岡田斗司夫ゼミからのお知らせ

岡田斗司夫の毎日ブロマガ「『シン・ゴジラ』の面白さを「四層構造」で語る」

2019/09/02 07:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/09/02

 今日は、2019/08/18配信の岡田斗司夫ゼミ「終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」全編無料公開!」からハイライトをお届けします。


ゴジラと核兵器『シン・ゴジラ』解説の見どころ

nico_190818_00417.jpg【画像】スタジオから

 じゃあ、今日の放送の説明に入ります。
 今回、再放送するのは、2016年8月7日に放送した「ゴジラと核兵器」という回です。
 今回は、もう、全編無料枠にして、これまでは有料動画として封印していた後半部分を、全部公開しちゃおうと思います。
 見て欲しいのは、やっぱり、この後半の限定枠に入ってからなんですね。

 無料部分から限定部分まで一度に流すので、全部で98分。100分近くあるので、すみませんが、頑張って見てください。
 動画の中で僕が話す「なぜ、アメリカは日本に原爆を落としたのか?」という後半の話とか、「なぜ『シン・ゴジラ』の中に核兵器が登場したのか?」という話は、これは2016年の8月7日に放送したニコ生ですから、『シン・ゴジラ』という映画を見て、本当に2週間くらいの間に頭の中で組み替えて喋ったものなんです。そういった僕の考え方というのがわかると思います。
 反戦とか、核兵器廃絶だけを叫んでも届かないような、『シン・ゴジラ』という映画の特殊性。特に「俳優の演技や、その画面情報をどう構成しているのか?」という部分から……核兵器を扱った映画っていうのは、すぐに反戦映画とかそういうふうに解釈されちゃうんですけど、そっちの方から、ゆっくり見てもらいたいと思いますので、100分の動画をご覧ください。
 普段、岡田斗司夫ゼミというものを、いつも無料で見てる皆さんには、「いったい、有料の会員限定放送部分では、どういうことを語っているのか?」というサンプルになると思いますので、体験してみてください。

 というわけで、これから、3年前の動画を再公開します。
 「これ、もう見たよ」と言う方も、終戦記念ということで……まあ、ちょっと日にちはズレちゃいましたけど。そういう意味を考えながら、もう一度、見てくれれば嬉しいなと思います。
 無料から限定まで一気に流すので100分もあるんですけど、終わったら、また、もう少しだけ解説します。

 あと、『シン・ウルトラマン』に関する現時点での予想というのも、最後にちょっと話します。
 まだ情報が少ないんですけど。まあ、それでも「こうだと思うよ」という話があるので、聞いていただきたいと思います。
 それでは、2016年8月7日の放送「『シン・ゴジラ』のテーマを掘り下げる」という回です。
 再放送の配信、よろしくお願いします。

