岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/10/21

 今日は、2019/10/06配信の岡田斗司夫ゼミ「味を超越した“文化としてのハンバーガー論”」からハイライトをお届けします。


 じゃあ、最初はこいつの話からしましょう。
(机の上のヤマトの模型を見せる)

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【画像】ヤマト模型

 おっ、いいね。ご機嫌。「1つの砲塔を動かすと、全部が連動する」というこの感じですね。
 今日はヤマト記念日ということで、『宇宙戦艦ヤマト』の初放送が1974年の10月6日なので、今日でちょうど45周年なんですね。
 『ヤマト』については、そのうちゆっくり話したいと思ってるんで、今日はさわりだけ。『宇宙戦艦ヤマト』のことを少しだけ話したいと思います。
 やっぱね、『ヤマト』のデザインなんですけど。デザインのすごさは松本零士の功績ですよね。
(模型を見せながら)

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【画像】ヤマト第3艦橋

 この「第3艦橋」と言われている部分の説得力というのかな? これ1つあるおかげで……なんだかんだ言って、宇宙戦艦ヤマトって戦艦大和なんですよ、やっぱり。下半分が赤く塗ってあって、上と下がキッパリあって「これのどこが宇宙戦艦なんだ!?」って思うんですけど。
 ところが、この一番下に第3艦橋と言われているブリッジ(指揮所)が1つついているだけで、なんか、これ、この形だったら着陸できないんですよね。なので「ずっと宇宙にいる」という感じが出てて、なかなか見事なデザインだと僕は思ってます。
 本当にね、好きなデザインなんですよ。

 その他にも……これを出すのを忘れてた。
(パネルを見せる)

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【画像】『宇宙戦艦ヤマト』タイトル

 初っ端から、ちゃんとタイトルのフリップを出しておけばよかったな。この「宇宙戦艦ヤマト」というロゴも好きなんですけどね。まあ、その話はそのうちするので、置いといて。

 あとは、『宇宙戦艦ヤマト』のメインブリッジ、第1艦橋の内部のレイアウトですよね。
(パネルを見せる)

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【画像】ヤマト第1艦橋 ©東北新社

 この「上に大きいモニター、スクリーンがあって、人がいっぱいいて、艦長が1段高いところにいる」っていうデザイン。
 やっぱり、このヤマトのブリッジを見ると「『機動戦士ガンダム』に出てくるホワイトベースのブリッジというのは、これのアンチだ」というのがよくわかります。
 ヤマトのブリッジのデザインが、もう、あまりにもよく出来過ぎていて、カッコ良過ぎるので、どうにか違うものを見つけよう、違う雰囲気を見つけようとしたと思うんですけど。これが出来過ぎていたために、なかなか違うものを見つけにくい。その結果、ホワイトベースは、これの反対を選んだデザインになっています。
 この辺は、まあ、そのうち宇宙船のデザイン講座みたいなことをやりたいと思いますので、そっちの方で話してみようと思います。

 あとは、まあ、イメージのすごさですね。
(パネルを見せる)

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【画像】第1話ラストシーン ©東北新社

 これは『宇宙戦艦ヤマト』第1話のラストシーンですね。
 九州の沖に沈んだ戦艦大和。しかし、この時代には、地球の海はガミラスの放射能爆弾の攻撃によって、真っ赤に干上がっている。そんな中、夕日が沈む。
 古代進と島大介の2人は「こんなところにガミラスはいったい何を偵察に来たんだろう?」と見に来て、この戦艦大和の残骸を見つけ、愕然とするというラストシーンなんですけど。
 ものすごいカッコいいですよね? 僕、このカットがあまりにもカッコよかったので、『宇宙戦艦ヤマト』の再放送の時、テレビの前に35ミリの一眼レフを構えて写真を撮って、それを自分で引き伸ばしたものを、15年くらい、自分の部屋の一番良いところに飾ってました。それくらい、僕が好きなシーンです。
 やっぱり、この滅亡感。地球が滅亡して「もう人類はダメなんじゃないか?」という感じを出しつつも美しいシーンというのは、難しいと思うんですけど。それを可能にしたという名シーンですね。
 もう1つ、「地球が滅亡しているのに~」という意味では、同じく第1話のこのカット。
(パネルを見せる)

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【画像】真っ赤な地球 ©東北新社

 沖田艦長が「ダメだ。もう我々は勝てない」と言っている時に、この真っ赤になった地球が映るんですね。
 これ、「地球がもう滅びつつある」という状況をたった1枚の絵で表現しているんですよね。これ以上のビジュアルというのは、僕、世界の映画史上に存在しないと思っているんですけど。
 「地球が滅びている」という状況を説明するためには、やっぱり、何段階かの絵を見せないと絶対に表せないんですけど。これをポンと1枚出して、それを説明している。この真っ赤な地球に雲が適当にかかっているところで「ああ、巨大な惑星なんだな」と思わせて、そこに砂漠化した日本列島みたいなものを見せることによって「ああ、これが地球なんだ……」という、絶望感を伝えるというのが、やっぱり、すごい上手いと思います。
 本当に、世界の映画史上、これ以上のビジュアルというのはないと思うんですけど。

