─────────────────────────────
「【岡田斗司夫とディズニー 1 】 ディズニーランドとの出会い」
その時は、ボストンでSFのワールドコンがあって。
それが僕にとって初めてのアメリカのSF大会経験だったんですけども。
なぜ、1980年にそこに行ったのかというと、翌年の81年に、第20回日本SF大会 “DAICON3” というものを自分たちが主催することになっていたので、「これはもう取材に行かなければ!」ということで行ったんですけども。
その後、1週間以上の旅行ということで、せっかく時間もあることだし、サンフランシスコまで飛行機で飛んで、ヨセミテ経由で、ロサンゼルスまでレンタカーを借りて移動したんですね。
そんな8日間のアメリカ旅行をしたんですけど。
その最後の日の午後にディズニーランドに行ったんですよ。
「本場のアメリカに来たんだから、ディズニーランドでも見に行こうや」というのと、あとは、ちょうど その頃、日本の旅行代理店でもディズニーランドツアーをやり始めてて「どんな所かは分からないけど面白そうだ」という噂だけは聞いていたので、とりあえず見に行くことにしたんですよ。
これもEチケットのアトラクションだから、きっとすごいだろうと思って乗ることにしたんです。
だから、みんなでヘラヘラ笑いながら、そのお化け屋敷に行ったんです。
そしたら、そこに並んでいる係員は、全員、黒いメイド服みたいなものを着ていて。
まあ、それはそれでカッコいいんですけど。
さっきまでのアトラクションとは、全然、雰囲気が違うんですよ。
ジャングル・クルーズでは、ジャングル探検隊みたいな格好をした人が、「こちらですよっ!」とか、「すぐ乗車できまーす!」とか「あなたは○番に乗ってくださいっ!」というふうに、笑顔を絶やさないんですけど。
ところが、ホーンテッドマンションでは、多数いる係員の誰も笑っていないんですよね。
誰一人笑わずに、深刻な顔をして「こちらに入ってください……」とか、「このロープの位置まで来てください……」というふうに、うつ向き加減で静かに言うんですよ。
で、相手が笑顔を全く見せないものだから、こちら側のヘラヘラ顔も、段々と真顔になってくるんです。
この雰囲気に「ちょっと待て! お前ら、どこまで本気でエンターテイメントをやるんだ!?」って思って、ビックリしたんですよね。
普通、こういうお化け屋敷を作る時は、建物の外観からオドロオドロしく怖く作るものだと思うんですけども。
アナハイムのディズニーランドのホーンテッドマンションは、そうじゃないんです。
“フランスコロニアル風” と言われる、バルコニーがデカくて柱が立っているタイプの、メチャクチャ豪華な洋館なんですよ。
そういう設定も全く知らずに入ったから、外の建物を見たときには「やたら綺麗でカッコいい建物だな」って思ってたんですけど。
で、その一声で、中が呪われているけど、外は豪華という屋敷になったそうなんですけども。
もう体験した人もいっぱいいるでしょうから、いちいち細かく言いませんけども。
屋敷の中に出てくるオバケたちが、一斉にセリフとか歌をガーッと言うんですね。
何を言ってるのかは、正直よくわからないんですけども。
「ハッハッハー!」とか「ダンダン、ダンダン、ダン~♪」とか、いろんなことを言ってたり、それぞれ違う歌を歌ってるオバケたちが、コーラス部分になると、フッと一斉にユニゾンになるんですね。
その瞬間の世界のキュッというまとまり方がすごくて、「おいおい、これ、なんだよ?」って。
これも、それまで考えていたお化け屋敷とは全然違ったんです。
2人1組とか3人1組で、真正面しか見えない、周りが囲われている車に乗せられる。
この車が、行く先々で360度回転して「今はこれを見てください」「ここではこれを見てください」というふうに、強制的に振り回されるんです。
正面以外は塞がれているもんだから、横に何があるかは見えないんですよ。
おまけに、耳元にあるスピーカーから、ストーリーが流れてくるんですけど、なんか “耳元で囁かれている感じ” なんですよ。
これが上手い。
オムニムーバーというのは、このディズニーランドで開発されて、確か “ミクロアドベンチャー” か何かで最初に使われたものなんですけど。
これの使い勝手がいいということで、その後、ホーンテッドマンションに持って来られたんですね。
こうやって座席自体が回転するようになっているので、秒速60センチくらいの速度で座席を移動させながら、左右好きな方を向かせることができるんですね。
真っ暗な天井が見えるだけ。
囁くようなナレーションが聞こえる中で下がって行って、下までついたら、いきなり眼の前に、墓場から幽霊が甦った世界が、バーっと広がっている。
この幽霊たちというのが、想像以上に騒がしいんですよ。
なんかね、怖いだけじゃなくて、面白さとのブレンドが絶妙だったんですね。
これ、実は “カリブの海賊” も同じなんです。
「海賊がいた時代にタイムスリップしちゃったんだけども、無事に帰ってこれた」ということなので。
コンセプトが違うんです。
これらは「死後の世界や海賊のいる時代に迷い込んでしまう映画の主人公になったような体験をさせよう」という、新しい形式の映画なんですね。
アトラクションじゃなくて、これは映画なんですよ。
あとは、全身に電球をつけて踊るダンサーとか。
花火も打ち上がる時に音楽がついていて。
こういう光景の全てが “生まれて初めて” だったんですよ。
特に、花火に音楽がついているのなんて、僕は実家が大阪だから、PLの派手な花火とかをよく見ていて慣れていたはずなんですけども、音楽が付いているとすごく見えるんですよね。
太陽が西に沈んで、死の世界、夜がやってくる。
しかし、その夜をなんとか乗り越えると、次の日には太陽がまた登ってきて、生き返る。
これはあくまでも自然現象なんですけど、僕らはそれに、なんとなく神話的な構造を感じちゃうんです。
こういった、「日常に元気を取り戻すために、一度、死の世界をくぐり抜ける」というテーマ性を、アトラクションの中に意識的に取り入れてるんですね。
つまり、ディズニーランドというこの施設全体が “そこを訪れた人にとっての復活祭” という仕組みになっている。
なんで僕らは、暗い部屋の中で、他人の人生のピンチとか、そこからの回復を見たら、終わった後で元気が出るのかというと、やっぱり、心の中で復活祭というのが行われて、リフレッシュされるからなんです。
そういうことが、ディズニーランドにいる中で、徐々に徐々に分かってくるんですよ。
高畑勲とか宮崎駿も、作品の中で死ぬことと、そこからの復活というテーマを、上手く流し込んで行くことで映画というのを作っているんですけども。
それと同じことを、かなり早い時期から、ウォルト・ディズニーのディズニーランドはやっていたというのに、ちょっとビックリしたんですよね。
「え?!それってどういうこと?」「そこのところ、もっと詳しく知りたい!」という人は、どんどん、質問してみて下さい。
番組内で取り扱う質問はコチラまで!
コメント
コメントを書く