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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「NHK連ドラ『なつぞら』解説:宮崎駿が嵐を呼ぶ?これからの展開を妄想込みで大胆予想!」

2019/07/10 07:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/07/10

 今日は、2019/06/23配信の岡田斗司夫ゼミ「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」からハイライトをお届けします。


 じゃあ、『なつぞら』3つ目のトピックですね。これが最後です。
 再来週以降の展開予想。まあ、これ、僕の勝手な想像なんですけど。

 『わんぱく牛若丸』は、もうすぐ完成です。もうすぐ完成というところで、その分、「お菓子屋を継ぐのか、演劇をやるのか?」みたいな話になると思うんですけども。
 さっきも話した通り、実際の『安寿と厨子王』という作品は、興行的には成功したんだけど、スタッフは猛反発していました。
 どれくらい反発してたのかというと、『作画汗まみれ』という大塚康生さんの本の中に書いてあります。
(本を見せる)

 『安寿と厨子王』が終わった後、みんなで反省文というのを書いたそうなんです。その反省文の中には、作画に参加していなかった宮崎駿も、社内の上映会を見た時に感じた批評というのを書いています。

 まずは、なつのモデルになった奥山玲子さんの、『安寿と厨子王』に対する批評です。


厨子王が一人前の若者に成長した頃、これまたちょうど都合よく帝が雲のオバケに悩まされ、これを退治して出世の糸口を掴む。
案の定、丹後の国の守に命じられる。
さっそく帝の御威光をバックに山椒太夫を懲らしめ、仏様安寿のお導きで、何の苦もなく母親の所在を突き止め、めでたしめでたしとなる。

この映画のどこに「克服していく姿」があるんでしょうか? これが十分に描けていたら、もうちょっと見られるものになっていたのではないでしょうか?
言い過ぎかもしれませんが、これでは「非常な社会悪の中で、周りの人の好意と保護の元に厨子王が運良く出世していく姿を日本独特の動画として描きたい」になってしまいます。


 というふうに批判しています。
 つまり、「私達は、真面目に、作品として1人の人間が成長して行くところを描こうとしたんだけど、これではまるで『課長島耕作』じゃないですか!」と。
 「ただ単に周りから贔屓されて、トントン拍子に出世するような作品を作って、どんな意味があるんですか?」というようなことを、ものすごく厳しく書いてるわけですね。

 大塚康生さんはこう書いています。


全く酷いテーマである。
「親子の愛、兄弟愛、動物への愛、主従愛など、安寿兄弟の一家を中心とした家長制度的な愛情が、悪人達によって色々な試練を受けるが、悪人達は天罰と帝の思し召しによって報いられる」という、単純でバカバカしい話を、いくつかの悲しげなシーンで繋いであつらえたのがこの映画である。


 実際はもっと長いんですよ? 僕、最初の読みやすい部分だけを読んでるんですけど。
 本当に、みんな、もう口を限りに、メチャクチャけなしてるんですね。

 ドラマの中では仲さんと呼ばれている森康二さんは、こう言っています。


悲劇であった。悲しみがいっぱいであった。涙がこぼれそうであった。
といっても、映画そのもののことではない。「なんと情けないアニメを作ったものであろう」という、私達自身への憤りを通り越した悲しみであった。
なんの感動もなかった。

以前の作品には、少なくとも、完成試写には、完成の喜びと感動があった。
あの感動はどこにいったのか?


 これもボロクソに書いてますね。すごいですね。

 宮崎駿は、後に、こう書いています。


安寿にしろ厨子王にしろ、二郎にしろ実に嫌らしい連中である。
こんな連中を描いて客を泣かせ、金を稼ぎ、現代の矛盾に満ちた現実に目をつぶる人間を作ろうとする『安寿』は、僕らにとって百害あって一利ない。彼ら映画を作らせた会社側の資本家連中には、百利あって一害ない映画である。

大川博(東映社長)が「試写を見て泣いた」という伝聞を聞いたが、ありそうなことだ。
くたばれ『安寿』。


 というふうに、もう本当にボロクソなんですよね。

 実は、なつが始めて作画に抜擢された『わんぱく牛若丸』の元になったと思われる『安寿と厨子王』という作品は、興行的には成功しているんですね。
 本当に、会社の思惑通り、北大路欣也と佐久間良子が声優をやって、そっくりな作画が動いているから、ちゃんとヒットしてるんですよ。

 なので、ここからの展開としては、そこら辺を描きつつ「このままではいけない!」という話になって。
 そんな中で、もうこの会社を見捨てて行くマコさんたちと、会社に残ってなんとかしようとする、なつたち。
 そこに、宮崎駿が入って来て、いよいよ面白くなるんではないかな、というのが、僕の展開予想なんですね。

 実際の歴史的には、『安寿と厨子王』のショックがあると同時に、さらに手塚治虫が「アニメ作ります!」宣言をやって、大量にスタッフを募集するんです。
 その募集要項には「正社員とか派遣社員の区別はないし、東映動画のような年功序列、もしくは学閥、どの学校出てるから偉い的なものなく、本当に実力主義である」ということが書いてあり、わりと理想の職場に見えたんですね。
 なので、そこら辺の問題も出てくるのではないかと思っているんですよ。

