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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2019/05/01
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今回は、ニコ生ゼミ04月21日(#278)から、ハイライトをお届けいたします。

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 小池一夫先生のご冥福をお祈り申し上げます


 小池一夫さんの訃報が出されました。

 4月17日の水曜日に永眠なされたそうです。


 それが亡くなられた4月17日の当日には、実はその日に死去が伝えられた漫画家のモンキー・パンチさんへ向けて、ツイートをされていたそうですね。

 「モンキーパンチさんとは40年前、漫画アクションの初期に『ルパン三世』と『子連れ狼』で人気争いをしたライバルでもあった。一緒に組んで『書記官鳥(セクレタリーバード)』という漫画も作ったなあ。淋しくなるなあ。」というツイートを残しながらですね、その日のうちにご逝去なされたそうです。

・・・

 昭和の文化人で、とにかく派手で、お会いした感じはオーラが凄かったんですよね。

 それで、メッチャクチャ面倒見のいい人でした。


 本当に僕が知ってる限りでは、誰彼かまわず奢ってたんで、「あんなに奢ってて、大丈夫かな?」と思ったんですけども。

 まぁ、最後まで表現者でありました。

 本当に病院の病室でツイートしてたって事から分かるとおり。

 それで小池先生に関しては、『子連れ狼』って漫画があるんですけども、『子連れ狼』は読んだほうがいいと思います。


 僕は凄い好きなんですけども、それは「今はマンガとして、どうなのか?」というよりは、長いお話の作り方がめちゃくちゃよく分かるからなんですね。

 『子連れ狼』って。


 『子連れ狼』って、言っちゃえば復讐の話、復讐譚なんですよ。

 拝一刀(おがみ いっとう)という公儀介錯人(こうぎかいしゃくにん)、つまり江戸幕府に直に雇われた、代々続く介錯人。

 つまり、あの時代は死刑で切腹を命じられた者は、切腹というのは形だけで、たとえば扇子だけをお腹に当てたりするんですね。

 そうすると公儀介錯人は、切腹を命じた側の幕府から出張で行った介錯人として首をトーンと落とすと。

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 それでまぁ、見事な腕の人は、ちょうど首の皮一枚を残して首を落とすので、首が見苦しく落ちない。

 ちょうど釣り下がった状態になるというふうに言われていたんですけど。


 そういう腕を持っている公儀介錯人だった拝一刀が、柳生家の陰謀で公儀介錯人を追われて、それでお家取り潰しの状態になってしまったと。

 それで、そのまんま切腹を命じられたんですけども、それを良しとせずに急に用心棒家業を始めて、柳生家に復讐を誓うという話なんですね。


 だからお話自体としては、時代劇としてはちょっと荒っぽい設定なんですけども、これで単行本を40巻以上持たせる。

 6~7年間の連載を持たせたという。

 さっきも言ったように、すごいお話の持たせ方が上手いんですよ。


 お家騒動で潰された事に対する復讐譚で、1970年に、本当に『ルパン三世』と同時で、万博の都市に始まって、そこから6~7年間続いたお話なんですね。

 そして『ブラックジャック』の元ネタでもあります。


 『ブラックジャック』は「手術して欲しければ300万円持ってこい」「1000万円持ってこい」「5000万円持ってこい」っていうんです。

 そして、この『子連れ狼』の拝一刀も暗殺を依頼されると「○○両」持ってこいって言うんです。

 いちおう『ゴルゴ31』でお金を取るという手法はあったはあったんですけども、「じゃあ、そのお金はなんに使うの?」と。


 結局、『ブラックジャック』も『ゴルゴ31』も、その問いには答えてないんですよ。

 そんなにお金を稼いでいて、「じゃあ、そいつは何をするのか?」という問いに答えられなかった。

 いちおう『ブラックジャック』は子供達の島を作るみたいな事を言っていた回も確かあったんだけど、それも設定的にはハッキリしなかったんですね。


 もう一つ難しかったのが、『子連れ狼』って、“武士道” が凄い強い話なんですね。

 とにかく「武士とは何か?」とかですね。

 それも江戸時代の後期に出てきた “朱子学” をベースとした「武士道とは死ぬ事と見つけたり!」っていう。

 いわゆる宮本武蔵の「強くあるための武士道」ではなくて、どちらかといと朱子学系列の「忠義を尽くすのが武士である」という。

 「主君の為に」とか、「主君の為であるのなら、自分の息子も斬り捨てる」というような、そういう忠義忠心の人倫とか道徳としての “武士道” というのを極めたような話なんですね。