日本映画の長所は「役者の顔が面白い」ところ

nico_190818_01206.jpg【画像】DMMラウンジのサロンにて

 こんばんは、岡田斗司夫です。一週間のごぶさたでした。
 『岡田斗司夫ゼミ』ですね。
 今日は8月7日ですね。もうフェイスブックとかで予告はしてるんですけども、前回に引き続き、何故か今回も。やっぱりあの後でいろいろと思ったことがあって、「これは語らなければ、いられない」ということで。
 元々は原爆特集というのかな。昨日が広島に原爆が落ちた日だったので、本当は原子爆弾の話をしようかと思ってたんですけども。まるまる90分、そんな話をするというのも、ちょっと流れ的にキツイかなと思ったんで。
 『ゴジラ』を語りながら、後半のほうで限定に入ってからということになると思うんですけども、ちょっと原爆の話をしたいと思います。
 というのも、『シン・ゴジラ』の中で、セリフ的にも結構いろんなことを考えさせるものが入っていたからですね。前回は前半の一般放送が『ゴジラ』を見てない人でも大丈夫な、ネタバレがない『シン・ゴジラ』でした。そして後半が『ゴジラ』を見た人向けの、ネタバレがありますなんですけども。
 今回は、見た人もあんまり考えていない。というか、わりとスッと見逃している部分をやろうと思うんで。それはネタバレになるといっても、許されるのではないかなと思って。ハッキリぶっちゃけて言うと、今回は前回で見たであろうという方を対象にしてやろうと思いますんで。今回は、いちいち「はい。ここからネタバレです」とやらずに、たぶん、90分すべてネタバレです(笑)。
 「明日、見に行くところだ」とか「余計な情報を入れないでおこう」という人は、こんなことは、あんまり言いたくないんですけど、今すぐ視聴を中止していただいたほうがいいと思います。よろしくお願いします。
 よく「面白いですか?」と、聞かれるんですよね。
 昨日も『正義のミカタ』って大阪のローカルの情報番組で。ローカル番組といっても、関東以外は日本全国で全部やってるんで、ローカルでもないんですけど。
 そこに行って『シン・ゴジラ』を見てたのが、高橋先生という。元官僚の安倍総理の家庭教師だったという高橋先生と、あと東野さんは『ゴジラ』を見に行ってたんですね。「見るつもりはなかったんですけどね。『エヴァ』が好きですから」っていうだけの理由で見に行かれて、この二人には凄く評判がいいと。
 そのほかの人を見たら、『ナウシカ』とかを熱く語る宮崎てっちゃんですら、まだ見てない。藤井先生もまだ見ていないということで、「なんていうことだ」と。あんなにアニメとかを語りたがる宮崎哲弥が、まだ見ていないし。
 あと僕は、本当を言えば首相官邸のやりとりとかの正解探しをしたかったんですね。藤井聡先生にぜひ見て欲しかったんですけども、藤井先生がまだ見てなかった。「とりあえず、次回までに見ておいてください」ということで、見るのをお願いしてですね。
 それで高橋さんが前の安倍政権ですね。今の安倍政権じゃなくて、前の安倍政権では政府のメインメンバーにいたので「首相の官邸はどうだったんですか?」って聞いたら、「いやぁ、あれはすごい取材をしてるよ」と。「意地悪な言い方をすれば、ちょっと違うんだけどね」って。「ちょっと違うんだけど、首相の部屋を再現してるのにビックリした」
 何でかというと、首相の執務室というのは、原則的に撮影が禁止で、撮影が許されてるときっていうのは、要人が来て話しているときとかで、決められたアングルしか写真が撮れない。それはテロ対策とかで、部屋の見取り図とかを絶対にわからないようにしてるんだけども、もう『シン・ゴジラ』を見たらほぼ合ってると。
 俺はそれを聞けただけでも「嬉しい! 嬉しい!」ってなっちゃったんですけど。
 まだね、この二人以外は、スタッフとかもほぼ全員見てない状態だったんですね。それで「何が面白いのか?」と聞かれたんで、僕なりに面白いポイントというか、たぶん、それは普通の人と見方が違うんですけども。
 やっぱり『シン・ゴジラ』の面白さと言うのは、顔が面白いんですよ。
 これは僕は、邦画の長所だと思ってる。
 日本映画の長所だと思ってるんですけども、とにかくこの役者さんの層が厚いんですね。
 役者さんの層が厚いというのは、韓国や中国の映画だったら、あんなに面白い顔の中年の男が、いっぱい出せないんですよね。なんだかんだ言っても、イケメンばっかりで。イケメンか、極端に太ったヤツか、極端に痩せたヤツか、極端に背の高いヤツは、中国映画や韓国映画にはいっぱいいるんですけども、メインがやっぱりイケメンなんです。
 日本は大部屋時代でもないんでしょうけども、とにかく面白い顔の役者が多い。
 これ赤井孝美くんが昔から言ってたんですけども、邦画の魅力は顔ですよと。とにかくどんな映画見てもおもろい顔のおっさんが、あんなに出てくる映画は世界中探してもないですと。
 というのは海外の映画では、人種が色々あるもんだから彫りも深いもんだから、顔なんか違って当たり前なんですね。ところが日本人っていうのは、外国の人から見たらほぼ一定の、平面的な無個性の顔をしているように見えて、実は日本人から見たら、すごい多様な顔になっていると。
 その多様な顔がいっぱい見れるということで『ゴジラ』のパンフレット見ても、なんかダッサい背広着た七三分けのおっさんがずらりと並んでるんですけど、ひとりひとりの顔が全部面白いっていうですね、なかなかいい感じの映画でした。