 再来週以降の時代から、なつのモデルとなった奥山玲子は、アニメーター間の待遇格差や正社員と派遣社員の格差の是正というのをやっていくことになるんですけど。
 しかし、実際の歴史では、この問題は解決しないんですね。

 例えば、大川社長が「能力が低くてノルマが守れないアニメーターはクビにするか、もしくは給料を安くする」ということをやろうとしてたので、それを庇う形で、宮崎駿も高畑勲も奥山玲子も、みんな協力して、統一賃金というのを認めさせたんですね。どんなアニメーターに対しても、統一の賃金を保証させたんですけど。
 すると、これまで1日25枚以上の動画を上げていた、本来、できるはずのアニメーター達は、みんな一斉に、毎日5枚しか描かなくなったんです。
 「だって、その方が楽だし、何枚描いてもギャラが同じなんだったら、自分の好きなように凝りたい分だけ凝って、1日5枚だけ描こう」というふうになって行っちゃったという話があります。
 「十分に働けない人をみんなで庇っていく」という環境を作ったはずなのに、逆に「働き過ぎるヤツは白い目で見られる」という状況になってしまいました。
 その結果、徐々に徐々に、東映動画という会社は、アニメを作る会社のはずだったのが、組合活動の現場の象徴みたいな会社になっていっちゃったんですね。

 そんな中で、虫プロが出来て、マコ達が出て行ったという事件があって。残されたなつや下山達の元に、やっと宮崎駿が入ってくる。
 この宮崎駿というのは、今の流れで言うと、頼まれてもいない仕事を勝手にやってしまう1人ブラック企業な人間なんですね。
 これが入ることで大きく現場の動きが変わるはず。いわゆる「それまで持っていた問題意識が、たった1人の頑張りとか、そういうふうなもので、どんどん変わって行く」というようなところが描かれると思うんですよ。

 さらに、それまでは立場的には新人で一番下だった高畑勲も、自分より後輩で作画の天才でもある宮崎駿が入ってくることによって、ようやっと自分の言うことを聞いてくれる作画の手下が手に入ることになるわけですね。
 だって、それまでの高畑勲は絵が描けないものだから、絵が上手いやつ至上主義みたいなところがあるアニメーション会社で、演出というのは頭角を表しようがなかったんですね。
 そこに、自分の思想に心酔してくれて、自分の言うことを聞いてくれる宮崎駿という子分が入ることによって、ようやっと強いパワーを高畑勲が発揮できるという、この土台作りが完成するわけです。

 たぶん、7月の後半か8月辺りで、新人監督である高畑勲の『太陽の王子ホルスの大冒険』の制作が始まると、僕は予想しています。
 まあ、今、話しているのは全部「ここからこうなるだろう」という、僕の妄想ですよ? 別に、ここから先を知ってるわけではないんですからね?

 『太陽の王子ホルス』というのも、原題の通りにやるわけにいかないから、ドラマの中では違った名前になるはずです。
 では、どんな名前になるのかと言うと。もともと『太陽の王子ホルス』というのは、高畑勲が人形劇団で見つけた『チキサニの太陽』という物語をベースにしているんですね。「チキサニ」というのは、アイヌの神様というか伝説の1つなんですけど。
 なので、『チキサニの太陽』という名前にするか、『チキサニの王子』みたいなタイトルになるんじゃないかと思います。

 このアイヌ神話をモチーフにした物語をやることによって、なつの故郷である十勝の風景も使えるし、アイヌの共同体の話の中で、泰樹じいちゃんとのエピソードや組合の話も盛り込める。
 「ここで全ての伏線が一気に回収できるんじゃないかな?」と。
 例えば、泰樹じいちゃんと農協のトラブルというのは、虫プロの『アトム』制作という、天才ゆえのワガママ。つまり、「泰樹じいちゃん1人が品質のいい牛乳を作れるから、メーカーに対して強気に出ていて、他の弱い立場の農協の人らのことを考えられなかった」という問題も、ここでようやっとアウフヘーベンできて、「弱者のための組合というのが、何のためにあるのか?」というふうに、今のなつ達がすごくツラい思いをして実感していることと上手く重なってくるわけですね。
 人里離れて熊を彫ってた阿川弥市郎という人がいましたね? その娘の砂良というのと柴田家の長男・照男が結婚したんですけど。これはなぜかというと、アイヌと開拓民の平和と共存のシンボルになるからです。
 『太陽の王子ホルス』のクライマックスシーンで、ピリヤとルサンの結婚式があるんですけど、そういう結びみたいなことも出来る。
 全ての伏線がバーっと回収できると思うんですよね。

 田舎の天陽君は、たぶん、日展で受賞して東京に出てくるでしょうし、ちょうどその頃、完成した『ホルス』を見た行方不明のなつの妹は、映画館でクレジットで姉の名前を見つけて、最終回あたりでやっと会える、というような流れになるんではないでしょうか?
 妹がねこんなに見つからないのは、僕は、これも勝手な妄想なんですけど、アメリカ行ってるんじゃないかな、と。外国に行って、下手したらディズニーに行ってるんじゃないかなと思ってるんですけども。
 なんかね、今まで見つからなかった理由というのは、それくらいアクロバティックなことをすると、スッとパーツがハマるので。

 というふうに、『なつぞら』は現実の歴史を踏まえて見ると、いろんな妄想が出来て楽しいので、皆さんも一緒に楽しみましょう(笑)。


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