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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「35年前、坂本龍一さんが『オネアミスの翼 王立宇宙軍』の音楽担当だった話」

2018/05/15 06:00 投稿

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岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/05/15
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今回は、ニコ生ゼミ5月6日(#229)から、ハイライトをお届けいたします。

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 35年前、坂本龍一さんが『オネアミスの翼 王立宇宙軍』の音楽担当だった話


 5月6日の朝、ニュースで出た話です。

 音楽家の坂本龍一さんは現在、手塚プロダクションで手がけているアニメ映画の音楽を担当しています。

 それに関するインタビューがニューヨークで行われて、「アニメ映画の音楽に関わったことについて」という質問をされました。

 その際、坂本さんが高畑勲さんについて話されたことが報道されています。

 (中略)

 僕が引っかかったのは、その高畑さん話の前に「今から35年前にもアニメの映画音楽を担当したことがあるんですが、それはあまり気に入ってないんです。」と答えていることです。

 (そのため題名も言えないらしい。)とインタビュアが注釈をつけています。

 つまり、アニメの題名を聞かれても坂本さんは答えなかったということですね(笑)。

 いやぁ、なんか悔しいなぁと。


 これ、もちろん『オネアミスの翼 王立宇宙軍』のことです。


 なぜ僕が悔しいのか説明しますね。

 実は坂本さん、『オネアミスの翼 王立宇宙軍』の音楽打ち合わせの時、すっごくノリノリだったんですよ。

 「こういうふうにしたい、ああいうふうにしたい」って一所懸命話してましたし。
 打ち入りパーティの時もそうですし、打ち合わせでも、すごく和気あいあいと進んだんです。

 その時、バンダイや読売広告社、つまりスポンサーサイドと広告代理店サイドからは
 「岡田さん、坂本さんが機嫌いいのは、あんまり本気にしない方がいいよ」と言われてました。
 「坂本さんは知名度は高いけど、アルバムが売れないんだよ。だからアニメの力を借りて売りたいんだ」って。

