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「宮崎駿監督の最新作が、なぜ “公開日未定” なのか?」
僕が日本を経つ直前に出たニュースとして気になったのが「スタジオジブリの鈴木プロデューサーが、日本テレビ『シューイチ』にVTR出演。宮崎駿監督の新作映画の進捗情報などについて明かした」というニュースなんです。
――――――
なぜ、宮崎駿の新作に対して、鈴木さんが「公開日を設定しない。なぜかというと、公開日があったら人間ってサボりたくなるからだ」と言うのかというと、実は宮崎駿というのは、とんでもない “妥協魔” なんですよ。
もう、すぐに妥協するんです。
高畑さんとは逆なんです。
高畑さんは一切の妥協が出来ない。
周囲から「あの人は怠け者だ」と言われるくらい、とりあえず出来ない理由が1つでもあったら、もう動かない。
絶対に妥協しないんですね。
ところが、それに対して宮崎駿は、他の誰もがまだ妥協してないうちに、早めに妥協を始めるんですね(笑)。
なので、「どうなってるんだ!?」と怒鳴り込んで行くと、そこで高畑勲は寝てるんですよ。
怒った宮崎駿が「起きろ!」と言うと、高畑勲は目を瞑ったままで「寝てない。起きてる」って言うんです。
そんな高畑勲に対して、宮崎駿が「どうするんですか!?」と言うと、「うーん、まず、ハイジがドアを開ける」って、口述筆記を始めて。
宮崎駿はそれを元にコンテを描いたり、脚本を書いたりするという、すごいことがあったそうなんですけども(笑)。
高畑勲というのは、それくらい追い詰められないと何もやらない。
もう本当に、高畑さんのことを、宮崎駿は「サボり魔だ!」とか「怠け者だ!」と言うんですけど、逆に言うと「自分の中の準備が100%にならないと動かない人」なんですよね。
この『ハイジ』の時の高畑さんのスタンスがトラウマになってしまった宮崎駿は、それから徹底的にスケジュールを守るようになったそうです。
この一切妥協せずに何年も掛けて作品を作る高畑勲の姿勢に、宮崎駿はすごく嫉妬して「結局、このスタジオ(ジブリ)というのは、高畑さんのスタジオであって、俺は高畑さんのために、金を稼ぐためだけ監督なんだ!」と、怒ったりキレちゃったりということが、しょっちゅうあったんです。
そのラストシーンとかのコンテも、全部あったんですよ。
なのに、宮崎駿が、自分でスケジュールを見ながら「うーん。これじゃあ間に合わないな。やめた」って言って、ビリビリ破り捨てるからなんですよね(笑)。
鈴木敏夫が「もうちょっと待って! 今、急にやめなくても!」って止めても、「いや、こんなことやってたら間に合わない。やめだ、やめだ!」って、次々と破り捨ててしまうから、現在、残ってないんですね。
鈴木さんって「ちょっと待て! そこでこのシーン見せたら、世紀の名作になるじゃないか? 高畑勲はあんなに粘るのに、宮崎駿は粘りゼロというのは、どういうことなの?」ということを、もう『ナウシカ』の頃から、すごい愚痴ってたんですよね。
これを最初に公開した時に、「20分カットしよう」と、言い出したのは “プロデューサーの” 真木さんなんですね。
僕らはスポンサーであるバンダイと120分の尺を約束していたので、119分58秒の完成尺で作ったんです。
ところが、それが完成した後、試写を見る前に、バンダイの社長から直々に「なんとかして25分切れないか?」と言われたんですね。
こういう時の判断は、やっぱり、プロデューサーである僕にしか出来ないんですよ。
これがプロデューサーの役割であって、監督は「じゃあ、こういうふうにすれば切れます?」というのに対して、「いや、切れません。フィルムを編集するというならば、僕をクビにしてください」と答える。
これが普通のプロデューサーと監督の関係なんです。
鈴木敏夫は「『風の谷のナウシカ』のラストシーンが、いまだに悔しくてしょうがない」と言ってるんです。
「ナウシカが身を捧げて、王蟲がそれを跳ね殺して、それでまた復活する」というラストシーン。あれはあれで、一応わかりやすい感動シーンだったんですけども。
