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「【岡田斗司夫とディズニー 3 】 ウォルト・ディズニーが作りたかったものとは?」
そんなものばっかりになっちゃったんですよね。
このカルーセル・オブ・プログレスというのは、実は1967年頃の作品なんですけど、こちらの方が思想的に進んでるんですよ。なので、ここまでのあらゆるディズニーのアトラクションやショーというのは“精神的な退化”と言っちゃうしかないんですよね。
ニューヨーク博というのは、かなりすごい博覧会だったんですけども、最も人気のあったアトラクションが5つあったんです。
このベスト5の内、4つがディズニーがいろんな会社とか団体から依頼されて作ったものなんですよ。
この時から、ディズニーの “オーディオ・アニマトロニクス” というのが始まります。
なぜボディが透明なのかというと、故障をしたときなんかに、どの部分の調子が悪いのかがすぐにわかるように、服で隠れる部分は徹底的に透明に仕上げられてるんですね。
これ、やっぱり、1964年の技術じゃないんですよね。
僕も、これまでかなりいろんなロボットとかを色々と見てるんですけども、同じ頃に作られていたゼネラル・エレクトリックのヒューマノイドとかよりも、軽く先を進んでるんです。
1964年のニューヨーク博で、これ1体だけをなんとか動かしたんですけども。
カルーセル・オブ・プログレスでは、この技術を応用して、一度に舞台上で5人以上のヒューマノイドを動かしたんです。
これを指して、オーディオ・アニマトロニクスというふうにディズニーは呼んでます。
ステージの中央にこれ見よがしに座ってる男がオーディオ・アニマトロニクスというのは、まだわかるんですけど。
ちなみに、この青いセーターを着ているのがウォルト・ディズニーです。
ステージ袖にいる白い服を着て手を上に挙げている姉ちゃんが、ロボットだって、わからないでしょ? これ、奥さん役のロボットなんですけども。このレベルなんですよ。
パイプを持って、新聞を読んでます。
これは、ウォルト・ディズニーが、このジョン一家を紹介しているところなんですけども。
「今、私が準備しているのは、64年のニューヨーク博で行うカルーセル・オブ・プログレスのセットです」って。
ここで、「やあ、ジョン。ああ、パイプに火を付けてあげるよ」と、ウォルト・ディズニーがライターに火をつけて、ちょっと差し出すんですね。
すると、このジョンのロボットが、ものすごく自然な演技で、パイプをフッと持ち上げる。
これ、どうなってるのかというと。
“マスタースレーブ機構” で、写真の手前にいる全身に機械を取り付けられた俳優さんが動くと、その動作をコンピューターが信号に変換してジョンに送る。
すると、ジョンの人形がその通りに動くんですよ。
こうやって、「リアルタイムの演技が付けられる」というものなんですけども。
いや、64年は公開した年だから、正確には63年に作られたものなんですけども。
あり得ないですよね。
ゼネラル・エレクトリックは、後にこれと同じ仕組みで “ハーディマン“ という、原子力発電所のような場所で、力のいる作業をするためのロボットとして研究していたんですけども。
メチャクチャゴツくて、ブサイクで、扱いにくいんですよね。
ディズニーのやつの方が、スマートで、はるかに実用的なんです。
ディズニーランドで一番最初に走ったモノレールというのは、いわゆる鉄道メーカーに注文して作られたものではなく、ディズニーの中にある “機械部” という映画のセットを作る部門が作ったものに、客を乗せて走らせてるんですよね(笑)。
そんなふうに、実は世界最先端の技術を持っていたんです。
そして、ここから、その先に何を考えていたのかも推測できると思います。
これは、うさぎのオズワルドとかミッキーマウスでやったことですね。
次に、“絵と音楽の融合” 。
「絵が動いている中に音が入り、音楽も入る」というものですね。
『蒸気船ウィリー』というアニメを作って、絵と音楽が融合すればもっと面白いということを証明しました。
TVシリーズの『アリス』というのを、初期のモノクロの作品の時点ですでにやっているんです。
これは『眠れる森の美女』として、第2次大戦の前に成功しています。
いわば、短編の『蒸気船ウィリー』みたいなものなんですよね。
おそらく、ウォルトが次世代のディズニーランドのアトラクションとして考えていたのは、アトラクション1つでディズニーランド1つ分くらいのサイズが必要になる、1周回るのに60分以上かかるアトラクションじゃないかな、と。
この映画、改めて見てみると、実にオーディオ・アニマトロニクスを使ったアトラクション向けに作られてるんですね。
基本のドラマは全て、家のセットの中で行われているし、メリー・ポピンズが飛び立つところも「上から釣り上げて、斜め上に滑るように飛ぶ」というふうになっている。
あとは、メリー・ポピンズが使う魔法も、全て現実の舞台上で再現可能なものばかりやってるんですよ。
DVDを持っている人はちょっと確認してみてください。
この「屋根がどこまでも続いていて、煙突が立ち並ぶ中、向こうの方に小さい人が動いている」っていうのは、完全にミニチュアで遠近法を強調したセットとして作られているんですね。
アトラクションぽいというか、ちょうど、イスが動いて行くアトラクションとして作る前の、とりあえずの前段階の映画として作っているのがよくわかるんですよ。
あんな感じで、中を立体的に動いて、『メリー・ポピンズ』の世界、19世紀のロンドンというのが体験できるアトラクションになっていたんじゃないかな、と。
なんかね、ウォルト・ディズニーの発想というのは、たぶんその辺りくらいにあったんじゃないかな?
僕らはついつい、もう現代のバーチャルリアリティの中で作ろうと考えちゃうんですけども、当時はまだそんなものがない時代ですから、ディズニーが生きていたら、たぶん、そんなことを考えていたんじゃないかと思います。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
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