 でも僕は、そうじゃないって肌で感じてました。

 坂本さんは、「絵コンテを見て参加を決めた」と言っていたし、明らかにコンテをすごく読み込んだ上で打ち合わせに来てくれたんです。

 ここのシーンこんな音楽でっていう話を、打ち合せでもガンガンしてくるんです。


 だから、すり寄って来たっていう感じではなく、本当に『王立宇宙軍』という作品を評価して参加してくれたと感じました。

 ところが、そのあと問題が生じたんです。


 アニメの絵コンテって、まるでCMのように、この映像に何秒、この映像に何秒何コマって、メッチャクチャ設計が細かいんです。

 どうもテクノ出身というか、論理で音楽を作る坂本龍一という人は、そこにすごく可能性を感じて、惹かれたらしいんですね。


 だから、坂本さんは、絵コンテをもとに、絵と音楽がシンクロした音楽をつけるって言ったんです。

 映像と音を完全にシンクロすることができるって、坂本さんはどうも思い込んでたんですよ。


 最初の打ち合わせの時には、「そうですよ!そうですよ!」と僕も山賀も否定せず、ノリノリで話してました。

 ところが現実的にアニメを作り出すと、そうはいかないんですよ。


 アニメの原画って、カット内容と担当アニメーターの組み合わせによって、予想の演技と違うものがあがってくるものなんですよ。

 だから、コンテ通り何秒にはおさまらなくて、それを微妙に詰めたり伸ばしたりせざるをえません。

 当然、音楽とずれます。

 通常どうするのかというと、作られた音楽を音響監督が切って詰めたりつないだりするワケです。

 この音楽はこのシーンから、と言っても、ああ頭はもうちょっと前から出した方がいいとか、後から出した方がいいというふうに、音響監督を入れて調整するわけです。


 それは、音楽家がたとえ久石譲であれ誰であれ、どんな音楽家が作った音楽でもそうなります。

 でも、坂本さんから見れば「ちょっと待てよ。それどういうことだ?話が違うよ」ってことになりますよね。


 坂本さんは、坂本さんが当時所属しておられたヨロシタミュージック通しで話をしてくる。

 ヨロシタミュージックは、音響監督のグループ・タックの田代敦巳さんのところに話をする。

 音響監督としては、世界の坂本とはいえ、たかだか音楽担当に言われても(笑)、それは俺の仕事だと。

 俺は音響監督で、お前は音楽担当だと。


 わかりやすいように極端な表現をしてますけど、実際の田代さんはそんなに強圧的な方ではないです。

 ないですけど、モノをちゃんと統一的に作るためには、監督がトップで、その他のスタッフというのは、それを助けるポジションでなければいけないんです。

 あたり前ですけど、そういうふうな考え方をされている方なのですね。


 というわけで、ヨロシタミュージックが言ってくる坂本さんの意向を、パッパッと断ってたんです。

 そうすると、ヨロシタさんの方のイライラも頂点に達してくる。

 それでも、坂本龍一さんが直に僕らみんなと話しができたなら、そこは何とかなったかもと思うんですよ。


 でも、坂本龍一さんは、ベルナルド・ベルトルッチの『ラスト・エンペラー』のお仕事で、ロンドンや中国に行ってたんです。
 
 だから、打ち合せには来られない。


 それを聞いた音響監督の田代さんが、「ちょっと待てよ。同じ映画音楽担当なのに、なんでお前はベルトルッチの映画には現場に行って、『オネアミスの翼』には現場に来ねえんだ」とまたですね(笑)。


 坂本龍一と監督の山賀博之以外のスタッフ間で齟齬が、ザーッと大きくなってくる。

 結局、グループ・タックの田代敦巳さんという音響監督と、ヨロシタミュージックの社長が激しくぶつかることになってしまったわけです。


 ヨロシタとしては、「最初、坂本が参加を決めたあの素晴らしいコンテを変えるんだったら、それはそれで仕方がない。そのかわり、変えたコンテと映像とを全部、坂本側に出せ。それも半年前に出せ。そしたら坂本がそれに従って完璧な音楽を作る」ということを言ってくるんですよ。

 俺らの方はもう、公開日に間に合うかどうかわからないと言ってるのに(笑)。

 「ちょっと待ってよ、半年前に完璧な尺の映像を渡せと言われても、私達はあなたの知っているハリウッドじゃないんです(笑)」


 それに対して、音響監督の田代敦巳さんは

 「音楽の使い方、つまりどの位置で入れて、どの音楽を使うのかという決定権は、坂本龍一にあるんですか?田代敦巳にあるんですか?岡田さん、プロデューサーでしょう。あなたが決めて下さい!」

 田代さんは別に自分が権力をもってやりたいという人ではなくて、このままでは作品がバラバラになってしまうと判断しての要求です。

 こういう時になると、なぜか読売広告社のプロデューサーもバンダイのプロデューサーもピューっと逃げてしまって(笑)。

 「ありゃあ~、まあそりゃそうだろうな」とも思ったんですけどね。


 結局、僕が「田代さんの方で音楽の入り位置、抜け位置というのは全部決めていいです。その代り僕も山賀もダビング(音と絵を合わせる作業)の時には必ず立ち会って見ますから」と決断して伝えました。

 田代敦巳さんの方には、常に現場でどういう風に状況が変わっているのか話していたこともありましたし。


 音響監督の田代さんには納得してもらって、そうして頂きました。

 ヨロシタミュージックさんにも、そういうふうに連絡しました。


 まあこの件があったからだと思うんですけど、坂本さんは、以後の取材でも『オネアミスの翼 王立宇宙軍』に関しては黒歴史っぽくなってしまって、触れないようにというか(笑)、なかったことみたいにされてるんです。


 今回のインタビューを読んで、もう本当にムカッと腹が立っちゃったんですけどね。

 この件に関しての最終的な責任は、僕が「田代さんでいきます」と決めたことにあると思います。

 つまり、やっぱりそれはもう僕の判断のせいですね。


 坂本さんにこういうふうに未だに言わせてるのかと思うと、なんか『王立宇宙軍』という作品とか当時のスタッフに申し訳ないなと思うところであります。

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