岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/11/08

 今日は、2019/10/20配信の岡田斗司夫ゼミ「驚異の2時間トーク!朝日新聞「悩みのるつぼ」卒業記念講演」からハイライトをお届けします。


 おお、ここまでで50分も使ってしまいました。
 実は、もう1つ例があるんですけど、それは時間があったら後で話すようにしましょう。

 さっきの回答の中で「悩みがるつぼ化しちゃう」という言葉を使いました。この人ね、ただでさえ具体的な問題を抱えているんですよ。
 「自分を好きだ」と言う男がいて、断っているんだけど、段々と面倒臭くなってきた。また、その理由を相手に言えない。いつまでも「これは隠さなきゃいけない」と思っていたら、どんどん自分自身の中に罪悪感が生まれてしまう。
 この人も、高校生くらいの時には「自分は女性を好きだ」ということに罪悪感までは持っていなかったはずなんですよ。隠しているだけで。ところが、今は罪悪感まで持たされてしまって、余計な悩みを抱えている。僕はこれを「無駄な罪悪感」と呼んでいるんですけど。

 もう、後半は、たぶん、質問カードを見ながらバーッと話すことで終わっちゃうと思うので、ここで一度、まとめておきますね。
(ホワイトボードに図説しながら)

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【画像】悩みとは、問題

 悩みというのは何かと言うと、単に問題なんですよ。
 ところが、この問題が個人の中に増えていくわけですよ。
 そして、問題というのは1つあると、それが別の問題に繋がって、こっちの問題とあっちの問題と繋がって、いっぺんにいろんな問題を考えなければいけなくなってくる。
 僕らも、1つ1つの問題だったらシンプルに回答を出せるんですけど、複数の問題を考えている時にはそうもいかなくなるんです。
 僕はこれを「脳がジャグリングしている」と言います。ジャグリングというのはお手玉のことですね。複数の問題を僕らはお手玉するように考えているんですよ。このお手玉の数が多ければ多いほど、脳に負荷が掛かるんですね。なので、本来だったらさっさと決められることに何時間も考えちゃうんですよ。
 このジャグリングのことを「悩み」と言います。
 僕らの持っている個別の問題はそんなに複雑ではないんですけど、それのジャグリング状態にハマっちゃうことが多いんです。
 鉄鋼王のカーネギーという人も、昔、ものすごく悩んでたそうなんですよ。もう本当に「俺の悩みは数限りない」と。
 今夜は本当は、奥さんとディナーに行く約束をしてて、久しぶりの約束だから家に帰りたいんだけど、会社のことや、プライベートなこと、親戚のことで、問題が山積みなんですね。
 ダメな親戚が「仕事の世話をしてくれ」とか。で、仕事の世話をしたら「トラブルがあったから、その尻拭いをしてくれ」とか。「刑務所に入っちゃったから、保釈金を払ってくれ」とか。もう本当に、いろんな悩みがあったそうです。
 そこで「もうダメだ!」と思って、「こうなったら、悩みを全部書き出してやれ!」と思って、有名な黄色い便箋というやつに鉛筆で書いていったそうなんですね。
 しかし、書く前は「500くらいあるんじゃないか?」と思っていた問題が、70個を超えたくらいで、ピタッと止まったんです。1つ1つの問題は確かにあったんですけど、書いてみたら70個しかなかったんですよ。「あ、70以上はないわ」と。
 で、その70個の問題の中に、今日の夜の間に、絶対に解決しなきゃいけない問題は1つもなかったんですね。
 つまり、彼に必要だったのは「問題が70ある」という総数を把握することだったんです。そして、それぞれ、どんな問題なのかとわかった瞬間に、便箋を引き出しにポーンと入れて、奥さんと一緒にご飯を食べに行ったそうなんですけど。
 これが、カーネギーの成功術と言われています。

