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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/11/08
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今日は【岡田斗司夫アーカイブ】から選りすぐり 2016/09/25放送の『ニコ生ゼミ』
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 映画で世界を乗っ取ったアメリカ


 今回は僕がアメリカが好きな理由というのを、ちょっと説明しようと思うんですけども。

 そのひとつが「素因数分解」というふうに公式放送のほうで言ったんですけども。

 「今の世界の何割ぐらいかはアメリカで出来ている」と、そういうふうに僕は思っていて、その分解をやるのがすごい楽しいんですよね。


 たとえば、これ2か月前くらいにとりあげた『アメリカを変えた夏 1927年』という本です。

  [『アメリカを変えた夏 1927年』(ビル ブライソン)]
 (http://amzn.to/2tAFgCQ)


 1927年の時点で、つまりまだ無声映画の時代ですよ。


 1927年の時点でハリウッドは年間800本の長編映画を製作していた。

 全世界の制作本数の80%だ。

 この時点で80%なんですね。


 それに加えて、短編映画も2万本ばかり毎年制作されていた。

 映画はアメリカで4番目に大きい産業で、フォードとゼネラル・モーターズを合わせたよりも多くの人を雇用していた。

 そして、7億5千万ドルを超える収益をあげて、スポーツすべてと音楽演劇などのライブエンターテイメントとすべてを合わせた収益の4倍も稼いでいた。

 こういうモンスター産業だったわけですね。


 アメリカで、1927年の段階で全米2万館の映画館で売られる入場料は毎週1億枚で、どんな日でも平均するとアメリカ人の6人に1人が映画を見に行っていた。

 そういう、とんでもない時代だったんですね。


 映画館は、映画館で作品そのものよりも、座席にこだわるようになっていた。

 とある映画館の経営者たちは、より大きく、より豪華な映画館を作り、それらは “シネマパレス” と呼ばれたんですね。

 シネマパレスっていうのは、 “ピクチャーパレス(大規模映画館)” と翻訳されているんですけども。


 前回、僕がアメリカで行った、グローマンズ・チャイニーズシアターというのも、そのうちの一つです。

 あれは仏教系の寺院というコンセプトで作られたピクチャーパレス、シネマパレスというやつですね。


 すべてのそういうふうな映画館というのは、ものすごく巨大だったんですね。

 建築家たちは自由に想像力を働かせ、壮大な建築物を、過去の文化様式などを手当たり次第取り入れた。

 
 ペルシャ風、ムーア風、イタリア・ルネッサンス、バロック、中米風、金メッキを施したフランスのアンティーク調というようなことで。

 ツタンカーメン王の墓が発見されたら、即エジプト調が大人気になったと。

 ティボリシアターの大理石のロビーなども、ヴェルサイユ宮殿をほぼ正確に再現していると言われたと。

 ということで、映画館はどんどん巨大化したんですね。


 大型化する映画館を競って建て続けることは、大きな経済的リスクを伴った。

 しかしオーナーたちは不思議にも、「とにかく続けることが自分たちの首の皮をつなげる」と頑張ったわけですね。

(中略)

 ただ、そういう巨大な劇場をどんどん作っていったんですけども。

 それほど映画館を満員にする映画がいつもあったかというと、そういうわけではなくて、映画館のほうはどんどん追い込まれていったわけなんですよ。

 そこでトーキーが、声付きの映画っていうのがはじまったわけですね。


 この『アメリカを変えた夏 1927年』という本の中に書いてあるんですけど。

 シネマパレスっていう映画館では、もう映画だけでは客が集まらないので、あらゆる興行形態を試していった。

 なのでアメリカという国は映画に音をつけるという冒険ができたんです。


 しかしヨーロッパでは映画はあくまでアートの一部で、こんな巨大な劇場を造らなかったので、そんなに大人数の客を入れる必要がなかったんですね。

 そんなに興行収入をあげる必要がなかった。


 だからヨーロッパではいつまでたってもサイレント映画、モノクロ映画っていうのが主流のアートであったんですけど。

 だけどアメリカは、これだけの大人数の劇場に人を呼び込むだけのヒット作を必要としていたんですね。

 その結果、トーキー、ジャズシンガーをはじめとする喋る映画が表れて、それで一気にアメリカが映画を制するようになってきたんですね。


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