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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 1 】 現代の人間はパンがないからお菓子を食べている」

2018/09/24 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/09/24
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今回は、ニコ生ゼミ9月16日(#248)から、ハイライトをお届けいたします。

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 【『ホモ・デウス』とはどんな本か? 1 】 現代の人間はパンがないからお菓子を食べている


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  今回の岡田斗司夫ゼミでは、世界的なベストセラー『ホモ・デウス』を取り上げます。

 この本について語っていこうと思うのですが、相変わらず「この本の正しい紹介」というよりは、「岡田斗司夫はこういうふうに読みました」という感じで伝えていこうと思います。

・・・

 では、上巻の第0章、「人類が新たに取り組むべきこと」という、メチャクチャ長い前置きの話から始めましょう。


 人類は、ずっと昔から、ひたすら “3つの害悪” と戦ってきたんです。

 宗教も、科学も、国家や政治も、家族や恋愛も、全てこの3つの害悪と戦って生き延びるためのツールだったわけです。


 では、その3つとは何か?

 それが “飢餓” と “伝染病” と “戦争” です。

 この3つが、とにかく人類の大敵であり、この3つが思うままにならなかったからこそ、人間は神様に祈ったりしていたわけです。


 たとえば “家族” という概念も、本来は餓死を避けるためのものでした。


 人間というのは、脳が大きいまま生まれてくる生物なんです。

 なので、女性の骨盤は大きく開かざるを得なくなり、おまけに脳が大きくなるまで胎児をお腹に入れておかなければいけないので、10か月の妊娠期間が必要になる。

 そして、妊娠期間の後半の方は、女性はろくに動けなくなる。


 となると、エサを獲りに行けなくなるので、“オスがメスを見捨てないシステム” が必要になった。

 その結果、人間には恋愛とか家族という概念が発達したんですね。


 恋愛も家族も、飢え死にを避けるため、絶滅を避けるために、人類が長い時間をかけて得た社会性の1つ。これが、人類の進化の過程なんです。

・・・

 ところが、この第0章によると、現代の人類というのは、この3つの害悪、飢餓、伝染病、戦争を滅ぼしつつあるんです。

 じゃあ、それまでこの3つと戦うために使っていたエネルギーや熱意を、人類はどこに向けたらいいのか?

 これについて、著者のハラリは「歴史は空白を許さない」と書いているんですよ。

 人類は、これまでずっと、この3つと戦っていたわけですから「もう戦わなくてもいいよ」と言われると、ポカっと開いちゃうんですよね。


 こういった現状について、この本の中の表現では「火事がなくなってしまった世界の消防士たちの話である」と書かれています。

 人類というのは、すでに戦わなければいけないと思った相手がなくなってしまったんです。

・・・

 これは『バベルの塔』でおなじみの、ピーテル・ブリューゲルという画家が描いた、『コケインの国』(怠け者の天国)という絵です。

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 『バベルの塔』に比べれば、そんなに有名な作品ではないんですけど。すごくのんきな絵ですよね。


 ボテボテに太ったおじさんがグーグー寝ている。

 その周りには、チーズの山や、ワインの海、ソーセージのなる木が生えていて、パンやケーキが生い茂る草原がある。

 火山ではマカロニを茹でていて、豚やガチョウは焼かれながら歩いていて、お皿の上でパタッと倒れて「食べてください」と言う。

 さらには、若返りの泉まで沸いている、と。

 こういう楽園を描いています。


 ブリューゲルという人は、ご存知の通り『バベルの塔』を描いた人ですから、ものすごく精密な絵を描く人なんですね。

 たとえば『バベルの塔』の絵も、左側に描かれている部分は湾があって帆船が何隻か停泊していたり、右側の部分はレンガを積み上げる方の石膏が落ちて、筋になっていたりする様子までが、細かく描き込まれています。


 そんなふうに、「とりあえず “バベルの塔” というものが存在するとしたら、絶対にこういう工具があって、こういうふうにレンガを引き上げる機械があって、人がこういう導線で働いているはずだ」というリアリティを詰め込んで描いている。そういう画家なんです。


