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「【『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・1 】 手塚治虫のアニメ地獄」
『となりのトトロ』から遡ること10年くらい前、日本テレビのスペシャル番組として、トトロの企画を提案して、「駄目」って言われてるんです。
それは僕も知ってたもんだから、「ここでそれを持ち出しましょう」ということなんです。
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「つまり、『トトロ』というのは、もともと、その枠用に提案されたんだ」ということに、ふっと気がついたんです。
ということで、僕、そこからちょっと調べてみました。
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ちなみに、アニメ枠の最後は、1990年の第13回の『みなみの海をすくえ』という、『アンパンマン』のオリジナルのアニメになっています。
まあ、これが『となりのトトロ』とどう繋がるのかは、今は、ちょっと置いておきます。
これはちょうど24時間テレビをオンエアしてた当時の、1978年の『アニメージュ』です。
だから、当然、鈴木敏夫と手塚治虫とは、すごく強い関わり合いがありました。
ここは大事なので、覚えておいてくださいね。
そして、ついにオンエアの2ヶ月前、制作デスクが失踪してしまうんですよね。
この人、本当にどこかに行ってしまって、いまだに見つかってないんですよ。
この辺りの詳しい事情については、『ブラックジャック創作秘話』という漫画の「アニメ地獄」というタイトルの話の中に描いてあります。
そもそも、「脚本は全て私が書く! コンテも私が切る!」と言っていたから、こんな困った状況になっているわけなんです。
原因は、手塚先生が「全部、自分がする」ということにこだわっているからなんです。
そんな中、制作が遅れてきたらどうなるのかというと、やっぱり「全部、私がやる!」と言う。
結果、どうなったのかというと、もう本当に、手塚さんは寝る時間もなくなってしまいます。
というのも、手塚治虫が誰よりも働いてるから、そこでこれ以上手塚さんを責めるわけにはいかないんです。
責めることで時間が5分でも取られるくらいなら、その分、5分でも何かを描いてくれた方が状況がマシになるじゃないですか。
では、別の部屋で何をやっているのかというと、別の連載漫画を描いているわけですね(笑)。
そして、連載漫画が煮詰まって「もうダメだ!」となると、アニメフロアに降りてきて、アニメを作るという、本当に、地獄のような日々を過ごしていたそうです。
ここには「アニメ地獄」って書いてあります。
これは、他の人にとっても地獄なんですけども、一番の地獄の只中にいるのは手塚治虫自身なんですよ。
どれくらいギリギリだったかと言うと、「1巻目をロールにかけて映写している時に、まだ最後の巻が納品されてなかった」と伝えられています。
よく、アニメ界の伝説として「放送当日にギリギリ間に合った」という話があるんですけど、それどころの騒ぎじゃないんですね。
「1巻目を放送している時に、最終巻が出来上がった」んですから、もう日本のアニメ放送史上、空前絶後の事態です。
なので、その後も、延々と手塚治虫のアニメが作られることになってしまいました。
“アニメ地獄” というのが、ずーっと続くことになったんですね。
で、本当に全部リテイクしたんですよ。
『バンダーブック』のリテイクって、必要ないんですよ。
だって、日テレの『愛は地球を救う』のために作ったアニメなんだから、その日にしかオンエアする予定はないんですよね。
当時はビデオ化とか、そういう話も全然なかったので、全く無駄なんですよ。
ただ、24時間テレビというのは、日テレ系列で日本全国同時生放送のはずだったんですけども、地方局によっては「この時間はダメだ」というようなものが、いくつかあったんです。
なので、2ヶ月後とか3ヶ月後、地方局でのみ、細々とリテイクされた『バンダーブック』がオンエアされたんですけど。
もちろん、後年、『バンダーブック』というのは、ちゃんとDVDにもなったんですけどね。
手塚治虫の24時間テレビのスペシャルアニメというのは、正直言って、あまりまともな作品がないんですよね。
そもそも、視聴率が良かったのは、当時はアニメブームの頂点みたいな時代だったからなんですよ。
だって、この1978年というのは、『機動戦士ガンダム』のオンエアの前の年なんですよ?