言い方は悪いんですけど「そこまで安直な感動にしなくても良かったんじゃないか?」と、鈴木敏夫は思っている。
「もうちょっと頑張っても良かったんじゃないか?」と思っている、と。
スタッフの顔を思い浮かべて「誰にこのシーンを頼めるか? あいつはダメだし、あいつもダメだ。あいつダメだし、俺しかいない。うーん、面倒くさい」と。
で、こういう作り方を否定していたのが高畑勲なんです。
ところが、この2頭立ての馬車の片一方を失っちゃったわけですね。
その結果、鈴木敏夫の中の悪魔がムクムクと頭をもたげてきて「宮崎駿を高畑勲に改造してやろう」と思うに至ったわけですよ(笑)。
日本版の『ロード・オブ・ザ・リング』とも『ゲーム・オブ・スローンズ』とも言えるような作品になるかもしれません。
なので、とりあえず僕らが心がけておくべきことは「3年とか4年以内に死なないように注意する」ことくらいですね(笑)。
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/05/16
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今回は、ニコ生ゼミ05月05日(#280)から、ハイライトをお届けいたします。
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「宮崎駿監督の最新作が、なぜ “公開日未定” なのか?」
僕が日本を経つ直前に出たニュースとして気になったのが「スタジオジブリの鈴木プロデューサーが、日本テレビ『シューイチ』にVTR出演。宮崎駿監督の新作映画の進捗情報などについて明かした」というニュースなんです。
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宮崎監督は13年9月に長編映画の製作から引退を表明したが、17年2月の米国イベントで鈴木氏が新作の製作を明言。この日は、その制作状況について「3年前の夏にスタートして、いよいよ絵コンテが完成しそう。間もなくです」と明かした。
ただ公開時期については「これからあと3年くらいですかね」とも。
また「今回、公開日を決めていない」といい、その理由としては「期限を決めると人間ってサボりたくなるでしょ。間に合わさないといけないから。それを許さない。だから期限を作らない」と説明。
その上で、プロデューサーの立場から「そうしたら、どういうものができるだろうか。すごいものを見てみたいですよね」と期待をも込めて話した。
また「今回、公開日を決めていない」といい、その理由としては「期限を決めると人間ってサボりたくなるでしょ。間に合わさないといけないから。それを許さない。だから期限を作らない」と説明。
その上で、プロデューサーの立場から「そうしたら、どういうものができるだろうか。すごいものを見てみたいですよね」と期待をも込めて話した。
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こんなニュースが、先週の日曜日に流れました。
これ、ちょっと解説が必要なんですけど。
なぜ、宮崎駿の新作に対して、鈴木さんが「公開日を設定しない。なぜかというと、公開日があったら人間ってサボりたくなるからだ」と言うのかというと、実は宮崎駿というのは、とんでもない “妥協魔” なんですよ。
もう、すぐに妥協するんです。
高畑さんとは逆なんです。
高畑さんは一切の妥協が出来ない。
周囲から「あの人は怠け者だ」と言われるくらい、とりあえず出来ない理由が1つでもあったら、もう動かない。
絶対に妥協しないんですね。
ところが、それに対して宮崎駿は、他の誰もがまだ妥協してないうちに、早めに妥協を始めるんですね(笑)。
・・・
これ、意外なんですけど、宮崎駿というのは妥協力というのもすごく強いんですよ。
というか、何よりもスケジュールが遅れるのを極端に嫌う人なんです。
『アルプスの少女ハイジ』を、高畑勲と宮崎駿がコンビでやってた頃、まあ、高畑勲が何もしない、と。
宮崎さんとしても、高畑さんが脚本を上げてくれなければ、何も出来ない。