 では、そんな画家が、なぜこんな『コケインの国』を描いたのかというと、実は、これこそが当時の中世の人類の見果てぬ夢だったからです。

 「それぐらい、飢餓や飢饉、作物が獲れなくなって食べ物がなくなってしまうということが当たり前にあったし、それが怖かった」ということなんです。

・・・

 振り返れば、人類の歴史はまさに貧困と飢餓の歴史でした。

 古代中国や中世のインドでは、干ばつが起きると、つまり、雨が降らない時期が続いただけで、当たり前のように人口の1割が死ぬという世界でした。

 こう聞くと「インドも中国も巨大な帝国なんだから、飢餓が起きたのなら食料を送ればいい」と思うところなんですけど、古代の社会というのは、そもそも食料を送る手段というものが限定されていたんですよね。

 馬を走らせようと何をしようと、運んでいる間に食べ物が腐ってしまうわけです。

 なので、「飢餓が起こった場合、その地方の人たちが死に尽くすまで放置するしかない」というのがリアルな話だったんですね。


 これは、科学がある程度は進歩した近世に入ってからも、あまり変わらなかったんです。

 たとえば、ルネッサンスが過ぎて、大航海時代が過ぎた17世紀の末。

 割と最近の話ですね。

 1692年から1694年あたりに、ヨーロッパでは大規模な飢餓が起こりました。

 この時、フランスでは人口の15%の280万人が餓死しました。


 この飢餓はすごかったそうです。

 「草の根を食べる」なんてのはもちろんのこと、猫を食べてまで、みんな生きようとしたんです。

 しかし、それも全て無駄骨に終わりました。

 まあ、そんな中、ベルサイユ宮殿の中では、太陽王ルイ14世が毎晩パーティーをしていたんですけど。


 とにかく、とんでもない飢えによって、3年間、フランスの国民は苦しみました。

 もちろん、フランスだけで飢饉が起きているわけでもなく、同時期に、エストニアでは人口の20%、フィンランドでは人口の30%が、1692年から1694年の飢饉で餓死したと言われています。

 この「3年間も飢餓が続き、おまけに人口の30%が死ぬ」なんていうのは、現代の感覚からすると、とんでもない事態ですよね。

 かつては、これが当たり前のように起こっていたんです。

・・・

 しかし、そういう飢餓は、もはや過去のものになっています。

 もちろん、今でも飢餓や食糧難といった話はありますが、現代のそういった飢餓というのは、かつてのような自然災害ではなく、どちらかというと “政治” によって起きるんです。

 たとえば、シリアとかスーダン、ソマリアで起きている飢餓というのは、政治家が「この土地に飢餓を起こしてしまおう」と計画を立てたから起きている場合がほとんどである、と。


 18世紀に貧乏な国民が飢えた時に、マリー・アントワネットが言ったとされる有名な言葉がありますよね。

 「国民はパンがなければお菓子を食べればいいのに」って。

 今の我々は、それをやっている最中なんです。


 「21世紀を生きる現代人は、マリー・アントワネットの助言を入れた」とハラリは書いているんですよ。

 アメリカのスラムとかゲットーに暮らす貧乏人は、クリーム入りのスポンジケーキやコーンスナック、コカ・コーラ “しか” 手に入らず、それをおなかいっぱい食べている。

 貧乏人はパンを食べられず、安いお菓子しか手に入らなくて、カスタード入りの甘いお菓子をバクバク食べている。


 2014年の時点で、世界中で栄養不良の人口は8億人。

 それに対して、“太り過ぎ” の人口は21億人なんですね。


 栄養不良に対して、太りすぎの人口が倍以上ある。

 その上、飢餓や栄養不良で死んだ人間は100万人ぐらいなのに対して、太りすぎで死んだ人間は300万人以上。

 さらには、「2030年には成人の半数以上が肥満になっている」という予測すらあります。

・・・

 つまり、まとめると「ずっと人類を苦しめていた飢餓の時代というのは、実はもう、終わっている」んです。

 まだ、いろいろなところに飢餓があると言われているんですけど、今ある貧しさというのは “肥満に繋がる貧しさ” であって、飢え死にするような貧しさではない。


 今でも、飢え死にするような貧しさは政治が原因で起こってはいるけれど、でも、相対として見れば、人類は何万年と続いていた飢餓という問題を、この100年足らずの間に絶滅させることに成功した、と。

 こういう状態なんです。

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