無料のテレビで、それも1時間半もある劇場アニメが見られると言われたら、それはもう、みんな見るに決まってるんですね。
だから視聴率が良かったんであって、「質が良かったからとか、作品が素晴らしかったから、視聴率が良かったわけでは決してない」ということだけは押さえておきましょう(笑)。
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「【『トトロ』は24時間テレビ用のアニメだった・1 】 手塚治虫のアニメ地獄」
ジブリの鈴木敏夫さんのインタビュー本、『風に吹かれて』の140ページに、ちょっと気になる記述があるんです。
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『となりのトトロ』から遡ること10年くらい前、日本テレビのスペシャル番組として、トトロの企画を提案して、「駄目」って言われてるんです。
だから、もう一度『トトロ』を持ち出すというのは、宮さんの中で躊躇があった。
それは僕も知ってたもんだから、「ここでそれを持ち出しましょう」ということなんです。
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僕が昔、この記述を最初に読んだ時には、全く気にせず流しちゃったんですけども。
だけど、『となりのトトロ』の発表年度は1988年。
その10年くらい前の1978年に「日本テレビのスペシャル枠で流すアニメ」といったら、実は “24時間テレビ” 以外にありえないんですね。
その10年くらい前の1978年に「日本テレビのスペシャル枠で流すアニメ」といったら、実は “24時間テレビ” 以外にありえないんですね。
日テレの24時間テレビの『愛は地球を救う』ってあるじゃないですか。
1970年代から80年代の終りまで、実は、この番組の中には “2時間のアニメスペシャル枠” というのがあったんです。
1970年代から80年代の終りまで、実は、この番組の中には “2時間のアニメスペシャル枠” というのがあったんです。
まあ、2時間とは言いながら、実質的には1時間半くらいの枠なんですけど。
毎年毎年、オリジナルのアニメ作品を1つ放送してたんですよ。
毎年毎年、オリジナルのアニメ作品を1つ放送してたんですよ。
「つまり、『トトロ』というのは、もともと、その枠用に提案されたんだ」ということに、ふっと気がついたんです。
でも、ここまでは「そうかもしれないな」程度の話なんです。
ということで、僕、そこからちょっと調べてみました。
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これは、24時間テレビで放送されたスペシャルアニメのリストです。
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1978年第1回24時間テレビ → 『100万年地球の旅 バンダーブック』
1979年第2回24時間テレビ → 『海底超特急マリン・エクスプレス』
1980年第3回24時間テレビ → 『フウムーン』
1981年第4回24時間テレビ → 『ブレーメン4 地獄の中の天使たち』
1982年第5回24時間テレビ → 『アンドロメダ・ストーリーズ』
1983年第6回24時間テレビ → 『タイムスリップ10000年プライム・ローズ』
1984年第7回24時間テレビ → 『大自然の魔獣バギ』
最後は1990年第13回24時間テレビ → 『みなみの海をすくえ!』
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これ、1982年の第5回『アンドロメダ・ストーリーズ』だけは違うんですけど、それ以外の第7回までのアニメは、全て手塚プロが作った手塚アニメなんですよ。
まあ、その出来については、あんまりよろしくなかったから、手塚プロでの製作は第7回で打ち切りになっちゃって、第8回からは他の会社が作るようになったんですけど。
ちなみに、アニメ枠の最後は、1990年の第13回の『みなみの海をすくえ』という、『アンパンマン』のオリジナルのアニメになっています。
若い人は知らないんですけど、今から40年前の1978年から84年まで、ほぼ毎年、1回を除いて、手塚アニメが2時間放送されていた時代があったんです。
「どうも、この時代に『となりのトトロ』が生まれたんじゃないのか?」というのが今回のお話です。
まあ、これが『となりのトトロ』とどう繋がるのかは、今は、ちょっと置いておきます。
・・・
ここで放送された手塚アニメがどういう内容だったのか?