宮崎さんとしても、高畑さんが脚本を上げてくれなければ、何も出来ない。
なので、「どうなってるんだ!?」と怒鳴り込んで行くと、そこで高畑勲は寝てるんですよ。
怒った宮崎駿が「起きろ!」と言うと、高畑勲は目を瞑ったままで「寝てない。起きてる」って言うんです。
そんな高畑勲に対して、宮崎駿が「どうするんですか!?」と言うと、「うーん、まず、ハイジがドアを開ける」って、口述筆記を始めて。
宮崎駿はそれを元にコンテを描いたり、脚本を書いたりするという、すごいことがあったそうなんですけども(笑)。
高畑勲というのは、それくらい追い詰められないと何もやらない。
もう本当に、高畑さんのことを、宮崎駿は「サボり魔だ!」とか「怠け者だ!」と言うんですけど、逆に言うと「自分の中の準備が100%にならないと動かない人」なんですよね。
この『ハイジ』の時の高畑さんのスタンスがトラウマになってしまった宮崎駿は、それから徹底的にスケジュールを守るようになったそうです。
だけど、自分が妥協に妥協を重ねて、『紅の豚』とか『ハウル』とかを作っている時に、高畑勲は『平成狸合戦ぽんぽこ』とか『かぐや姫』という、もう全く妥協をしない作品だけを作っているんですよね。
この一切妥協せずに何年も掛けて作品を作る高畑勲の姿勢に、宮崎駿はすごく嫉妬して「結局、このスタジオ(ジブリ)というのは、高畑さんのスタジオであって、俺は高畑さんのために、金を稼ぐためだけ監督なんだ!」と、怒ったりキレちゃったりということが、しょっちゅうあったんです。
・・・
そういう高畑さんの作業の遅さを見ていたから、宮崎駿というのは、すぐに妥協するようになっちゃったんです。
たとえば、『風の谷のナウシカ』のラストというのは、本当はクロトワというクシャナの副官のちょっと影のある男が巨神兵のコクピットに乗り込んで操作して、王蟲の群れと大格闘して、ビームを吐きながら殴る蹴るの肉弾戦を見せるはずだったんですよ。
その結果、あの王蟲というのは全て “サナギ” で、あの巨大なサナギから蝶のような美しい成虫が何万匹と現れて、それが羽ばたいて、人間を置いて宇宙へ去って行ってしまうというラストだったそうです。
「そんなラストシーンを、宮崎さんはちゃんとコンテに描いていて、俺はそれを見た」と、『ナウシカ』の演出助手を務めた片山さんは話しています。
オーディオコメンタリーの中でも、「なんで宮崎さんはあれを止めたんだろう? あれ見た?」って言ったら、庵野秀明が「俺、それ見てないんですよ。見たいんですよ」と返す会話があるんですけども。
なぜ、そのコンテが今、残ってないのかというと。
そのラストシーンとかのコンテも、全部あったんですよ。
なのに、宮崎駿が、自分でスケジュールを見ながら「うーん。これじゃあ間に合わないな。やめた」って言って、ビリビリ破り捨てるからなんですよね(笑)。
鈴木敏夫が「もうちょっと待って! 今、急にやめなくても!」って止めても、「いや、こんなことやってたら間に合わない。やめだ、やめだ!」って、次々と破り捨ててしまうから、現在、残ってないんですね。
この他にも、たとえば『カリオストロの城』で言えば「オートジャイロの空中戦」とか、『もののけ姫』では「タタラ場と戦国武将と天皇の兵隊たちとの三つ巴の地上戦」とか、『ハウルの動く城』では「隣の国との地上戦」を描く予定だったそうです。
だけど、それらは全部、宮崎駿自身が製作の途中の段階で、まだスタッフの誰もが「いやあ、これはスケジュールが厳しくなりそうだな」と言っているくらいの段階で、「もうやめた、やめた!」って、バリバリ破って捨ててしまうので、本当に資料が残ってないんですね(笑)。
・・・
そして、この「コンテをビリビリ破く」というのを、一番悔しがっていたのが鈴木敏夫なんですよ。
もう、役割が完全に逆なんですよね。
もう、役割が完全に逆なんですよね。
鈴木さんって「ちょっと待て! そこでこのシーン見せたら、世紀の名作になるじゃないか? 高畑勲はあんなに粘るのに、宮崎駿は粘りゼロというのは、どういうことなの?」ということを、もう『ナウシカ』の頃から、すごい愚痴ってたんですよね。
たとえば『この世界の片隅に』という劇場アニメがありますよね?
