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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/07/23
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日は7月21日に朝日新聞に掲載連された『悩みのるつぼ』をお届けします。
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相談 「禅好きの彼」
20代女性です。
10代の頃に出会った彼。
何につけても合理的で目標には一切妥協せず、脇目も振らず努力します。
口は悪いけれどまっすぐ私を思ってくれている事が分かります。
そんな彼の愛読書はフロムの「愛するということ」。
愛とは決意の行為、すなわち自ら行為してその中に踏み込むものであり、その術として瞑想や禅が有用であると考えています。
仕事がどんなに忙しくても、修行として坐禅に励んでいます。
私も彼に求められ、5年間、真剣に取り組みましたが、愛とのつながりが分からず、辞めたいと思うようになりました。
彼は私に激怒し、真剣にやらなかったからだ、無心で続ければお前にも分かる、禅とはそういうものだと言います。
愛には努力が必要であることには、私も心から賛同します。
しかし私はもう禅はやりたくない。
その先で愛につながる悟りがあると思えません。
彼が禅の先に愛があるというなら、ぜひ向かってほしい。
それに限らず、彼の夢はなんでも応援したいと思っています。
しかし彼は禅をどうか辞めてくれるな、互いに一生後悔すると言います。
私は自分の気持ちを無視して、今まで以上に闇雲に坐禅をするべきなのでしょうか。
私の今の気持ちは、愛ではないのでしょうか。
いっそ別れて、禅の達人を連れてきた方が彼のためでしょうか。
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あなたは10代から5年間もの間、効果も出ない座禅を続けた。
彼に言わせれば「効果が出ないのは本気でやってないから」。
しかしあなたは「5年続けて効果が得られないものはムダだ」と思うようになりました。
この差がなぜ生じるのかと言えば年齢です。
10代から5年続けて現在は20代。
つまりあなたは「幼い私が大人な彼を尊敬し妄信できた時代」を通り過ぎちゃったんですね。
もう彼に頼らずとも自己分析できるから、「あ、この座禅という手法は自分に向いてないな」と判断できちゃう。
となると、これからの二人の関係は「妄信する弟子と師匠」ではなく「対等な男女」にならざるを得ません。
西洋哲学の基本はヘーゲルの弁証法です。
なにか主張(テーゼ)があり、それに対する反論(アンチテーゼ)があり、対立し合うんだけど最終的にはお互いを認めた合意(ジンテーゼ)にいたる。
彼は「俺にとって愛するとは、フロムを理解し座禅することだ」という命題(テーゼ)を出しました。
対するあなたは「5年続けたけど私には効果が無い」と反論してみた。
これだけでは足りません。
同様にあなたも、たとえば「私にとって愛するとは、いっしょに旅行に行っておしゃべりすること」みたいな反対命題(アンチテーゼ)を出すべきです。
そしたらやっと、「じゃあ旅行に行って、その日の夜は座禅組んで、翌朝は話し合ってみようか」という統合命題(ジンテーゼ)が生まれます。
ただ、これは互いの関係が対等で、相手の気持ちを尊重し、やりたいことを理解し合った上でないとできない高等技術です。
ぶっちゃけ、彼があなたのことを対等に考えてくれない限り、無理。
いまだにあなたを、まるで弟子みたいに扱う彼には難しいかもしれません。
そんな彼であっても「別れるのは絶対にイヤ」と思うなら、これまでどおり彼の恋愛観を「信じる努力またはフリ」を続けるしかない。
そういうごまかしが限界なら、別れを考えるべき時期です。
でも、悪い別れ方じゃないと思いますよ。
あなたが成長した結果、彼という師匠の下から巣立つ時期が来ただけですから。
彼にとっても「自分の恋愛観に忠実な弟子が、5年も尽くしてくれた」という得がたい体験をしたわけです。
このあたりで「お開き」にするのが、お互いの統合命題(ジンテーゼ)じゃないかなぁ。
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