・・・

 まあ、ここからは「僕の好きな『宇宙戦艦ヤマト』のオープニングが、いかに素晴らしいか」という話なんですけども。
 もう本当に、今日は『宇宙戦艦ヤマト』の話がしたいんです。

 映像のすごさで言うと……まず、歌から始めますね。この主題歌って、前奏が長いんですよ。
 「チャーン、チャッチャ、チャーン、チャッチャ、チャッチャチャーン、チャカチャ、チャチャチャチャ、チャーン、チャカチャ、チャーン♪」って。まだ前奏が終わらないですよ。「チャーン、チャッチャ、チャーン、チャン、チャーン、チャッチャ、チャーン、チャン♪」まだ始まらなくて「チャカチャ、チャカチャ、チャカチャチャーン、チャチャン♪」と来て、いきなり「さらば~♪」って始まるんです。
 この前奏の長いフリの後、「さらば、地球よ、旅立つ船は、宇宙戦艦~♪」って。またここで溜めるんですよ。「宇宙戦艦~(パパパパー)♪」という風にトランペットが入って、で、「ヤー、マー、トー♪」と。
 この「ヤー、マー、トー♪」の3文字のところだけ、男性コーラスが入るんです。
 で、最初、佐々木功のボーカルで始まって、男性コーラスが入るから、てっきり「これは男臭い歌かな?」と思ったら、次の展開部「宇宙の彼方、イスカンダルへ~♪」というところで、佐々木功の歌声に、今度は女性スキャットが重なるんです。
 女性スキャットが「宇宙の彼方、イスカンダルへ、運命背負い~♪」ってほぼ同じメロディラインのところに「アーッ、アーッ、アーッ♪」って、上がりながら入ってくるから、なんかこうゾクゾクするんですよね。

 「宇宙の彼方~♪」と歌っている時に、画面に映るのは、ヤマトのブリッジ。
(パネルを見せる)

 窓から見えるのは、沖田艦長と、古代、島、森雪の4人です。
 そこからカメラが下がって行くと……これ、ごめんなさい。画像の順番が間違ってました。真ん中のが一番目で、上のが2番目ですね。
(パネルを見せる)

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【画像】艦橋に立つ4人 ©東北新社

 カメラが下がって行くと……まだ何が映っているのかわからないですね。実はこれ、ヤマトの艦橋構造物が映ってるんです。
(パネルを見せる)

  で、「宇宙の彼方、イスカンダルへ、運命背負い、今飛び立つ~♪」まで行って、ようやっとヤマトの全貌が見えてくる。

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【画像】ヤマトオープニング ©東北新社

 この「運命背負い~♪」の時には、ヤマトの主砲が目の前を通り過ぎて行って、目の前が少し混乱するような映像になるんですけど。
 しかし、「今飛び立つ~♪」に入ったところで、やっと全身が見えたと思ったら、今度はこの船体が右へ傾くんですね。「えーっ?」って思うんですよ。

 この部分の作画、でも、本当にすごいんですよ。「宇宙の彼方、イスカンダルへ~♪」で、この艦橋の艦長席のドアップからカメラが下へ降りてきて……メチャクチャ複雑な形を描いているわけですよ。
 主砲の砲塔の間をカメラが通って……この時、砲塔も同時に動いているんです。船の前の方までカメラが行って「今飛び立つ~♪」で、全身が見えたと思ったら、この船体が右へゆっくりと傾き始める。

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【画像】ヤマトオープニング ©東北新社

 そして「必ず、ここへ~♪」の歌詞になったら、こいつが加速し始めるんですね。
 加速する直前に、このヤマトという宇宙船は、船体を右へ傾けている。つまり、これで「右旋回しつつあるところだ」というのがわかるんですよ。
 これをですね、その1カットで見せているんです。

 この模型でいうと……すみません、わかりにくくて。
(模型を使って解説する)

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【画像】ヤマト模型

 最初は、こういう状態になっているわけですね。この位置から始まって、カメラがゆっくりとここを通って、動き続けるこの第2砲塔の砲身の間を通って、前へ行って、ここまで来ると、ゆっくりと船体から右へ傾いていて、加速が始まるという、かなり複雑なことをやっているんです。
 だけど、あんまり、そこら辺を「この時代に、こんな難しいものを手書きで動かすことのすごさ」というのを、あんまり見てくれる人がいないんですけど。

