人間からの才能の搾り方が尋常じゃないんだよ。例えば、映画作家、映画監督でも才能は搾り取られる。1つの作品にでも、2時間の映画作る のにやっぱ最低でも半年ぐらいかかるじゃん。半年ぐらいかけてゆっくり搾り取られるんだ。で、小説も1人の人間の才能を絞り取るんだけども、小説を集中し て書いてられるのって、どうやっても1日平均でも3時間とか4時間ぐらいなんだよ。
でも漫画家は違うよね。週刊の漫画家になったら、週に7日働いて1日に16時間書くじゃん?
世界中のエンターテイメント見ても、1人の人間の才能を、週に7日間、1日16時間引きずり出すっていうか搾り取るようなメディアは漫画以外は全くないんだよ。
これが漫画の特殊性だと思う。だから、「人はなぜ漫画を読むのか?」については、漫画を読む僕らは、その凄さが分かるんだよな。他のミュージカルにして も映画にしても音楽にしても、他のあらゆるジャンルのエンターテイメント、アートにしてもそうなんだ。村上隆やゴッホでもいいし、ルノアールもセザンヌも 誰も、1日16時間で週に7日間を5年も6年も自分の創作物に全てぶつけてないよ。
その意味で漫画は本当にすごいんだ。俺は「漫画は人類が創り出した最大の娯楽物」だと本当に思ってる。「アニメも漫画もすごい!」って言いたいんだけど も、やっぱり作ってた立場から言うと、アニメの作り手は、そこまで命を懸けられない。懸けられないというか、そんなやることがないんだ。
でも、漫画描く人間にしたら、アシスタントに任せてる線の1本1本まで自分で描こうと思ったら描ける。それでクオリティが劇的に上がるのを知ってるし、それで週刊漫画とか月刊漫画って成立しちゃうんだもん。
だから、冨樫さんが『HUNTER×HUNTER』を休んでしまうことだって、俺は悲しみながらも「冨樫、何やってんだ」って、言わない。それは、あの人も週に7日16時間描く体制を整えたんだけども、体がついてかなくなっただけなんだよ。
冨樫さんが、『幽遊白書』やって、『レベルE』をやってる時に、「全部自分で描く」って決めた。その漫画家の生き方を僕らは応援することはできるんだ。で、買わないって、選択肢もあるんだけど、批判することはできないんだ。漫画家が自分で選んだ人生だからね。
その結果、こういう漫画描くと、とんでもない労力かけて、みんな漫画描くのが嫌になる。いわゆる鳥山さんみたいに描けなくなっちゃうか、冨樫さんみたいに体を壊しちゃうか、または売れなくなって消えていく。
そういう膨大な量のお話と絵を描ける天才を、大量に使って消費するような国に生まれて、それが毎週発表されてる。すごいラッキーな日本という国の50年ぐらいのたまたまの枠に俺らは生まれてるから、漫画が毎週のようにあるのが当たり前だと思ってんだ。
だから「人はなぜ漫画を読むのか?」は、その漫画の凄さが分かるからだよね。分からないやつにとってみれば、他のエンターテイメントと同じに見えちゃう んだよ。音楽とか映画とか、バラエティ番組とかお笑いとかと同じに見えちゃうんだけども、明らかに1人の人間の最高の搾り方が違いすぎる。
僕は「なぜ漫画を読むのか」っていうと、面白いから(笑)。
まあ、それだけの単純な理由でしかないな(笑)。
【まとめ】
「面白いから」っていう単純な理由。その他だと、漫画は他のエンターテイメントと比べても、1人の作家の才能の搾り方が尋常じゃない。僕らにはそれが分かるから読む。
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