『ジブリの教科書18 風立ちぬ』の鈴木敏夫さんの言葉を読んでみます。
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元々、宮崎さんは『となりのトトロ』について、こんな妄想を膨らませていました。
かつてこの世には、たくさんのトトロ族がいた。
彼らは人類と戦って滅ぼされたが、その生き残りが、いろんな時代に登場する。
中世なら “もののけ”。
江戸時代には “幽霊” 。
そして今は “となりのトトロ” 。
トトロはそういう歴史を背負っている存在なんです。
ただカワイイだけの生き物じゃない。
恐ろしさも含んでいるんですね。
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トトロで、この裏設定というかベース設定を、宮崎さんは子供向けに描いて作ったんですね。
ところが、それではガマンできなくなって、10年後にですね、つい作っちゃったのが『もののけ姫』なんですね(笑)。
だから、スターウォーズと逆ですよね。
同じと言えばいいのかな。
先にオチの部分を描いて、「なんでそうなったのか?」というのを遡って描いてあるから。
『もののけ姫』と『となりのトトロ』っていうのは、続きの関係になっていて。
それで本当は宮崎さんは、となりのトトロで終わるつもりだったんですけども、ガマン出来なくなったんですね(笑)。
じゃあ、それは何でかっていうと、それはいろんな所で書かれているとおり。
宮崎さん自身が、その縄文時代の農業とか、あとは照葉樹林文化とか、そこら辺に どんどんハマっていったから。
それでもう描かずにいられなくなって、もののけ姫を描いちゃったんですけどね。
というわけで、トトロで隠した歴史をガマンできなくなった。
それで、実はもう一つの作品とも繋がっています。
「巨大な神様に隠れて、人間が細々と生きている時代」っていうのを、『風の谷のナウシカ』っていう作品で描いているんですね。
それで次に「巨大な神を人間が滅ぼしてしまう」という話を、『もののけ姫』で描いている。
それから人類の時代になってしまって、まだ細々と生きていた巨大な神の末裔で、もう今は見る影も無く小さくなってしまった神々と、子供たちとの関係というのを『となりのトトロ』で描いている。
だから実は、この三つの宮崎作品っていうのは、凄く大きい循環の中で繋がっているんですけどね。
では、なんで宮崎駿は『となりのトトロ』だけではガマン出来なくなってしまったのかですね。
元々、宮崎さんは「『となりのトトロ』が終わったら、ジブリは解散する!」って言ってたんですよ。
「一つのスタジオっていうのは、三つ作品を作ったらもう解散するのが当たり前。 それぐらいが限界だ!」と。
「だから『となりのトトロ』が終わったら、解散するんでいいんだ! 」ってふうに言ってたんですよね。
ところが宮崎駿の人生を揺さぶる事件が『となりのトトロ』の公開と同時に起きてしまう。
それは何かっていうと、その名も同時公開の『火垂るの墓』という作品のおかげなんですね(笑)。
これがあるおかげで、宮崎駿は「さぁ、もうこれで俺は、やりたいモノを全部やり尽くした」と、本当に言ってたんですよ。
「『となりのトトロ』が終わったら、もう俺はやりたいモノが無いから、後はもうアニメーターに戻るよ」というふうに言ってたんですけどもですね。
同時公開の『火垂るの墓』っていう、宮崎さんにとっては悪夢のようなトラウマ作品が公開された為に、宮崎さんは、ここから先もアニメを作ることになります(笑)。
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