テロップが情報のポトラッチに

 で、あとテロップが面白い。
 『ゴジラ』って、見た人はおわかりの通り、テロップが出てくるんですよね。
 特に主人公の、例えば、役職がですね、矢口って言うんですけど。矢口の役職が変わるたびに、「お前もなんとかに任命された」って言った瞬間に下にテロップが、新しいテロップが出てくるんですけど。
 このテロップが読む暇もなく切り替わるんですね。
 で、これ僕は情報のポトラッチって呼んでるんですけど。
 ポトラッチっていうのはアメリカの原住民の、遊びっていうこともないんですけど。
 戦争の仕方なんですよね。普通に戦争っていうのは、相手の資産を削るんですけども、アメリカ原住民のポトラッチっていうのは自分たちの資産を削るんですよね。つまり、自分たちが大切にしているものをどんどんどんどん焼き捨てたり、例えば飼っている豚を殺したりして、ほら、こんなことをしても俺は平気なんだぞっていうのを見せつけるのがポトラッチなんですけども。
 庵野映画の、字幕のすごさっていうのはもちろん岡本喜八の日本のいちばん長い日とか、そういうところの影響あるんでしょうけども、それよりも何よりも、どんどん情報を出していって、これ別に見なくても構いませんよ。でも後で調べてみたらちゃんと書いてますからね。ってどんどんどんどん溢れるこの情報の無駄遣いのポトラッチな感じが面白さのひとつじゃないかなと思います。

アップが作る役者の緊張感

 あと、アップの多さですか。
 これ最初に言った、顔の面白さとあいまってるんですけども、セリフを言う、例えば、柄本明とかそういうキャラクターが喋るたびに、めちゃくちゃ寄るんですよね。これは役者さんに緊張を強いるんですけども、逆に言えば無表情でも様になるんですね。
 みんな中途半端なフレームで撮っちゃうから演技しなきゃいけないと思って不要なことやるんですけども。
 日本人って案外無表情なんですよ。
 で、これをドラマだから映画だからと言って、無理やりな演技付けをすることにこれまでの、映画の僕、演技の失敗があったと思うんですね。前回の僕、ニコ生でちょっと言い過ぎたかなと思っているのがですね、日本人の映画の演技は下手なんです。これもう僕はそう思っています。ここはもう本当に邦画の映画に出てくる俳優の大部分は下手くそだと思ってるんですけども。
 と、同時に、では俳優が下手くそなのかってそうじゃないんですよ。映画に出てる時が下手くそなんですね。同じ俳優を舞台に連れて行って、舞台やらせるとみんなめちゃくちゃ上手いんですよ。
 これ何かって言うと、ちょっと後半で話す演出論にもかかってくるんですけども、まず言っとかなきゃいけないのが、不用意なフレームで撮ってるからなんですね。
 あともうひとつ、日本人が元々無表情で話す民族だっていうことを、見逃してるんですよ。僕らの生活の中で、実は表情をあまり変えずに喋ることが多いんですよ。それは表情がすごく変わって手振り身振りが多いハリウッド映画とは根本的に違うんですね。
 それを無理やり動的に見せよう、つまりダイナミックに恋愛ドラマとか何とか見せようとして、不自然な演出で演技を付けさせてるあまり、演技力が空回りしてるものが多いと僕は思っているんですね。
 なので、アップが多くて画面の緊張感が迫るっていうことと、あと他のフレームに人が映らない。
 例えば、政府の官僚が喋る時に、両隣のやつがもし映っちゃったら、そいつらも演技しなきゃいけないんですよね。でもそれをボーンというアップを撮ることによって、演技しないことによる画面の緊張感。あと余計なものがないっていう、そういう効果が生まれてるんだなっていうのがあります。
 この三つ、テロップがすごいポトラッチ、情報の無駄遣いで面白いっていうのとあと、役者の顔自体が演技者の層の厚みで面白いということ。
 最後は、フレーム、とりあえず喋る時は思い切って寄るっていうあの緊張感と、日本人の無表情で喋るっていうのが案外上手くできているんですね。
 なので、見てる人が読まなきゃいけないんですね。こいつ何考えて言ってるんだろうって。
 「首相、決断を」って言ってる人とか、あと、後半のほうででっかくなったゴジラにいよいよ攻撃する時に、本当に現場にもう避難民で逃げ残りがいないんだろうねっていうふうに首相が確認するんですね。そうすると担当の人が、私は現場の判断を信じますと、現場の判断を信じるのみです、って言うんです。
 これはある種、責任の回避の言葉だとも言えるし、それをもう一回俺に振り直すっていうのは首相の責任逃れなんだよ。お前そんなこと言える立場じゃねえだろっていうふうに返してるとも言えるんです。
 でも、そこで良い者、悪者っていうのを作らずに、もう見てる人にボールを投げるがごとく、ちょっと心配した顔と無表情で、一見忠実そうに見えるおじさんとのやり取りっていうのを、解説なしにトンと見せることによって、見る側が「あ、これ頭絞って俺が解釈しなきゃいけないじゃないか」っていうふうに思わせる、この見た時の知能指数の上がり方ですか。
 そのへんがですね、すごく面白いところだと思います。

