大好評の『アオイホノオ』YM9YwQ、第七話は見て頂けましたか?
東京は金曜の深夜、大阪は月曜の深夜。
その他、こちらの局でもやっています。http://goo.gl/ebVBOj
ドラマを見ながら、僕が書いた解説をお届けします。
これを読みながら本編を見直すと、面白さが深まりますよ。
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・トンコさん
このドラマに登場するのは、基本的にすべて実在の人物。もちろんトンコさんも実在するし、彼女のバイト先であるお好み焼き屋も実在する。マンガ化の際、原作者・島本はできるかぎりすべての関係者に連絡を取って許諾を得た。
その唯一の例外は、トンコさん。どうしても連絡がつかない。もともとこのマンガを島本が書いた動機のひとつに「トンコさんにもう一度、会いたい。会って、マンガ家になった俺を見て欲しい」(見てもらってどうするか?というのはわかんないけど)というのがある。
しかし、いまだにトンコさんの所在は掴めない。ドラマをご覧諸兄、トンコさんの今を知っていれば、ぜひご連絡ください。
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・トンコの勤めるお好み焼き屋「なんでやねん」
実際にトンコさんが勤めていたのは、富田林駅近くのダイエー内のお好み焼き屋。ドラマ化では一軒家になってるのは、ダイエー内の撮影が権利処理的に難しかったため、と思われる。
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・「お好みひとつです〜」
原作者・島本も監督・福田も関西人では無いため、お好み焼きのオーダーの仕方が間違っている。大阪で「お好みひとつ」というオーダーはあり得ない。
「ブタ玉ひとつ」「イカ玉ひとつ」など、必ず具材を指定すべき。あとでトンコがお好み焼きを鉄板に載せるシーンでも、ソースが焼けてないのが不自然。
でも!このシーンはトンコさんの可愛いオーダー声を鑑賞するのが目的なので、許す!
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・自動車教習所の教官
第7話の台本執筆時では、この役は原作者・島本和彦本人がやるはずだった。
しかし実際に演じているのは、この第7話より登場する武田康廣(本人)。
武田は自主制作映画で主役を何度もつとめているので、素人とは思えない演技力がある。もし島本本人が教官を演じていたら、ここまでの迫力はなかっただろう。
もう一つ、武田は大阪南部・河内の出身。夏でも長袖を着ている人がウロウロしている土地柄である。ドラマ内の罵倒表現など日常会話の範囲内なのだ。
岡田は武田の親戚、特に「ちょっとコワイ叔父さん」「ちょっと人には説明しにくいお仕事をされている叔父さん」などにお会いしたことがあるけど、武田など比較にならない迫力だった。
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・岩瀬ジュン
彼女の髪型や革ジャン、アイメイクなど、貴重な80年代風俗。たしかにああいう革ジャンを着た女性、いたよなぁ。
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・あのシーン
説明無しにでてくるマンガは、松本零士の「さらば宇宙戦艦ヤマト」の1シーン。宿敵ガミラスとの戦いの後、宇宙戦艦ヤマトは博物館行きとなっている。
主人公・古代進は輸送船団の護衛係として、小さな艦に乗り込んでいる。
地球はガミラスとの苦しい戦いを忘れ、新型戦艦アンドロメダを作った。その処女航海で、目の前を通る古代の艦に「ジャマだ!どけ!」と言い放つ。
「男なら、理不尽な要求に屈するな!筋を通せ!」というメッセージだけどモユルよ、ここは譲ろうよ・・・。
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・「大阪のSF大会で、ダイコン3(スリー)」
ついにはじまったダイコンのエピソード。ダイコン3とはなにかは、またあとでゆ〜っくり解説します。
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・「まだ20分あるよ」
津田ヒロミには「こんなマンガ、ダメだ!」と断言しながら、次第に大友克洋のマンガにはまっていくモユル。これを表現するのが、この「一瞬だけ掛け時計を見て、すぐにマンガに戻る」という演技だ。
コメディとは、こういう視聴者に伝わるか伝わらないかギリギリの表現でキャラを積み上げる。ダメ押しでさらに「シャキーン」という効果音まで入れてみた けど、それより視聴者は津田さんの哀しそうな顔で胸がいっぱいになって、監督の意図はなかなか伝わらない。かようにコメディは難しく、恋愛は強い。
モユルがギャグにこだわろうとも、やはり世間は恋愛モノを求めているのだ。
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・「そもそも、SF大会とはなんですか?」
SF大会とは1939年にニューヨークで開催され、戦時中を除いて毎年開催される「SFファンによる年に一度のお祭り」である。
日本でも1962年に東京都・目黒区で第一回日本SF大会が開催され、以後現在までずっと続いている。
最大の特徴は「ファンによるインディーズイベントである」ということ。
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・「第3回大阪SF大会、略してダイコンスリー」
SF大会の名称を説明するのは難しい。なぜ大阪SF大会が略してダイコンになるのだろうか?