 で、「必ずここへ~♪」の部分です。
 さっきの「運命背負い、今飛び立つ~♪」という歌詞の時には、画面に映っているものと歌詞とが合ってるんですよ。
 でも、「必ずここへ~♪」って時は「あれ? 歌詞と絵が合ってないぞ」と思うんですけど。そうすると、ここで、さっきのブリッジの絵が映るんですね。
(パネルを見せる)

 ここは「必ずここへ、帰ってくると、手を振る人に、笑顔で応え~♪」という歌詞なんですよ。
 その歌詞とこのシーンの何が合っているかというと、ここで映るブリッジには徳川機関長という人がいて、ちゃんと手を挙げて、挨拶してくれてるんですよ。
 つまり、「必ずここへ、帰ってくると、手を振る人に~♪」という、人間ドラマっぽい、湿っぽい歌詞の時には、ちゃんと人間のいる空間を映すというような配慮をしているんです。
 「宇宙の彼方、イスカンダルへ~♪」という時は、宇宙空間を進むヤマトを映し、「帰ってくると、手を振る人に、笑顔で応え~♪」のところでは徳川機関長を映して、焦らすわけですよ。
 そして「笑顔で応え~♪」の「え~♪」と盛り上がるところで、ヤマトが半分土の中に埋まっているところからドーンと上がってくるという盛り上がりを見せるわけですね。

 この「笑顔で応え~♪」というところで「ウーッ、ワーッ♪」という男性コーラスが入るんです。
 まあ、こうやって歌を無理矢理、言葉で説明するのは難しいんですけど。「笑顔でこた~♪」の辺まで、男性の声で「ウーッ♪」って入ってて「応え~♪」で上がったところで「ワーッ♪」って。これ、あとでYouTubeでオープニングを探して見てください。
 男性女性のコーラスの切り替えも、メチャクチャ上手いんですよ。つまり「どの部分で男性なのか? どの部分で女性なのか?」という使い分けの際に、勇気が出そうな歌詞は男性が、そして、宇宙空間を自分達だけで旅しなきゃいけないという不安さが出ている歌詞の時には、女性の「アーッ、アーッ、アーッ、アーッ♪」というコーラスが入るという、この上手さがすごいですよね。

 で、最後「銀河を離れ、イスカンダルへ~♪」という時は、ヤマトは、もう後ろ姿が見えているだけ。ヤマトのお尻と星空が映っていて、ヤマトが段々段々と小さくなるだけなんですね。
 ここでは、また、女性コーラスで「アーッ、アーッ、アーッ、アーッ♪」ってかかってて、ちょっと寂しい感じを出しています。
 そして「はるばるのぞむ~♪」という、「おっ盛り上がってるぞ! サビの最後だぞ!」という感じで「宇宙戦艦~♪」まで行ったら、最後「ヤー、マートー♪というところだけ、佐々木功のボーカルに、また男性コーラスの「ヤー、マー、トー♪」というのがついていて。
 「わあっ、勇ましくなった!」と思ったら、「ヤー、マー、トー♪」の「ト」の音と同時に、女性の「アーッ、アーッ、アーッ、アーッ♪」というスキャットがエンドレスでかかって、また、なんだか寂しい切ない感じに持って行く。

 もう本当にね、曲も名曲ですし、この絵の合わせ方もあまりに上手くて。
 『宇宙戦艦ヤマト』って、自衛隊とかがよく演奏してくれたり、あと「アニメソングの傑作を見せます!」みたいなテレビ番組で、佐々木功さん本人が出てきて歌ったりするんですけど。
 やっぱり、このテレビ尺の、コーラスとかが完全に入ってるやつが一番良いんですよ。
 あの、やっぱりね、生のボーカルとか、オケをオーケストラにしたバージョンってね、このスキャットの声が小さすぎたり、男性のコーラスのタイミングが変わってたりするから、違うんですよ。
 そうじゃなくて、一番最初のテレビ尺の『宇宙戦艦ヤマト』が、男性コーラスの入る場所、女性コーラスの入る場所、ボリュームのバランスまで、全て完璧なので「皆さんは是非こっちを見てください」という、60男からの心からの忠告でした。

 僕は、テレビアニメの歴史上、一番優れている最高だと思う作品は『機動戦士ガンダム』なんですよ。
 もう本当に、テレビアニメの歴史上、一番すごいと思う作品は『機動戦士ガンダム』だと思っているし、その次は『ガンバの冒険』かなとか、色々思うんですけども。
 ただ「一番好きなアニメは?」と聞かれたら、もう、1も2もなく「『宇宙戦艦ヤマト』です!」って、僕は答えるんですね。
 テレビ版のこの『宇宙戦艦ヤマト』が、あらゆるアニメの中で、僕は一番好きなんですよ。「好き」という意味で。
 なので、皆さんにも『ヤマト』を味わっていただきたいなと思います。ちょっと、そんなふうに語ってみました。

 『ヤマト』については、もう少し語りたいので、申し訳ないけど後半で語ります。よろしくお願いします。


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