四つの層でできた『シン・ゴジラ』

nico_190818_01658.jpg【画像】DMMラウンジのサロンにて

 まあ、その他の面白さはですね、このネットの、『ゴジラ』の評論に対する盛り上がり方ですね。色んな人がやっと見たと言いながら、みんなでエクスキューズを付けながら、つまり、「いや、と言うけど」とか「と、言われてるけど、何とかみたいだけど」って言いながら、全員がややむきになって語ってる口調が、楽しいなと思います。
 映画自体は、何層にもなってるんですよね。
 第一層、第二層、第三層、第四層って仮に呼びますけども。
 第一層は見える通り、映画で見える通りの『ゴジラ』の面白さなんですけども。
 第一層は、ポリティカル・フィクションって言うんですかね。
 怪獣が出てくる政治ドラマみたいなもんです。
 つまり、怪獣が本当に出てきたら、行政はどういうふうに対応するんだろうというようなものがすごく面白く描かれているという第一層があります。
 第二層としては、これネット評論の中でわりと多いんですけども、あのゴジラというのは原子力発電所、もっと言えば、福島原発事故などのメタファーである、そういうふうなものの見方ですね。
 つまり、我々日本人にとって逃れられない問題として、原発っていうのがあるんだっていうようなことを、あの『ゴジラ』っていう映画は言おうとしてる。これがちょっと気が利いた人が語る原発のメタファーとしてのゴジラですね。
 第三層の見方。
 それよりももうちょっと穿って入っていくと、どういうふうに見えるのかって言うと。原爆体験というものを忘れようとしているんですね、8月6日に広島、その次に長崎に落とされた原爆っていうのを忘れて、繁栄っていうのをいつの間にかしていて、そういうふうな過去もあったよね、程度にしている日本人っていうのに対する問い掛けだっていうふうに解釈する人もいます。これ僕は第三層って言うんですけども。
 第四層で、ではなんで庵野秀明はこの映画を撮ったのか。
 『シン・ゴジラ』のパンフレット今売り切れになってるそうなんですけど、見た人はわかる通り、実は『シン・ゴジラ』のパンフレットで監督庵野秀明のお言葉が、最初のほうに載ってるんです。その最初のほうに載っている『シン・ゴジラ』の普通「映画でここを見てください」とか「ここ、ありがとうございました」とか書くべきものを半分が、『ヱヴァンゲリヲン』に対する言い訳なんですよね。
 俺はこんなにつらくて『ヱヴァンゲリヲン』を作れませんでした。後半のほうが、まあこれからちゃんと頑張って『ヱヴァ』作りますよって言ってるっていうですね。
 実はその文章の半分ぐらいが『ヱヴァンゲリヲン』に関してなんですよ。
 これをですね、本人の焦りっていうこともできるんですけども。パンフレット、公式パンフレットの文章っていうのは実はスタッフの中でも色んな人が読むんですね。編集者だけじゃなくて色んな人が見るので。
 あ、これ、こういうふうになるだろうということは、実はあの言葉にはちゃんと意味があって、『ヱヴァンゲリヲン』のことを半分ぐらい語らなければいけないというような映画であるっていうのが『シン・ゴジラ』の面白いところだと思うんですね。
 第四層は庵野秀明の個人映画としての『シン・ゴジラ』ですね。
 第一層、怪獣が出てくるポリティカル・フィクション、政治ドラマ。
 第二層は反原発映画というか、原発を考える、日本人の問題としての原発を考える。
 第三層としては原爆を落とされた世界唯一の被爆国であるっていう、核攻撃を受けた国であるっていう、第一作の『ゴジラ』と似たようなテーマとしての『ゴジラ』。
 第四層として庵野秀明の個人映画。
 こんだけの層があると思うんです。
 それを今日はゆっくりと語っていきたいと思います。