まずSF大会の源流がアメリカの世界SF大会にある、というのを思いだそう。たとえばロサンゼルスで開催されるSF大会はL.A.CONと呼ばれる。 LAはロサンゼルスの略、CONとはコンベンション、すなわち大会の略称だ。このように世界SF大会では「開催地名+CON」と呼称される。
この制度が日本でも真似されて、第一回日本SF大会は目黒区で行われたので「目黒+CON」でMEG−CON、メグコンと呼ばれるようになった。
武田が話しているのは1981年の第20回日本SF大会。大阪での開催は1964年、1971年に続いて3回目。なので
「大阪の大からDAI」+「コンベンションのCON」+「第三回のⅢ」で「DAICON Ⅲ」
と呼ぶのである。
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・「金はある、人も集められる、100人や!」
武田はこう語ってるが、金といっても貧乏学生の庵野たちに比べれば、という程度だ。実際のダイコンⅢオープニングアニメの実行予算は20万円弱だった。
しかしそれより大きいのが、ボランティアスタッフの存在。100人というのは大会スタッフの総数だけど、アニメ制作だけでも50人近くが集まった。この規模でアマチュアアニメを作った団体は、当時は世界でも皆無だった。
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・気絶する山賀
これも実話。初打合せ時にしゃっくりが止まらず息を止めた山賀は、そのまま気絶してしまった。後にその話を聞いた岡田斗司夫は「そいつも面白いから、絶対にスタッフに入れよう」と力説した。
ちなみにこの会見の場所は京都のSF喫茶「ソラリス」。ソラリスはダイコン3オープニングアニメで、「女の子ににじりよるパワードスーツ」の背景に登場する。
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・喫茶店マスターの、息を呑むぐらいヘタな演技
演じるのは山賀博之の本物。この人がいまや武田康広の上司としてガイナックス社長三代目、というのも面白い。
先日の「アオイホノオ」打ち上げでは、武田康広は出席したがったのに、山賀が「お前は仕事していろ」と命令して参加させなかったそうだ。まさに下克上、山賀おそるべし。
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・喫茶店の紙ナプキンに描いたパラパラマンガ
山賀の騒動の影で、いつのまにか庵野が描いていたパラパラマンガ。これを見て武田は「パワードスーツが走ってるやないか!」と絶叫する。
パワードスーツとはSF作家 ロバート・A・ハインラインの「宇宙の戦士」に登場する強化服。ロボットのように見えるけど人間が着込み、中の人の筋力を数百倍に増幅する戦闘服だ。
実際には庵野はダイエーの計算用紙を使い、あっというまに8枚ほどのリピート(繰り返し)でパワードスーツの走りを描いてしまった。
しかしドラマ内で紙ナプキンに画を描いたのは、マンガ家の一本木蛮さん。彼女はおそらく、1990年以降の設定を見て描いたため、当時のパワードスーツとはカタチが違っている。
具体的には庵野が描いたのは「80年代にスタジオぬえ・加藤がデザインした箱っぽいデザイン」。しかし一本気さんが描いたのは「90年代以降にフィギュア化などを想定して、丸みを帯びたデザイン」。
背中のY字型の対人地雷射出機(Yラック)などのデザインが当時のものと違うのでマニアにはわかるのだ。
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・押し入れに籠もる赤井
これまた実話。当時の赤井孝美は情緒不安定で、なにかというと「叫んで逃げて隠れて」いた。
後にエヴァンゲリオンで碇シンジを見たときの岡田斗司夫の感想は「まるであのころの赤井君みたい」だった。
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・「まずはヒロインのイメージからだ」
そう言ったモユルは、紙の上に大きな丸を描いて、中央に十字を描く。
これは「昭和の時代のマンガ描き方」であり、現代のマンガ家なら、まずこういう描き方はしない。
現場で演技指導した島本和彦または一本気蛮が、石森章太郎や川崎のぼる直伝の「古典的マンガの描き方」を伝授したのである。
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・「本当にアタマのおかしい奴、そいつの名は岡田トシオや〜!」
さすがにテレビの前で「やめて〜!」と絶叫した。過去、いろんな恥ずかしい思いもしたけど、ここまで恥ずかしかったのは空前であり、できれば絶後でありますように。
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・「ここが、岡田トシオの家や〜!」
まさかの翌週またぎ。
先日、TVの楽屋で打ち合わせしたときに「第8話の岡田トシオ登場シーンはすごいですよ!」とプロデューサーさんは大笑いしていたので、きっと超絶ウルトラ恥ずかしいに違いない。
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