 それで、その「 “武士道” の話と “暗殺” っていうのをどのように両立させるのか?」っていうお話のバランスの取り方が凄く上手いんです。 

・・・

 本当に一番最初に 拝家 が襲われた時に、拝大五郎(おがみ だいごろう)っていう生まれて一歳にもなってないような赤ん坊が残されるんですね。

 それで『子連れ狼』だから、この二人で旅をするんですけども。


 元々、拝一刀は、この手間がかかる男の子、自分の息子を連れて行くつもりが無かったと。

 それで「こんな自分のような父親と苦労するぐらいだったら、ひと思いに殺してやろう」と思って、「楽にさせて、母親の所へ送ってやろう」と思ってて、大五郎の前に、刀をグサッと刺して、その横に手毬を置いたんですね。

 それで「さあ、どちらか好きな方へ行け」と。

 「お前も拝家の男子であるのならば、自分で選べ」と言ったら、大五郎は迷わず刀の方に行ったんですね。

 それで「そうか」と。

 「わずか一歳といえども、男が自分の道を選んだのであったら、父はそれを全面的に採用する」という事で、この一歳になる男の子と二人で殺し屋家業をするという、とんでもない話なんですよね(笑)。


 それで『子連れ狼』の目標は、柳生一族の根絶やしなんですよ。

 「徳川家の剣術指南の柳生一門を、すべて殺し尽くす」というのが目的で、これが本当に単行本が進むにつれて、ちゃんと実行されていくんですよ。

 この辺が凄かったんですよ。


 それでさっきも言ったように『子連れ狼』では無理やりにお金を稼ぐんですけど、そのお金は何の為かっていうと、金流しといって、拝一刀は貯めた小判を、秘密の場所にある竹林の中に全部 溶かして入れてたんですね。

 それを全て最後の復讐のクライマックスの時に解放して金を出して、それで投擲雷(とうてきらい)という手榴弾を買うんですよね。

 それも何百発も買って。


 それは何かっていうと、いよいよ復讐が最後でクライマックスだというときに、大五郎って4歳か5歳ぐらいなんですよね。

 それで、その子が自分の父親と同じように柳生一族を根絶やしにするための戦闘力を持つには、「この子は武器が必要だ」と。

 その武器を持たせて、オマケに柳生一族を殺し尽くす為の準備として、2年間か3年間かけて、日本中を彷徨っていたわけですね。


 それで柳生一族の弱点とか、そういうものを散々仕入れて、稼いだ金で、自分の4歳か5歳の子供の為に手投げ弾をいっぱい作って。

 それで最後のクライマックスは、それを大爆発させて戦うというお話です。


 それで最後の決闘は、ちゃんと柳生烈堂(やぎゅう れつどう)という柳生家の総本山みたいなヤツと、拝一刀の決闘になるんですよ。

 クライマックスは。

 ところが、このクライマックスに行く前に、ほとんど勝負は付いていて、柳生一族はほぼ根絶やしにされてるんですよね。

 根絶やしにされて、おまけに拝一刀と正面切って戦う為に、柳生一族は全日本のいろんな藩に潜伏させていた “草(くさ)” と呼ばれる忍者を全員引き上げさせて、拝一刀と戦わさせたわけですよね。


 それで実は、この “草” による情報網こそが柳生の強さだから、この “草” を全ての藩から引き上げさせた時点で、もう柳生一族は滅びたも同然。

 おまけに自分たちが徳川家の上を行く情報網を持つ為に、柳生封廻状(やぎゅうふうかいじょう)という秘密のお手紙システムがあったんですよ。

 このお手紙システムの秘密も暴かれてしまってので、もう柳生家は終わりだと。


 ただもう武門の意地として、最後は柳生烈堂と拝一刀が決闘するんですけども、この決闘シーンがお互いに・・・

 だってもう6年から7年続いた連載で、いちおう剣術モノなんですよ。

 だからあらゆる剣術の技はもう出尽くしたと思っているのに、最後の最後でクライマックスに出てくる柳生烈堂の奥義・秘義の数々。

 「あ、これは天下の将軍の指南役になるわ」というような奥義・秘義と、それに対する拝一刀の水鷗流(すいおうりゅう)っていう腰を構えた低い位置からの斬りかかりっていう、この剣術合戦が凄くて凄くて。

 めちゃくちゃカッコいいんで、読んでください(笑)。


 最後、復讐が成るのかどうか?

 それは、ご自分で読んでいただければ分かると思います。

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