ゴジラ映画は子供向け?  大人向け?

nico_190818_01943.jpg【画像】DMMラウンジのサロンにて

 昨日も大阪で、DMMラウンジのオフ会やって、昨日は女性の方が多かったんです。そこでも聞かれたし、あとテレビ局でも聞かれたんですけども。
 『ゴジラ』って、わりと女の人で苦手だという人多いんですね。
 男の特にオタクさんの人たち、僕達の友達では大絶賛なんですけども。行ったんだけども、面白くなかったっていう女の人結構いてですね。
 で、意見聞いてみたら、やっぱ誰にも感情移入できないと。
 登場人物たちの家族背景が見えないっていうふうな言い方をする人もいるし。あと、意外だったのが、『ゴジラ』って楽しい映画しか知らないから怖かったっていうふうに言われたんです。
 それは何なのよって思ったら、やっぱ年齢層によっては、いわゆる平成ゴジラしか知らない人もいれば、ミレニアムゴジラしか知らない人もいるんですね。そういうふうな人にとっては、子供と一緒に観に行けるファミリー映画とかモスラとかが出てきて、正義のために戦うみたいな。
 一時期『ゴジラ』って『とっとこハム太郎』と併映の時期があったんですよね。
 なので、『とっとこハム太郎』を見るのと同じような感じで見て楽しめ映画として作られた時代があって、それを子供の頃に見てたとか、それが原体験だった人っていうのは、やっぱ『ゴジラ』をそういうもんだと思って先入観で見ちゃう。
 そういう人にとってはやっぱ今回のはちょっと怖かったとか、あとは街が破壊されてて悲しくなったって言うんです。
 あんま男にはないですよね。
 僕なんか見てたら、「よくやった、よくやった、よくやった」「銀座火の海、よくやった、よくやった、よくやった」「品川火の海、ざまあみろ、ざまあみろ、ざまあみろ」みたいなもんでですけど。
 やっぱ女性の中にはそういうふうに考える人もいるみたいなんですよね。
 で、そういうので、ゴジラ映画ってあんなのなんですかっていうふうに聞かれたんでですね。
 いや、ゴジラ映画、元々第一作は結構怖い大人向けの映画だよ、で、大人向けの映画だったのが子供向けの映画に、やっぱ怪獣と戦う子供向けの映画になって、大人向け、子供向け、子供だまし、アメリカ、大人向けっていう順番で変化してきたと。あくまで最初大人向けだったのが、段々子供向けになって、次には子供も見てくれない子供だましになって。
 で、その子供だましからアメリカ映画としての『ゴジラ』っていうのがあって、最後もう一回大人向けに戻ってきたって。
 こういうV字回復してるのが、現在の『ゴジラ』だって、ざっとした流れを言ってきました。

