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今回は、ニコ生ゼミ05月05日(#280)から、ハイライトをお届けいたします。
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「宮崎駿監督の最新作が、なぜ “公開日未定” なのか?」
僕が日本を経つ直前に出たニュースとして気になったのが「スタジオジブリの鈴木プロデューサーが、日本テレビ『シューイチ』にVTR出演。宮崎駿監督の新作映画の進捗情報などについて明かした」というニュースなんです。
また「今回、公開日を決めていない」といい、その理由としては「期限を決めると人間ってサボりたくなるでしょ。間に合わさないといけないから。それを許さない。だから期限を作らない」と説明。
その上で、プロデューサーの立場から「そうしたら、どういうものができるだろうか。すごいものを見てみたいですよね」と期待をも込めて話した。
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なぜ、宮崎駿の新作に対して、鈴木さんが「公開日を設定しない。なぜかというと、公開日があったら人間ってサボりたくなるからだ」と言うのかというと、実は宮崎駿というのは、とんでもない “妥協魔” なんですよ。
もう、すぐに妥協するんです。
高畑さんとは逆なんです。
高畑さんは一切の妥協が出来ない。
周囲から「あの人は怠け者だ」と言われるくらい、とりあえず出来ない理由が1つでもあったら、もう動かない。
絶対に妥協しないんですね。
ところが、それに対して宮崎駿は、他の誰もがまだ妥協してないうちに、早めに妥協を始めるんですね(笑)。
宮崎さんとしても、高畑さんが脚本を上げてくれなければ、何も出来ない。
なので、「どうなってるんだ!?」と怒鳴り込んで行くと、そこで高畑勲は寝てるんですよ。
怒った宮崎駿が「起きろ!」と言うと、高畑勲は目を瞑ったままで「寝てない。起きてる」って言うんです。
そんな高畑勲に対して、宮崎駿が「どうするんですか!?」と言うと、「うーん、まず、ハイジがドアを開ける」って、口述筆記を始めて。
宮崎駿はそれを元にコンテを描いたり、脚本を書いたりするという、すごいことがあったそうなんですけども(笑)。
高畑勲というのは、それくらい追い詰められないと何もやらない。
もう本当に、高畑さんのことを、宮崎駿は「サボり魔だ!」とか「怠け者だ!」と言うんですけど、逆に言うと「自分の中の準備が100%にならないと動かない人」なんですよね。
この『ハイジ』の時の高畑さんのスタンスがトラウマになってしまった宮崎駿は、それから徹底的にスケジュールを守るようになったそうです。
この一切妥協せずに何年も掛けて作品を作る高畑勲の姿勢に、宮崎駿はすごく嫉妬して「結局、このスタジオ(ジブリ)というのは、高畑さんのスタジオであって、俺は高畑さんのために、金を稼ぐためだけ監督なんだ!」と、怒ったりキレちゃったりということが、しょっちゅうあったんです。
そのラストシーンとかのコンテも、全部あったんですよ。
なのに、宮崎駿が、自分でスケジュールを見ながら「うーん。これじゃあ間に合わないな。やめた」って言って、ビリビリ破り捨てるからなんですよね(笑)。
鈴木敏夫が「もうちょっと待って! 今、急にやめなくても!」って止めても、「いや、こんなことやってたら間に合わない。やめだ、やめだ!」って、次々と破り捨ててしまうから、現在、残ってないんですね。
もう、役割が完全に逆なんですよね。
鈴木さんって「ちょっと待て! そこでこのシーン見せたら、世紀の名作になるじゃないか? 高畑勲はあんなに粘るのに、宮崎駿は粘りゼロというのは、どういうことなの?」ということを、もう『ナウシカ』の頃から、すごい愚痴ってたんですよね。
今年、ようやっと完全版が公開されるんですけども。
これを最初に公開した時に、「20分カットしよう」と、言い出したのは “プロデューサーの” 真木さんなんですね。
僕らはスポンサーであるバンダイと120分の尺を約束していたので、119分58秒の完成尺で作ったんです。
ところが、それが完成した後、試写を見る前に、バンダイの社長から直々に「なんとかして25分切れないか?」と言われたんですね。
こういう時の判断は、やっぱり、プロデューサーである僕にしか出来ないんですよ。
これがプロデューサーの役割であって、監督は「じゃあ、こういうふうにすれば切れます?」というのに対して、「いや、切れません。フィルムを編集するというならば、僕をクビにしてください」と答える。
これが普通のプロデューサーと監督の関係なんです。
まあ、変なんですよね。
鈴木敏夫は「『風の谷のナウシカ』のラストシーンが、いまだに悔しくてしょうがない」と言ってるんです。
「ナウシカが身を捧げて、王蟲がそれを跳ね殺して、それでまた復活する」というラストシーン。あれはあれで、一応わかりやすい感動シーンだったんですけども。
言い方は悪いんですけど「そこまで安直な感動にしなくても良かったんじゃないか?」と、鈴木敏夫は思っている。
「もうちょっと頑張っても良かったんじゃないか?」と思っている、と。
その他にも「実際に、これを作画することになるのは俺だ」というのもあるはずなんです。
スタッフの顔を思い浮かべて「誰にこのシーンを頼めるか? あいつはダメだし、あいつもダメだ。あいつダメだし、俺しかいない。うーん、面倒くさい」と。
「面倒くさい」と思うのも事実なんですよ。
なので、妥協しちゃうと。
で、こういう作り方を否定していたのが高畑勲なんです。
ところが、宮崎駿はエンターテイメント的に恐ろしくレベルが高くて、高畑勲は芸術的にとんでもなくレベルが高い、と。
ところが、この2頭立ての馬車の片一方を失っちゃったわけですね。
その結果、鈴木敏夫の中の悪魔がムクムクと頭をもたげてきて「宮崎駿を高畑勲に改造してやろう」と思うに至ったわけですよ(笑)。
日本版の『ロード・オブ・ザ・リング』とも『ゲーム・オブ・スローンズ』とも言えるような作品になるかもしれません。
なので、とりあえず僕らが心がけておくべきことは「3年とか4年以内に死なないように注意する」ことくらいですね(笑)。
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