今年、ようやっと完全版が公開されるんですけども。
今年、ようやっと完全版が公開されるんですけども。
これを最初に公開した時に、「20分カットしよう」と、言い出したのは “プロデューサーの” 真木さんなんですね。
本来、「これでは公開に間に合わないから、カットしよう」と言うのはプロデューサーの役割であって、監督というのは、それに対して「本当にダメですか? 出来ませんか?」と言う。これが当たり前なんですよ。
『オネアミスの翼』を作った時もそうです。
僕らはスポンサーであるバンダイと120分の尺を約束していたので、119分58秒の完成尺で作ったんです。
ところが、それが完成した後、試写を見る前に、バンダイの社長から直々に「なんとかして25分切れないか?」と言われたんですね。
こういう時の判断は、やっぱり、プロデューサーである僕にしか出来ないんですよ。
これがプロデューサーの役割であって、監督は「じゃあ、こういうふうにすれば切れます?」というのに対して、「いや、切れません。フィルムを編集するというならば、僕をクビにしてください」と答える。
これが普通のプロデューサーと監督の関係なんです。
でも、宮崎駿は、まだ誰も「出来ない」と言ってもいない段階で、スケジュールにちょっとでも不安があると、即座にコンテを破り始める(笑)。
まあ、変なんですよね。
まあ、変なんですよね。
鈴木敏夫は「『風の谷のナウシカ』のラストシーンが、いまだに悔しくてしょうがない」と言ってるんです。
「ナウシカが身を捧げて、王蟲がそれを跳ね殺して、それでまた復活する」というラストシーン。あれはあれで、一応わかりやすい感動シーンだったんですけども。
言い方は悪いんですけど「そこまで安直な感動にしなくても良かったんじゃないか?」と、鈴木敏夫は思っている。
「もうちょっと頑張っても良かったんじゃないか?」と思っている、と。
・・・
もちろん、コンテを破る理由としては、宮崎駿の中の「スケジュールが守れなかったら嫌だ」という不安もあるんでしょうけども。
その他にも「実際に、これを作画することになるのは俺だ」というのもあるはずなんです。
その他にも「実際に、これを作画することになるのは俺だ」というのもあるはずなんです。
スタッフの顔を思い浮かべて「誰にこのシーンを頼めるか? あいつはダメだし、あいつもダメだ。あいつダメだし、俺しかいない。うーん、面倒くさい」と。
まあ、この「あいつはダメ」という判断も早過ぎるんですけども。
「面倒くさい」と思うのも事実なんですよ。
なので、妥協しちゃうと。
「面倒くさい」と思うのも事実なんですよ。
なので、妥協しちゃうと。
で、こういう作り方を否定していたのが高畑勲なんです。
なので、高畑勲、宮崎駿の2頭立ての馬車の時代というのは、なんだかんだ言って、ジブリというのはバランスが取れていたんですね。
徹底的な理想主義者で完璧主義者の高畑勲と、徹底的な現実主義者で妥協主義の宮崎駿。
ところが、宮崎駿はエンターテイメント的に恐ろしくレベルが高くて、高畑勲は芸術的にとんでもなくレベルが高い、と。
ところが、宮崎駿はエンターテイメント的に恐ろしくレベルが高くて、高畑勲は芸術的にとんでもなくレベルが高い、と。
ところが、この2頭立ての馬車の片一方を失っちゃったわけですね。
その結果、鈴木敏夫の中の悪魔がムクムクと頭をもたげてきて「宮崎駿を高畑勲に改造してやろう」と思うに至ったわけですよ(笑)。
「ジブリには、もう高畑勲はいない。だけど、今、宮崎駿がもう一度映画を作ると言ったら、そりゃもう何十億でも集まるだろう。もう宮崎駿も78歳ということで、最後の作品になるだろう。ならば、最後に宮崎駿に絶対に妥協させない映画を1本だけ作らせよう」と。
そういうふうに思って「公開時期は決めない」と言っているのだと思います。
・・・
宮崎駿監督の新作は “明るいファンタジー” らしいです。
ひょっとしたら、前から「やりたい」と言っている、サムライとドラゴンが出る中世の話かもわからないです。
日本版の『ロード・オブ・ザ・リング』とも『ゲーム・オブ・スローンズ』とも言えるような作品になるかもしれません。
公開は最低でも3年後ですから、大阪万博に間に合うかどうかですね。
巷で囁かれている、庵野秀明の『シン・ウルトラマン』の噂が、もし本当ならば、『トトロ』対『火垂る』のように、二人のすごいクリエイターの対決が、また見られるかもしれません。
なので、とりあえず僕らが心がけておくべきことは「3年とか4年以内に死なないように注意する」ことくらいですね(笑)。
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