リセットされたゴジラ映画

nico_190818_02303.jpg【画像】DMMラウンジのサロンにて

 じゃあ、今回タイトルとして、まあ『ゴジラ』の質問に答えますって。
 別に質問した覚えねえやという人もいるでしょうけどもですね。
 色々、ネットで質問募集したり、あと僕のほうが、ここのところわりと引っ掛かってる人多いんだなあと思ったところで、質問に答える形式で最初の一般放送のほう、いってみようと思います。後ろのほうにいくにつれて徐々に徐々に深度が深い答え方になっていくのでですね、すいませんけど、ちょっと面倒臭いと思うけど聞いてください。
 一番最初です。
 まずですね、テレビ東京でやってる、この月火水ってやったゴジラ祭り、テレビ東京の午後のロードショー、あのゴジラはなんで変なのばっかりなんですか。
 いわゆる1984年の日本のゴジラ。
 次に、エメリッヒの作ったイグアナが変形するゴジラ。
 最後は、『ゴジラ FINALWARS』っていうわかんない映画と。なんであんな変な映画なんですかっていうふうに聞かれたんですけども。
 あれはねえ、絶妙なラインナップなんですよ。
 まずそれぞれの映画が、三作品とも、これまでの映画の歴史をリセットすると宣言して作った映画ばっかりなんですね。
 例えば、84年の『ゴジラ』は、ちゃんと今回の『ゴジラ』でアメリカの核兵器、核攻撃の話が出てきたんで、そんなの初めてだって思ってる人がわりと多いんですけども、まあ1984年の『ゴジラ』ではちゃんと核攻撃出てくるんですね。それどころかロシアが、ゴジラが日本に現れてもうこれで日本政府ではどうしようもないだろう、自衛隊ではどうしようもないだろう、というふうなことで、ロシアがゴジラに向けて核ミサイル撃っちゃうんですよね。
 で、核ミサイル撃っちゃって、「うわー、どうなるか」と思って、日本がアメリカに依頼して、アメリカがそれを迎撃ミサイルで破壊すると。日本の上空の成層圏で大核爆発が起こると。ゴジラ映画でこんなことやってたんですね。昭和の時代。
 で、そしたら、ようやっとカドミウム弾で、まあ薬で眠らされるゴジラも今回が初めてではなくて。カドミウム弾で眠ってたゴジラが、その電磁パルスで起きて、また暴れちゃうっていうですね。
 わりと84年の『ゴジラ』、今回の『ゴジラ』のちょっと試運転みたいなことをやってると。
 で、次のエメリッヒの『ゴジラ』っていうのは、これもこれまでの『ゴジラ』をなかったことにして、デザインを全部変えて、おまけに口から火を吹かないし。マグロを食べるしっていう、わりと動物としてのゴジラですね。巨大恐竜としてのゴジラっていうのをやってた。
 で、最後の『ゴジラ FINAL WARS』っていうのは、TOKIOの松岡とかケイン・コスギが、エビラと韓国で戦うっていう、まあすごい映画でした。
 これあとでですね、『ゴジラ FINAL WARS』と今回の『ゴジラ』、どこが違うのかっていうのを、國村隼さんっていう、すごいやり手、今回の『ゴジラ』でいえば、「仕事ですから」って渋いセリフを言う上手い役者さんが出るんですけど。
 これが『ゴジラ FINAL WARS』ではもう、めちゃめちゃど大根だったという話でですね。演出によって実は役者の演技の上手さっていうのは見え方が全く違うっていう実例で、後で説明しようと思います。

謎のピー音はなに?

 では、次の質問です。
 自衛隊がゴジラの廃棄物っていうか排出物を調べている時に、途中で「時間だ、撤退だ」って帰る。その「時間だ、撤退だ」って言う前に一瞬「ピー」っていう音が入るんですね。
 これ映画館の中でちゃんと聞こえるようにやってた。あれはなんですかという問い合わせをもらいました。
 あれ何かって言うと、放射線被曝バッジなんですね。
 今回の『ゴジラ』っていうのは、第一作に倣って、ゴジラが通った後に、ちゃんと放射能というか、そういうふうなものが出てくるという設定を忠実に守っています。なので、ゴジラがいた場所にあまり長くいると。原発で働く人みんなここの胸のところにバッジ付けるんですよね。
 簡単な作業をやる作業員っていうのはフィルムバッジです。これが黒くなったら、一日における被爆量の限界なのでさっさと退出してくださいっていう意味です。
 もうちょっと複雑な作業をやる人たちっていうのは線量計っていうのをちゃんと持ってて、それが一定の一日当たりの限界値に達するとピーって鳴るようになってるんですね。
 ただ今回のゴジラ映画は、そういうことをいちいち説明しないんですよね。ピーと鳴って、「よし、時間だ」っていうふうに言って撤退するっていう、大変わかりにくい作りをしてるので、これが冒頭にも言った、そういうことを気にならない人はいいですし、映画すっと見てたらいいんですけども。
 今回の映画、難しくてわかりにくかったというふうに言う人もいるんで。そういうふうな部分で引っ掛かってるんだと思います。