 問題は「鉄鋼王のカーネギーのような成功した人でも、問題が70くらいあれば、ジャグリングがピークに達して、全く物が考えられなくなる」ということなんです。
 カーネギーというのは、実はいろんな悩みを数年間持っていたんですね。そんな中、一晩で全部書きだしてみたら、ほぼそれで……解決はしてないんですよ。気が済んじゃったんですよね。悩みではなくなった。翌日から、彼はその70個の問題を、1つずつ潰して行ったそうです。
 中には、何年間も解決できない問題もあったんですけど、それは、ただ単に今は解決できない問題か、もともと解決できない問題なんですね。
 例えば、問題の中には「人類はなぜ戦争を止められないのか?」というのもあったんですよ。それ、今晩中に結論を出さなくてもいいじゃないですか。だけど、他のものと一緒に考えていると、「うちの会社の売上が下がっている」とか「うちの会社の若い社員が段々と言うことを聞かなくなっている」とかと「なぜ、世界は平和にならないのか?」というのが、頭の中でリンクしちゃうんですね。そうすると、家に帰れなくなるんですよ。
 でも、そんなの、書き出した瞬間に「世界はなんで戦争がなくならないのか? そんなもん、今晩、考えなくていいよ」と。
 逆に言えば「俺、金あるんだから、金の力で学者を山ほど雇って、なぜ世界は平和にならないのかを考える学会を作らせればいいだけじゃん!」と考えて、カーネギーはそこに出資して学会を作る、と。
 「若者はなんでこんな愚かなのか?」ということについても、「よく考えたら、俺が金出して財団を作って大学を作って、若者の教育資金を出せばいいだけじゃん!」と、パパパっと解決して、悩みはなくなったそうです。
 問題はなくならないんです。ただ、このジャグリング状態がなくなったんですね。
 こういうお手玉状態というのを、僕らは悩みと言うんです。

・・・

 あと、休憩前のポイントなんですけど。
 今回は、恋愛っぽい悩みを2つ取り上げたんですけど、編集者に言わせると、実は「悩みのるつぼ」に来る相談の8割までが相続問題なんだそうです。
 やっぱり、新聞の読者層にバッチリですよね。みんな相続問題で悩んでる(笑)。

 その相続問題を除いたものが、僕ら4人の回答者に届くんですけど。その4人に届く問題のまた半分以上が「他人をどうにかしてほしい」という問題なんですね。
 「お母さんをどうにかしてほしい」「旦那をどうにかしてほしい」「子供をどうにかしてほしい」なんです。
 だけど、申し訳ないですけど……。
(ホワイトボードに図説しながら)

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【画像】「どうにかしてほしい」問題

 これが相談する人。僕の方は、出来るだけ元気に答えようとします。
 僕は、この相談者の人に対して何か言うことは出来るんですけど、この人が心のなかで思っているどうにかしたい悪いヤツに対しては、どうにもならないんですよ。
 相談する人は「どうにかしたい」と思っているから、僕らの言葉を聞くんですけど、僕がそこでどんな言葉を言ったとしても、どうにかしたいと思っている人には影響は全くないんですね。その人自身が「問題だ」と思って、僕のところに来れば、なんとかしようはあるんですけど。

 基本的に、悩み相談というのは……ひょっとしたら、今日の質問カードの中にも、そういう相談がいっぱい入っているかもわかんないんですけど。反省しました? 今。しましたね、今の顔は(笑)。
 基本的に、第三者をどうにかすることはほぼ不可能なんですね。
 なので、「第三者に対するあなたの対応を変えましょう」とか、もしくは「あなたの考え方を変えましょう」とか「彼に対してこういう戦略をとったらいいのではないでしょうか?」という……これはもう、サイコパス特有の戦略とかやり口を教えるやりかたなんですけど。

 とにかく、第三者をどうこうしようというのは、絶対に考えてはいけないんです。
 たまに「悩みのるつぼ」に関して他の人に話すと、「この人をどうにかしてあげられないの?」って言われることがすごく多いんですけど、原理的に不可能なんですね。
 占い師も絶対にそういう問題に対しては答えません。「あなたはどうするべきか?」しか答えてくれずに「この人をどう仕向けるのか?」という方法はないんですね。
 方法がないからこそ、心理操作とか、メンタリズムとか、悪の心理学とか、他人をコントロールするという本が爆発的に売れるんですよ。それは、そんな方法ないのに、あるように見せかけて商売するというやり口が、この世の中には蔓延しているからですね。
 それくらい、人というのは「第三者をどうにかしたい」と迷う。でも、それに関してはあんまり答えられないんです。

