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「【『紅の豚』冒頭シーン徹底解説 1 】 よく考えると不自然なことが多いポルコの秘密基地」
この話を聞けば、そういった部分を楽しめるようになると思います。
有名な「タイプライターの音と共に、緑色の豚みたいな日本テレビのマスコットキャラクター “なんだろう” が動いて、10ヶ国語のテロップが表示される」という画面です。
なぜかというと、この10ヶ国というのは、当時のJALの国際線の代表的な航路でもあったんですね。
スペインもそうだったということで、ここに入れられたそうです。
これは「国際線の機内で掛かっている映画の字幕言語の数に対応している」とも言われてます。
それをポルコが譲り受けた、と。
まあ、一応、市で熱帯魚っぽい魚を売ってたから、獲れるんでしょうね。
そんな漁師さんが使っていた、海が荒れた時用の隠れ家を買い取ったか、貰ったかしたそうです。
“船” と言うのはなぜかというと、これは “飛行艇” であって “飛行機” じゃないからです。
この船が、やや左に翼が降りていて、左のフロートだけが水面についてるんです。
宮崎駿は、こういう芸の細かいことをやってくれているんですよね。
普通、こういう場面を描こうとすると、ついつい、機体を水平に描いちゃうんですよ。
だけど、流石に宮崎駿はわかっていて、ちょっとだけ傾けて描いているんです。
だけど、これは、ちょっと違う感じなんです。
これについては、後で詳しく説明します。
『紅の豚』の色彩設計をやったのは、昔からジブリ作品の色彩関係の全てをこなしている保田道世さんではなく、その弟子の立山照代さんです。
わりとちょっとアンニュイな感じのする美人ですね。
どちらかというと「ものすごく仕事が出来て、宮崎駿ですら保田さんにだけは頭が上がらなかったから」なんですね。
前回、特集した『もののけ姫』で言えば、たとえば宮崎さんが「アシタカが持ってた砂金の粒は、この色に塗ってくれ」と言ったら、保田さんは「そんなのダメよ。あなた本当にセンスがないわね。こっちがいいわ」と言うんですよ。
宮崎駿が「いや、俺はこっちがいいと思う」と言っても、「何言ってるの、こっちにしなさい」と言う。
しかし、最終的に仕上がった絵を見ると、宮崎駿自身も「なるほどな」としか言えなくなる。
すると「ほら、私の言った通りでしょ? 私が正しいのよ」なんて言って、宮崎駿をやり込めて帰ってしまう。
たとえば、ラストにポルコとカーチスが殴り合うシーンありますよね。
殴り合ってる途中で水中に倒れるカットがあって、口の中からあぶくが出るんですけども。
このあぶくの色をどう決めたのかと言うと。「本当は、あぶくの色としては、この色が抜群なんだけど、こっちの色にしちゃうと水中に沈んだカーチスの顔の色の方が映えて見えてしまう。でも、この場面では、みんなにポルコの顔を見せたいから、ポルコの色が映えるあぶくの色にしなきゃいけない。じゃあ、ちょっと残念だけど、あぶくの色はこっちにします」みたいに、繊細な計算のもとに決めていたそうです。
たぶん、高級ホテルか豪華客船の払い下げ品だと思います。
そういうものだったら、同じ色で統一されているということもあり得ますから。
ポルコは、シャンパンをバケツの中で冷やしているんです。
まあ、もう氷も溶けちゃってるんでしょうけど。
このシャンパンについても、最初は意味がわからなかったんですよ。
「空賊を倒した時の乾杯用のワインかな?」とも思ったんだけど、ワインを冷やすバカがイタリアにいるはずもない。
この曲は、このアニメのテーマの1つとも繋がっているんですけど、こっちの方は複雑な話になるので、来週に回します。
世界恐慌は1929年の10月から始まりますから、だとすると、物語の舞台が1929年の夏だとすると話が合わない。
なので、この1929年説の他にも、いろんな説があります。
代表的なのは1930年説や33年説です。
この1930年や33年という数字がどこから出てきたのかというと、ポルコが機関銃を買いに行った時に「愛国国債はいかがですか?」と郵便局だか銀行だかのオッサンに聞かれるからなんです。
そして、この愛国国債という債権がイタリアで発行されたのは、1930年と33年だけ。
なので「物語の舞台はその時期じゃないのか?」と言う人もいます。
西暦2000年が20世紀なのと同じように、10進法では1930年は一応「1920年代末」と言えないこともないので、まあ、それくらいなんじゃないかなと思います。
あとは、世界恐慌というのは、1929年の10月に起こったんですけども、その波が本格的にやってきて、もともと不景気だったイタリアを更に不景気にさせたのは、発生から1年くらい後だったという話なので。
そう考えれば、設定的に合うんじゃないかなと思います。
「これ、なんで?」という話なんですけども。
まあ、この話はまた後で詳しく解説します。
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