エラから出た血が意味するもの

 で、次にですね、なんでエラから血が出たんですか? ですね。
 最初に、四つん這いで歩くゴジラが、エラから血をゴボゴボ、ゴボゴボと出すんですよね。あれは何なんですかと、いうのを聞きました。
 これもですね、オタクとしては「え? あれわかんなかったの?」っていうような感じなんですけども。まぁあえて説明するのであれば、水中生物のゴジラが、あれは水陸両生ではなくて、水中生物のゴジラが、エラ呼吸で生きてるものが空気中に出て、エラ呼吸で生きてる生物が肺呼吸に切り替えたと。その時に不用意なエラ呼吸の体内器官ですね。
 つまり内蔵の一部を体外に排出したからなんですよ。
 だから本当はあそこは血の液体だけではなくて、ちょっと組織っぽいものが出たほうがいいことはいいんですけど。そういうふうなしるしなんですよ。
 こういうのもやっぱ気になる人には気になっちゃって、ゴジラが血を出して死にかけてるのかと思ったら、急に立ち上がったというふうに見えちゃうんですね。
 で、後、僕意外に思ったのが、ゴジラが上陸する時に眼があるんですけども。
 あの眼が大きいんですよね。そこに白い膜みたいなものがかかってると。あれは何ですかというふうに聞かれて。あれはいわゆる海洋生物にあるやつでしょ。海の中の生物っていうのは周りが海水ですから、まぶたの必要がないんですね。魚にはまぶたがないので。
 ところが、陸上の生物っていうのは目を守る必要があるから、まぶたがあるんですけど。じゃあこれを、海から陸上に上がってくる時にどういうふうになるのかって言うと、両生類の眼になって、眼に白い膜みたいなものがかかることになるんですね。
 なので、ゴジラがプロトンビームって言われている、いわゆる放射能火炎をバーっと吐く時に、その膜が一瞬取れて、ゴジラの本当の眼が見えるんですよね。
 たぶん、元ネタはスティーブン・スピルバーグのジョーズの第一作の、サメが人間を食う時に、眼が一瞬裏返るんだっていうふうにサメ狩りの名人の船長、グラント船長が言うシーンがあるんですけど。あのあたりがイメージソースになっているんだと思います。
 一瞬だけゴジラの本当の眼がクルッと裏返って見えるシーンですね。
 あれ僕、今回怖くてすごく好きなんですけど。それまではずっと白い半透明の膜がかかっている状態。それは海生生物だったからですね。

庵野音楽の詰まった庵野映画

nico_190818_03360.jpg【画像】DMMラウンジのサロンにて

 で、なんで『エヴァ』の音楽がかかるんですか。
 いやこれはもう庵野の勝手だろ、と言うしか言い様がないんですけども。あえて解説をするんだとしたら、『エヴァ』の音楽っていうふうに考えるのも変なんですよね。
 庵野の音楽って考えればいいんですよ。
 例えば、クライマックス、新幹線が突入するあたりから宇宙大戦争の音楽がかかります。
 タタタタターンターンターンターンタタタタターンターン♪
 あれを聞いて、あ、東宝の宇宙戦争のテーマだっていうふうに考えちゃうんですけども、そうではないんですね。庵野映画ですから。
 あれは何かって言うと、庵野が大学の時に8ミリで作った、『じょうぶなタイヤ』っていうアニメがあってですね、『じょうぶなタイヤ』の音楽なんですよね。
 なので全てが庵野映画なんですよ。
 で、途中でゴジラの口の中に放り込む薬、僕はソルマックって呼んでるんですけども。ラストですね、最後のほうでゴジラがぐてーっと二日酔いみたいに倒れて、口の中にゴボゴボゴボゴボやると、体が凍っていくという薬なんですけど、ソルマックって呼んでるんですけど。
 あれを作る時に、ピャーンピャピャピャーン♪って音楽かかるんですよね。
 それは何かって言うと、『オネアミスの翼』っていう、その昔、山賀博之がガイナックスの第一作の映画として作った映画の、クライマックスの共和国のジェット戦闘機がガソリンタンクを切り離す時からかかる戦闘機の音楽なんですよ。
 それは庵野秀明作画担当の場所の音楽なんですね。
 そんな感じでですね、これまでに庵野秀明がやってきた映像の音楽を全部ぶち込んだって解釈したほうがわかりやすいんですね。
 だからなんで『エヴァ』の音楽か、ではなくて、庵野映画、庵野音楽っていうのがどんどん入ってきて、これまでの庵野作品の集大成になってるっていうふうに考えていただいたほうがわかりやすいと思います。


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