岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/09/30
今日は、2019/09/15配信の岡田斗司夫ゼミ「『Dr.STONE』の元ネタ『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』徹底解説!」からハイライトをお届けします。
じゃあ、今週の『なつぞら』から行きましょうか。
『なつぞら』も、いよいよあと2週間ですね。
月曜日、マコさんのセリフで「視聴率が悪ければ打ち切られることもあるけど~」というのが出て、いよいよ伏線が張られて来たと思います。
というのも、あのシーンにこのセリフを入れる理由が全くないんですね。なので、ここから「視聴率が伸びないという苦しみ」とか、そういう展開になってくると思うんですけど。
そして、やはり出ました。『カルピスまんが劇場』。
(パネルを見せる)
【画像】カルピスまんが劇場 ©NHK
これが元ネタの『カルピスまんが劇場』のロゴで、これが『なつぞら』に出てくる『ミルコスまんが広場』のロゴです。ミルコスの方は、文字が縦書きになってます。
このミルコスというのは何なのか? なぜ「ミル」という文字が入っているのか? 実は、当時売られていたカルピスの競合商品にミルトンというのがあったんですね。
(パネルを見せる)
【画像】ミルトンとカルピス
こちらがカルピスです。これがミルトンです。大阪の前田産業という会社が、カルピスと同じ頃に出してきた商品で、カルピスより安かったんですよ。
関西ローカルでテレビCMを流していたので、僕もCMソングを覚えているんですけど「ミルトン、バビボン、ミルトン、バビボン、ミールトン、バビボン~♪」という、なぜか男性の太いコーラスが時々入る変なCMだったんですけど。
このミルトンは、2014年に製造中止になりました。前田産業の代表作はチューペットなんですけど。今はこういう乳酸菌飲料をやってなくて、小麦系の食品を扱う会社になっています。
このミルトンとカルピスを混ぜたので、ミルコスという、なんかちょっと不思議な名前になったんだと思います。
他にも、いよいよ、『なつぞら』の中で『大草原の少女ソラ』のキャラクターデザインが決まりました。
(パネルを見せる)
【画像】ソラのデザイン ©NHK
こんなデザインに決定したんですけども。髪型がおさげ髪になっているのは、実は、『アルプスの少女』の初期案からの引用なんですよ。
(本を見せる)
【画像】『ハイジが生まれた日』
これは、『ハイジが生まれた日』(ちばかおり著 岩波書店 2017年)っていう、『ハイジ』について書かれたすごい良い本なんですけど。主人公のハイジも、一番最初はおさげ髪だったのが、段々と変わって来て、最終的にショートカットになったんですね。
この中に出てくる、パイロットフィルム版のハイジがこれなんですけど。
(本の中を見せる)
【画像】パイロットフィルム版ハイジ
これなんかは、森康二さんがキャラクターデザインしているハイジなんですね。おさげ髪になっています。
森康二さんというのは、ドラマの中でいうところの仲さんなんですよ。森さんがキャラクターデザインしたハイジが、実際はパイロットフィルムで動いていたわけなんですけど。それを小田部羊一さんがショートカットに変更しました。
『なつぞら』では、こういったアニメ界のレジェンドとか、実際にあった面白い話を、全て奥原なつという個人、1人の天才の女の子の手柄にしてしまうというところがあって悲しいんですよ。
普通の人が見る分には、ドラマとしては構わないんですけど。なんか、アメリカ人が「江戸時代の歴史はSAMURAIとNINJAが作った」と思い込んでいると知った時に、日本人としてちょっと歯がゆく思うのと同じように、アニメファンとしては、なんか「全部1人の女性の天才性で作られた」みたいに言われると「うーん……ドラマとしては面白いんだけどなぁ」とか、ちょっと思います。
あと、事実とあまりにも違う部分として。今話した部分とは、また別の部分に、ちょっと文句があってですね。