これはちょうど24時間テレビをオンエアしてた当時の、1978年の『アニメージュ』です。
後にジブリの社長になり、僕が “ジブリに関する1次資料” だと考えている鈴木敏夫さんが編集者だった時代の『アニメージュ』ですね。
おまけに、鈴木敏夫は『アニメージュ』の編集になる前に、手塚治虫の漫画の担当もやっていたんですよ。
漫画家としての手塚治虫は、いろんな雑誌に連載していたんですけど、鈴木さんが務めていた徳間書店の雑誌でも、漫画を描いていたんです。
その担当編集もやっていたんですね。
漫画家としての手塚治虫は、いろんな雑誌に連載していたんですけど、鈴木さんが務めていた徳間書店の雑誌でも、漫画を描いていたんです。
その担当編集もやっていたんですね。
だから、当然、鈴木敏夫と手塚治虫とは、すごく強い関わり合いがありました。
ここは大事なので、覚えておいてくださいね。
さて、スペシャルアニメ『バンダーブック』の製作なんですけど、まあ、手塚治虫さんのシナリオがなかなか上がってこずに、進みません。
この『バンダーブック』に関して、手塚治虫は、原作・脚本・コンテ・原画・動画と、もう本当に全てをやっているんです。
「脚本段階から自分で全部やる!」と言っていたんですけど、これが遅れて遅れて仕方がなかったんですね。
「脚本段階から自分で全部やる!」と言っていたんですけど、これが遅れて遅れて仕方がなかったんですね。
もう、コンテやシナリオが出来る前から「このままでは間に合いません!」と言われて、仕方なく、シナリオがまだ半分しか出来ていないというのに、頭の方から絵コンテを描いて。
それが仕上がったら、次に自分で原画を描いて、それが終わったら、自分で動画を描き始めるという、継ぎ接ぎみたいな作業を延々とやってたんですけど。
それでも終らないんです。
それが仕上がったら、次に自分で原画を描いて、それが終わったら、自分で動画を描き始めるという、継ぎ接ぎみたいな作業を延々とやってたんですけど。
それでも終らないんです。
おまけに、この当時の手塚治虫というのは『ブラックジャック』で復活した後で、漫画の連載もそこそこ抱えているんですよ。
なので、ただでさえメチャクチャ忙しいもんだから、『バンダーブック』の製作というのは、どんどん遅れて行くんです。
なので、ただでさえメチャクチャ忙しいもんだから、『バンダーブック』の製作というのは、どんどん遅れて行くんです。
そして、ついにオンエアの2ヶ月前、制作デスクが失踪してしまうんですよね。
この人、本当にどこかに行ってしまって、いまだに見つかってないんですよ。
この辺りの詳しい事情については、『ブラックジャック創作秘話』という漫画の「アニメ地獄」というタイトルの話の中に描いてあります。
・・・
(中略)
手塚治虫というのは、とにかく、アニメ制作をする中で、何か困ったことがあったら、打ち合わせと称して「それは私がやります!」と言うんです。
だけど、それをやっても同じなんですよね。
だけど、それをやっても同じなんですよね。
そもそも、「脚本は全て私が書く! コンテも私が切る!」と言っていたから、こんな困った状況になっているわけなんです。
原因は、手塚先生が「全部、自分がする」ということにこだわっているからなんです。
そんな中、制作が遅れてきたらどうなるのかというと、やっぱり「全部、私がやる!」と言う。
結果、どうなったのかというと、もう本当に、手塚さんは寝る時間もなくなってしまいます。
放送2ヶ月前に制作進行が失踪してからというもの、手塚さんは毎日ほとんど寝ずに、ずーっとアニメを作り続けている。
だから周りも、もう、何も言えなくなっているわけですよ。
だから周りも、もう、何も言えなくなっているわけですよ。
というのも、手塚治虫が誰よりも働いてるから、そこでこれ以上手塚さんを責めるわけにはいかないんです。
責めることで時間が5分でも取られるくらいなら、その分、5分でも何かを描いてくれた方が状況がマシになるじゃないですか。
だけど、そんな手塚治虫も、あまりにも追いつめられると、別の部屋へ逃げてしまいます。
では、別の部屋で何をやっているのかというと、別の連載漫画を描いているわけですね(笑)。
そして、連載漫画が煮詰まって「もうダメだ!」となると、アニメフロアに降りてきて、アニメを作るという、本当に、地獄のような日々を過ごしていたそうです。
ここには「アニメ地獄」って書いてあります。
これは、他の人にとっても地獄なんですけども、一番の地獄の只中にいるのは手塚治虫自身なんですよ。
そんな地獄へ自分を追い込む時のやり方というのが、「はい! それも手塚がやります!」とにこやかに引き受けて、全部持って行くという方法なんですね。
・・・
(中略)