・・・

 まとめの最後の話にいきます。これが終わったらトイレ休憩にしますね。
 どうしようかな? なんか、あんまり本音全開で話すのも考えものですよね。マジで今「しまったな」って思っているんですよ。
 講義が始まって最初の頃、皆さんが持っていた好感的な波動が、今では、極めて薄く、本当に極めて薄くなっている(笑)。

 ええと、回答不能な相談文のパターンというのを書いてみますね。

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【画像】回答不能な相談

 まず「1. 相談がない」。これ、結構あります。いろいろ書いてあるんだけど、実は困っていることがない。最後に「これでいいんでしょうか?」って書いてあるんだけど、「これでいいんでしょうか?」なんて思ってない。これね、すごく多いです3割くらいあるかな?
 次に、さっき話した、半分くらいある相談。「2. 他人をどうにかしようとしている」。
 あと、どう言えばいいのかな? うーん、「3. 本来解けない相談」というのがあるんです。
 もう、だいぶ前、中学生くらいの男の子からの相談だったと思うんですけど、「おない年くらいの中学生くらいのアイドルみたいな女優さんを、すごい好きになってしまった」と。
 「彼女は今、中学生で女優をやってて、忙しいから恋愛をしている暇はないと思う。でも、彼女はこれからどんどん綺麗になって、いろんなイケメン俳優との出会いの場があるはずだ。早く彼女と付き合わないと、チャンスがなくなってしまう。でも、僕はあと半年で高校受験を控えているので、それまでにどうすればいいのかを教えてください」と書いてあったんですよね。
 これは、本来、無理なんですよ。
 まず、「人間というのは見える範囲の手近でしか恋愛しない」んです。まあ、中学生の男の子にこんなことを言っても無駄だから、言わなかったんですけども。
 人間の恋愛というのは実は手近で見える範囲でしかしない。だから、社内恋愛とか、クラス内恋愛とか、サークル内恋愛というのがある。
 「いや、違う! 俺はテレビでしか出会えない彼女のことが好きになったぞ!」と思ったら、「それは、あなたにとっての近場がテレビだったからだよ」と。クラスよりテレビの方が近場という人生を生きているから、テレビの中の女の子を好きになっちゃっただけ。簡単な話で、人間は近場にいる人しか好きにならないんですね。
 なので、もし、その女優さんが「自分のファンしか好きにならない」という変わった性格であれば、君にもチャンスはあるんだけど、そうじゃないだろ、と。その子はその子で、自分の職場関係という俳優さん同士の恋愛関係の中で、たぶん、彼氏を見つけるはずだ、と。だから、もしこの問題をどうにかしたかったら、あなたの近場を変えるしかないよというのが回答なんですけど。
 「高校受験を控えているから、あと半年以内に、その彼女と自分が付き合う方法を教えてくれ!」という、そんな相談を僕に持ってきた編集部も編集部なんですけど(笑)。
 こういう、本来、解けない相談というのがあるんです。
 さっき言った「人類はどうすれば戦争をやめるのか?」もそうなんですよ。「男と女はわかりあえないのでしょうか?」もそうですし、「なぜ、男は浮気するのでしょうか?」もそうなんです。それらは全て解決不能問題なんですね。

 こういった解決不能問題を持って来られると、最終的に、あらゆる新聞の回答者は「どう言って誤魔化すか?」しかないんですよ。
 「どう言ってこの人の怒りをなだめるのか?」という、まるで、シシ神様の怒りをなだめる『もののけ姫』のアシタカ君のように「どうやれば、この人の絶望している状況を解消できるのか?」を考えることになります。
 たぶん、「なんで男は浮気をやめないんですか?」と言う人は、人類の男全員に言っているのではなく、たまたま自分が出会った何人かの男の行動に怒って、それを全てまとめて言っているのであって、この怒りをプライベートな問題のところまで落としていくと、ようやっと神様の怒りが静まって、会話可能な状態になるわけです。
 なので、本来、解けない悩みというのを、その人の本音の部分までダウンサイズしないと、なかなか難しい部分があるんです。

 まあ、悩みの解き方、るつぼの作り方というのは、だいたいこんなもんなんです。
 今、35分くらいですね。女性が半分だから、50分まで休憩して、その後、皆さんに書いてもらったカードを見ながら、ちょっと答えていきたいと思います。
 どうもお疲れさまでした。
(本編中断)


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