奥原一家、つまり、なつの一家ではアニメ初放映の時に娘と一緒にテレビを見ていて、それぞれ他の登場人物の家族もみんな一緒に見てて、見終わった後で「面白かった!」と言うシーンがあるんですけど。
「違うだろ!」と。実際の宮崎駿の家では、宮崎駿の息子の宮崎吾朗くんは『宇宙戦艦ヤマト』が見たくてチャンネルを変えようとしたんだけど、宮崎駿に怒られて、正座して『ハイジ』を見させられたという歴史があるんですよ。
なので「違うだろ! 宮崎駿は息子に正座して見せただろ!」って(笑)。
それに対して、手塚治虫はというと、会社の命運をかけて作ったアニメ『W3(ワンダースリー)』の初放映の時、息子の手塚眞くんは、裏番組の『ウルトラQ』が見たくて、そっちを見ようとしてしまったんですね。
それにハッと気がついた手塚治虫の奥さんは「ダメでしょ! パパのマンガを見なさい!」と言ったんですけど。
それを聞いた手塚治虫は、普段、滅多に怒らないのに、その日ばかりは珍しく奥さんを怒って「そんなことを言ってはいけない! 子供の見たいものを見せなさい!」と言いながら、楽しみにしていた『W3』の初放映を見ることもなく、すごすごと仕事場の方へ帰っていったというエピソードがあって。
いや、あの、なんだろう。「クリエイターとして」というよりは「人間としては、手塚治虫の方がずっと立派だな」と思うんですけど。
その辺の歴史も捻じ曲げられていて、どうもいかんと思いますね(笑)。
さて、ここまでの『なつぞら』に関する岡田斗司夫の予想の勝敗リストを作ってみました。
(パネルを見せる)
【画像】『なつぞら』予想勝敗リスト
まず、「最後に作るアニメの元ネタは『アルプスの少女ハイジ』」。これはもう、大当たりですね。
そのアニメのタイトルを、僕は「『十勝の少女そら』になる」と思ったんですけど、『大草原の少女ソラ』になってしまった。これはまあ、半分だけ当たったということにさせてください。
次に「スタッフ総出で十勝のロケハンやるだろう」と予想したけど、これは当たりました。
「アニメとオープニングの繋がり」についても、これは土曜日の回で、ついに、アニメが始まったら、そのまま『なつぞら』のアニメーションで作っているオープニングに繋がったので、これも当たりました。
問題はここからです。「妹は死んでる、またはデヴィ夫人説」は、もうダメですね。まず、生きてたということと、あれはどう見てもデヴィ夫人じゃねえやと思ったので、デヴィ夫人説は諦めました。
しかし、「悪役は『宇宙戦艦ヤマト』」は、まだ5割くらい可能性があると思います。実際は違うんですけど「『宇宙戦艦ヤマト』のおかげで、視聴率が伸びなくて打ち切りの危機」というのは、これはまだあると僕は思っています。
「のんが悪役プロデューサーとして登場」については、これ、当たる確率10%と書いたんですけど、「声優も違ったし、のんの出演はねえな」と、ちょっと思ってます。
あと、最後。「妹または妹の娘が打ち切りを助ける」というのは、これはね、あると思ってるんですよ。まあ、打ち切りを助けるのは、今の流れからいうと妹というよりも、妹に説得された旦那かもわからないなと思ってるんですけども。
というのは、1社提供のミルコスには「北海道の創業者」という設定があるので、他の家族が「あんな視聴率の悪い番組を続けてもしょうがない」と言ってるのに対して「俺にも開拓者魂が~!」って、創業者か、創業者の息子の妹の旦那あたりが言うんじゃないかと思います。
十勝の農協のくだりで「僕にも開拓者魂があるんです!」っていうセリフがあったのは、ラストのミルコスの偉いさんが「俺も北海道で生まれた人間だ! だから開拓者魂があるんだ!」と言って、そこで伏線回収にするためのセリフではなかったのかなと思ってるんですけど。
まあ、泣いても笑っても、あと2週間しかありません。
『なつぞら』は、多少の歴史改変があろうと応援してますので、頑張ってください。
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