その結果、なんと、奇跡的なことに、『バンダーブック』はオンエアされることになりました。
まあ、「オンエアされた」と言っても、ギリギリの状況だったんですけども。
当時のアニメーションというのは “フィルム” に現像されていました。
2時間分のアニメだから、35ミリフィルムにすると、10巻くらいの束になると思うんですけど。
2時間分のアニメだから、35ミリフィルムにすると、10巻くらいの束になると思うんですけど。
どれくらいギリギリだったかと言うと、「1巻目をロールにかけて映写している時に、まだ最後の巻が納品されてなかった」と伝えられています。
つまり、テレビ局でのアニメ放送が始まっているのに、最後のリールは、まだ現像所で現像して乾かしているような状態だったんです。
だけど、アニメは作られました。
本当にすごいです。
だけど、アニメは作られました。
本当にすごいです。
よく、アニメ界の伝説として「放送当日にギリギリ間に合った」という話があるんですけど、それどころの騒ぎじゃないんですね。
「1巻目を放送している時に、最終巻が出来上がった」んですから、もう日本のアニメ放送史上、空前絶後の事態です。
・・・
ところが、そんなアニメだったにもかかわらず、『バンダーブック』の視聴率は、24時間テレビの中でトップの28%を取っちゃうんですよね。
日本テレビの24時間テレビ『愛は地球を救う』の第1回放送なんですよ?
だから、24時間テレビの中の他の番組も、軒並み視聴率が良かったんですけど。
その中でも、ぶっちぎりの1位を『バンダーブック』が取ってしまったんです。
だから、24時間テレビの中の他の番組も、軒並み視聴率が良かったんですけど。
その中でも、ぶっちぎりの1位を『バンダーブック』が取ってしまったんです。
なので、その後も、延々と手塚治虫のアニメが作られることになってしまいました。
“アニメ地獄” というのが、ずーっと続くことになったんですね。
この後も、何回もスペシャルアニメをやって、その度に、視聴率的には大成功したんですよ。
でも、ギリギリの進行は相変わらずです。
でも、ギリギリの進行は相変わらずです。
しかし、実際に放映された『バンダーブック』を見た手塚先生が何と言ったか?
「全部、リテイクです」というふうに言い放ったんです(笑)。
で、本当に全部リテイクしたんですよ。
『バンダーブック』のリテイクって、必要ないんですよ。
だって、日テレの『愛は地球を救う』のために作ったアニメなんだから、その日にしかオンエアする予定はないんですよね。
当時はビデオ化とか、そういう話も全然なかったので、全く無駄なんですよ。
ただ、24時間テレビというのは、日テレ系列で日本全国同時生放送のはずだったんですけども、地方局によっては「この時間はダメだ」というようなものが、いくつかあったんです。
なので、2ヶ月後とか3ヶ月後、地方局でのみ、細々とリテイクされた『バンダーブック』がオンエアされたんですけど。
もちろん、後年、『バンダーブック』というのは、ちゃんとDVDにもなったんですけどね。
この「全部リテイクです」と言う、手塚治虫の鬼気迫る勢いは何かというと、やっぱり「アニメを作りたかったから」なんでしょうけども。
その他にも、ぶっちぎりで28%の視聴率を取ったことで、「やっぱり俺のやり方は間違ってなかったんだ! みんなからは反対されて、いろいろ言われたんだけど、こだわってこだわって作って良かった!」という手塚治虫の叫びもあると思うんですよね。
・・・
だからといって、「『バンダーブック』というのは全部リテイクしたから、すごいんだろうな」と思って、DVDを借りて見たりしないでください。
手塚治虫の24時間テレビのスペシャルアニメというのは、正直言って、あまりまともな作品がないんですよね。
そもそも、視聴率が良かったのは、当時はアニメブームの頂点みたいな時代だったからなんですよ。
だって、この1978年というのは、『機動戦士ガンダム』のオンエアの前の年なんですよ?
無料のテレビで、それも1時間半もある劇場アニメが見られると言われたら、それはもう、みんな見るに決まってるんですね。
だから視聴率が良かったんであって、「質が良かったからとか、作品が素晴らしかったから、視聴率が良かったわけでは決してない」ということだけは押さえておきましょう(笑)。
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「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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